2.17.1 異世界植物の育て方
僕が最初に召喚魔法で召喚できたのは甘いリンゴの種だ。
当時は、1年の期間を使って魔力を溜めこみ召喚した。
召喚できる種は固定種の種だけなので、召喚できる種類は少ない。
そして1回の召喚で種10個がセットになっている。
頑張って召喚した種を植えるために庭師のジジに、貰ったリンゴの種を植えたいと伝える。
「ここなら日当たりも良いですし、他の木にも邪魔になりません。ここへどうぞ」
ジジが場所を探して、手伝ってくれた。
そして、そこに種を植えようとした。
「あれ、坊ちゃま。少しその種を見せてください」
あ、やばい異世界の種ってばれたのか。
ドキドキしながら種を渡す。
「おや、これはダメですね。
貰ったとおっしゃっていたので少し気になっていたのですが、これではすぐに枯れてしまいますよ」
「そうなの?」
「ええ、種にはたっぷりと魔力を与えなければ強く育ちません。
単に収穫しただけの種に含まれる魔力は少ないので、植える前に魔力を補給するのです。
ただ、この種には全く魔力がありませんね。
普通は、育った土地が持つ魔力に染められているのですが。
不思議です。
ともかく、ジルベール様が思いを描きながら魔力に染めてください」
「へー、そうなんだ。
じゃあ魔力を込めてみようかな。どんなことを思えばいいの?」
「そうですね。
まずこの地で丈夫で大きく育つように、それからおいしい実をたくさんつけるようにと願いながら魔力を込めてください。
できるだけどんな味になるか強く思い描き、成長した木の姿も思い浮かべると良いですよ」
ふむ、やっぱり異世界ならではの育て方があるのか。
こちらでは、植える前に種を魔力で染める。
魔力を込めることで、2代、3代と代を重ねながらその土地になじんだ植物になる。
クロスロードで育てている麦もそうしてできたのだ。
南と北の高地で明らかに種類に違いがあるのはそのせいらしい。
ジジにアドバイスを貰って、イメージする。
大きなリンゴの木。
病気に強い大きな木になれ。
そしておいしい実をつけろ、大きな赤い甘い実をつけろ。
糖度16。
甘いリンゴになれ。
願いながら魔力を込める。
すると種が僅かに光った。
「終りです。ジルベール様、上手ですね。
それにしてもかなりの魔力を吸い込みましたね。
この種の生命力はすごいですよ。
ではここに埋めてください。そして土をかぶせて」
最後にジジが水をかけてくれた。
「では、これで終りです。成長を祈りましょう」
それから芽がでるまで毎日お祈りをした。