3.3.5 後始末
「え、これからのことを相談していたのよ。
怪我をした組は、ヤンロードまでゆっくりと移動して、
クロスロードから連れてきた平民たちは怪我人も多いから、1週間休養をとってから移動する予定なの。
その部隊を分ける相談をしていたの」
「そうですか」
「ジルベールは、ヤンロードまでは私たちと。その後は伯爵たちと一緒にすぐに領地に移動してもらえないかしら、そこからはもう空間魔法は必要ないし」
「ええ、それは構いませんが、平民たちにも回復魔法を使えば移動できませんか?」
「平民たちへは重傷者は治療してもらったけど、完全治療はしなかったでしょう。
もちろん軽傷者は治療もしていないし。
もしかして、その意味が解ってないのかしら?」
「え、特には。
王宮魔導師の人にそうしなさいと言われたからそうしただけです」
「魔力を持たない平民には、回復魔法はあまり良くないのよ。
回復魔法を使うと、自己治癒力が落ちるのだけど、魔力持ちは魔力の復活と共に戻ってくるけど、平民のそれはとても遅いのよ。
完全治療しなければ自己治癒力が残ると言われているの。
貴族と平民の違いだけど、こういう時で無ければ貴方の治癒の対象に平民が入ることは無かったから、シーズ様も教えてくれなかったでしょう」
「ええ、でも治療院で平民の治療をしていましたよ」
「おそらく、准貴族とか商人が相手でしょう。
彼らは貴族から血を受け継いでいるから、多少なりの魔力があるのでしょう。
でも今回連れてきた平民たちは、まったく魔力の無い人たちだから」
「あ、そうなんだ。
そういえば鑑定で見た時も魔力があったな。
確かに、今回の人たちは多くても半分ぐらい。
じゃあ、僕はもう何もできないから先に帰った方が良いのですね」
「ええ、そうしてくれる?」
「それと、エイミーがこのままクロスロードに来るとか、僕の護衛だって言ってましたけど、それは確定ですか」
「ええ、確定よ」
「契約は、もうできたのですか?」
「いえ、エイミーさんは近衛に入っていた人ですから、移動には領主の印鑑も必要になるの。
クロスロードに戻らないと正式な契約はできないわ」
「ふーん、そうなんだ」
「でも、エイミーさんは貴方の護衛をする気みたいだけど、止める気は無いわよ」
「ね、ジルちゃん、言ったとおりでしょ。
それじゃあ、ちょっと訓練しよう。
こっちだよ」
手を引っ張ってテントから出た。