1.4.2 少しおおきくなりました
どうやらこの屋敷の中には男性がいないようだ。
いる気配もない。
父親らしき人も見たことがない。
離乳食になってからは、アメリが面倒を見る時間が減った。
侍女に任せて家を出る時間が増えてきた。
どうやら彼女もリリアーナ同様に仕事をしているらしい。
1歳を目前に、立ち上がって数歩だけ歩けるようになった。
だが“はいはい”の方が圧倒的に速い。
隙をみて部屋から抜け出し探索をしていた。
最初に部屋から“はいはい”で抜け出したら、侍女の気配を察知したので部屋に戻り、すばやくベッドに入り込んだ。
だがばれていたらしい。
その時は侍女から「ジルベール様、あんよがはやいですね」と誉められた?
次の日も部屋から脱走し別の部屋を探索していたら侍女に見つかった。
ハイハイで逃げたが敢えなく捕まった。
その後、大きなタオルで足をぐるぐる巻きにされベッドに寝かされた。
一眠りした後タオルを解いて脱走したら、また侍女に見つかった。
侍女はあきれた顔をしていた。
何度かの脱走後に、侍女が「ここには入ったらダメです。ここまでしか来てはいけません。夜は部屋から出てはいけません」など1歳児に言っても無理なことを教えてくれた。
もちろんそれを守っていれば連れ戻されなくなったのでちゃんと決められた範囲で散歩した。
そうやって“はいはい”で徘徊しながら侍女たちの会話を聞いて情報を集め整理した結果、この家にはコックと庭師だけが男らしいとわかった。
だが両方とも割と高齢で侍女たちの結婚相手としては範疇外らしい。
若い男性は一人だけで、その人は僕専属の魔法を使う護衛らしい。
だが、今は僕が外に出かけないので領地の自警団と一緒に訓練中らしい。
仕入れる情報が侍女だけなので、入手した情報の大半は結婚相手をどうやって探すのかとか、どこの男がかっこ良いとか、そういった類のことばかりだ。
どうやらこの地は田舎らしく都会のように華やかな舞踏会はめったにないらしい。
今日は隣の大領地が開く舞踏会に参加するかどうかを話していた。
それでも今の僕はこの侍女たちの無駄話が唯一の情報源だった。
彼女たちの無駄話でわかったが、生んだのはもちろんアメリのようだが登録上アメリは姉になっている。
母親はリリアーナのようだ。
侍女の話にも父親のことが出ないので話してはいけない何かがあるのだろうと察した。