3.3.3 後始末
「あらためてありがとう。
お礼は体で払おうか?
ねえ、貰ってくれる?」
「いや、いや、いきなり何言ってるの?」
「この後、君の所で働くのはどうかなってこと」
「ああ、そういうことですか」
「ジルちゃんも子供っぽいのに、勘違いしちゃった?
エッチだねー」
「いやいや、ところで、エイミー様の移動って、国が許すんですか?」
「別にいいんじゃない? 給金貰ってる先がそこだっただけだもん。
剣王やってる人間なんて無職ばっかだよ。
私が、わりと真面目ってだけだって
それより、僕のことはエイミーって呼び捨てにしてね、ジルちゃん」
「呼び捨てって、まあ僕が主になったらそうしますよ。
ただ、そもそも問題として、剣王を雇うほどのお金がないよ。
クロスロードって貧乏だから」
「大丈夫、大丈夫。今もそんなに貰ってないよ。
せいぜい普通の人の3倍ぐらい。
お屋敷に住ませてくれるなら2倍で良いよ」
「はあ、後でアメリ姉様に相談しておきます」
「よろしく。じゃあ、わるいけどめちゃくちゃ眠いや、おやすみ」
そう言って、ばったりと倒れた。
いやはや、すごい人だ。
「あのジルベール君、悪いけどまだ魔力ある?」
「え、僕自身はもうほとんどないけど、この神石にはまだ残ってますよ」
「そう、じゃあこの魔力回復ポーション飲んでおいて。
ちょっと他の人も見てもらえないかな。まだ重傷の人がいるのよ」
「ええ、いいですけど」
そうして、10人ほど治療したところで神石の魔力が尽きた。
後はポーションで回復した分で治療を続ける。
「さすがに、精神的にもう無理」
「そうよね。ごめんなさい」
「じゃあ、こっちで寝て頂戴」
途中で食事も済ませていたので、クリーンの魔法をかけて案内された寝床で眠った。
眠った。眠った。
たっぷりと眠った。
自分のステータスを確認したら、力とか素早さが少し増えていた。
表示はされないけど、レベルって概念でもあるのだろうか。
さらに、大量の人を治療したお怪我で、停滞していた回復魔法のレベルが上がった。
先日まで欠損部位を元に戻せなかったが、多少なら元に戻せるようになった。
夜中に寝たはずだが、テントから出たら太陽が真上にあった。
「ジルベール様、ようやく起きましたか」
「子供なんだから夜中に寝たら昼ぐらいに起きても良いだろ」
「そうは言っても、寝てから1日以上ですからね。
お疲れだったようで、心配しました」
「え、1日以上ってじゃあ2回目の昼?」
「そうですね」
「じゃあ、3回以上の食事をパスしたのか、残念」
「ははは、よほどお腹が空かれたのですね。
ちょうど昼食の準備ができているのでそちらへ案内します」
トシアキに案内された所で、食事が運ばれてきた。
「ジルちゃん、おはよう」
そう声をかけてきたのはエイミーだった。
すっかり元気になっているように見える。
「元気そうですね。良かったです」
「うん、元気元気。ジルちゃんの回復魔法のおかげだね。前よりも調子良いよ。
ジルちゃんが寝てる間に、アメリ様にも許可貰えたから、このあと直接クロスロードに行くね。ということは、わたしのことはエイミーって呼び捨てにしてね」
「あ、そうなんですね。
直接クロスロードに来るのは構いませんが、王都の家は大丈夫なのですか?」
「大丈夫、大丈夫。
別にそんなにたいした荷物無いから、送ってもらうことにしたよ」
「へー、そうですか。
ところで、エイミー様に状態異常 精神汚染って呪い系の魔法ががかけられていた理由がわかりますか、
あの後で何人か治療したけど、そんな人他にいなかったし」
「エイミーね。呼び捨てで良いよ。
おそらく、僕が最後に竜の首を落としたからかな」
「へ?」
「うん、ジルちゃん竜撃退の状況って聞いてないの?」
「そういえば」
「まあ、ジルちゃんも活躍だったらしいし、人の活躍は興味ないか」
「いやいや、めちゃくちゃ興味あるけど、教えてくださいよ、エイミーさん」
「さんつけでもないよ。
よし、じゃあ、僕のことをエイミーと呼ぶなら教えよう。
ジルちゃんがこれからのご主人様だしね」
ふむ、そう来たか。
「じゃあエイミー、竜の撃退状況を教えなさい」
「はーい」
いや、命令口調で言えっていうけど、エイミーの対応も変わらずか。
まあ、いいか。