3.6.5 竜の襲撃再び
水の龍は、僕の方を向いてしゃべりだした。
「我は聖獣と呼ばれし4大幻獣の1人水龍王イシスじゃ。
契約によりお主の召喚獣となっておる。
よろしく頼むぞ。
ところで主よ、今世の名はなんじゃ?」
「今世? よくわからないけど助かったよイシス。
僕の名前はジルベール・クロスロード。よろしくね」
「ジルベールじゃな。
まさかこの小さき身で聖獣形態での召喚ができるとは。
良き召喚者に出会えた。
では我の出番は終わったようじゃで、元の世界に戻る」
そういうと、目の前から忽然と姿が消えた。
傷ついた兵士を集めて、軽く回復魔法を使う。
バーニィも軽傷だった。
良かった。
自警団の動けるメンバーで皆を運ぶことになった。
倒れた元竜の女性も連れて帰ることになった。
僕は、怪我をして倒れている黒狼の子供も助けたいとレイさんに頼んだ。
「黒狼は魔物ですよ。けして人に懐くことはない」
レイさんは、魔物の怖さを説明してくれた。
だが、それでもこのまま放っておけば怪我をした体では間違いなく死ぬ。
僕はどうしても連れて帰りたかった。
「怪我が治れば森に戻せばよいでしょ。
明日には回復魔法を使えるから、それまで確保してほしい。お願い父さん」
両手をすりすりして頼んだら、連れて帰ってもらえた。
良かった良かった。
帰りにエイミーから話が。
「2つ言いたいことがあるんだよね」
いつもの気楽な調子でエイミーが話し始めた。
僕は無言のままエイミーの顔を見つめて言うことを聞く。
「まず1つ目。ジルちゃんは、大切な領主じゃん。
皆が守るべき立場の人だよね。
私もジルちゃんを守るって誓ったんだよね。
そのために今日はジルちゃんを置いてここに来たのに、その守る対象がわざわざ危険に飛び込んで、部下のためにブレスの前に飛び出るって領主のやることじゃないからね。自重してね。いいね。絶対だよ」
「はい」
僕は素直に返事をした。
「そして2つ目。助けに来てくれてありがと」
そう言って、ほっぺにチュウをされた。
僕はちょっと照れた。
そして、みんなが助かって良かったと心から喜んだ。
僕は家につく前に、眠ってしまった。
そのおかげで、とりあえずその日は、かあさまから叱れることなく難を逃れた。
もちろん、気絶させたクインさんからも。