3.5.4 アメリの婚約
「両金眼。オルトディーナ公爵からは左目だけと聞いていたが」
「正しくは、左目が金眼だということを知っているのですよ。
リリアーナ母様によると僕が赤ちゃんの時、寝ている状態で確認したそうですが、オルトディーナ公爵は左目だけ、カルスディーナ公爵右目だけを確認して帰られたそうです」
「なるほど、あの二人ならあり得る。
両金眼とは思わぬから、反対側の目の色など興味も無い。わざわざ寝ている子の両眼を開いて確認するようなお人ではないし」
「さて、こんな僕ですが、息子として呼んでもらえるでしょうか」
「いや、こんな私が父となって良いものだろうか」
「父親という者は、母と違い、生んだ苦しみを知らないのです。
父となる、そして子が父と呼ぶのはその後対応に依存します。
2人ともがふさわしくあろうとすること、それが父と子の関係を築き上げるのです。
相応しいとか相応しくないとか、今の段階ではないのですよ」
「はい」
「リリアーナ様、過分な対応、感謝します」
「さて、二人が婚約は良いのだけど、婚姻となると大変ね。
2人には王都に行ってもらう用事がいくつかあるのですが、ジルベールのことはまだ秘密です。
そこの所だけ気を付けてください。
特に、オルトディーナ公爵に。
カルスディーナ公爵の領地に領主として迎え入れられるのですから、二人には丁寧に説明してくださいね。
2人とも貴方がクロスロードの継承権を持っていることは知っているはずだからもめることは無いと思いますけど」
「はい、ただ、国王陛下に進言しなければならないのですが、軍を辞めた理由が無くなっているのが」
「王都に行く時には、足を引きずって右手に義手をかぶせて行けば良いでしょう」
「はあ、そうですね」
「後は、クロスロードに引き込んでいるのだから大丈夫よ。
数年もしたら、治療の結果良くなったと言っても良いでしょう。
実際に、上級ポーションを飲み続ければ部位欠損が治ることもあるらしいし」
「あれ、リリアーナ母様。
まさか今の世界に回復魔法のレベル8を使える人がいないのですか」
「いないわよ。
50年前に亡くなった先代の聖女様がレベル8だったそうよ。
確かに部位欠損を治していたと記録があります。
今は王宮魔導師のシシリー様と大神官様が回復魔法のレベル6。
これが最高です」
「え、じゃあもしかして。
僕、シシリーさんの前で堂々と治療してましたけど」
「部位欠損は治してないでしょう?」
「はい。でもちぎれた腕はくっつけましたよ」
「まあ、その程度は良いでしょう。
レベル6にしては効果が高い気がするけど神石のおかげだろうぐらいに思っているでしょう。
神石の存在は神殿も王も把握してますからね」
ふーん、両金眼は知られてないけど、魔法のレベルが高いことは割と知られてるってことかな。