1.5.3 おばあさまの話からの状況把握
おじいさまの兄は、異母だ。
同じ金眼で2人ともゼムのミドルネームを持つ。
同じ才能を持つおじいさまが領地を継ぐことになるのではと、かなり敵視していたらしい。
兄が爵位を継いだ後もあまり仲は良くなかった。
そのため成人してからは家に帰っていなかったそうだ。
その後、おじいさまは、おばあさまの家に認められるようがんばり、ものすごい早さで昇進した。
2人の間に息子のアナベルも生まれ、幸せな生活を送っていた。
アナベルが5歳の頃には、おばあさまの家との断絶は無くなり、夜会であっても普通に接するようになったそうだ。
そしてアナベルが14歳の年に、隣国シドニアに近接するゴヤロード領その隣のクロスロード領に魔物が大発生した。
当時おじいさまのカインは国の討伐任務でゴヤロードに部隊を率いていた。
ゴヤロードでは、討伐すべき対象にS級の魔物2体が混じっていた。
大量の魔物に強い個体が含まれたとても危険な討伐だったそうだ。
戦いは激しくなんとか殲滅させたものの多数の重傷者を出してしまった。
おじいさまはその時の戦いで左足の先と左手のひじから先を失った。
結果、軍で戦うことができなくなったために除隊することになった。
実はその魔物の大発生はゴヤロード領地の隣、クロスロード領にも流れ込んだ。
そしてそこでも激しい戦いがあった。
その戦いで当時のクロスロードの領主だけでなく嫡男までも亡くなってしまった。
おじいさまの母親はクロスロード領主の妹。
調べた結果、領主を継げる成人男子の中でおじいさまの継承権が一番高いことがわかり、クロスロードの領主となった。
それが、おとうさまが15歳の時。
領地付きの侯爵家を賜ったことでおばあさまの家との関係は完全に回復したらしい。
だが、おばあさまの実家であるアンセルワードはこことは遠く、クロスロードの領地は王都から離れすぎ関係が回復と言っても親戚同士の付き合いはそれほど無かった。
おばあさまの両親が亡くなった後は、社交シーズンでも王都に行くこともなくなり、ずっと会っていないそうだ。
おじいさまの実家であるバディアワード大侯爵領は王都の隣に位置し、このクロスロードとは同じ公爵の派閥と言っても正反対の位置になる。
兄との確執は続き、領地に対する支援も期待できなかった。
おじいさまは、領地に引きこもる時に怪我によって除隊したメンバーを引き連れてこの地に来たそうだ。
荒れた土地で戦力も激減していたが、騎士の訓練を受けた兵によって領地に残された兵士の質は向上し、およそ10年の時をかけようやく平穏な暮らしが送れるようになってきた。