2.15.1 魔道歯ブラシ製品化検討
ファールじいちゃんとカトレア様が宿泊した翌朝。
「ジルベール、この魔道歯ブラシをわしらにも貰えんか」
「いいですよ。まだ試作品ですけど」
「完成しているように思えるが、試作なのか。
で、何を試しておるのだ」
「実はこの魔道歯ブラシは壊れる魔道具なんです。
中に入れ込んだ魔石が大体3年で壊れます」
「たったの3年か」
「他の魔道具では魔石を外に出して簡単に交換していますが、この魔道具は振動する部分に魔石を使っているので中央部に配置しています。
なんとか簡単に部品を交換してもう少し長く使えるようにしたいのです」
「ふむ、まあわかった。
現状の品は3年で壊れ、簡単に交換できないのだな」
「ええ、それで良ければ作りますけど」
「ああ、構わん。
王家と公爵3家の分を送ってくれ」
「どのくらい数があれば良いですか」
「そうじゃな、20本ぐらいあれば良いだろう。
あと、今の味気ない色は付けなくても良い。
そのままでワシの所へ送りなさい。
こちらで色を付ける」
「はい。お願いします」
そうしてファール様たちが帰っていった。
「トシアキ、聞いてた?」
「はい」
「どうしよう」
「まずは今のままで発注しましょう。
後は改良する担当者を決めなければいけませんが、機能に変化が無いのですから貴族側よりは職人に委任すべきでしょうね」
「うーん、そうだろうな。平民がかかわるとなると、選任者をどうしようか」
「そうですね。リリアーナ様と相談しておきます」
「頼むわ」
結局、ラオブールさんがお手伝いの要員として呼ばれた。
平民と近しい関係で交渉できるのはラオブルートさんぐらいしかいないそうだ。
「それでジルベール様がやりたい厄介事はなんですか」
「う、厄介事と正面から言われるとは」
「とうさま、ジルベール様にその言い方は失礼でしょう」
「そう、まあいいよ。
これから、平民の職人と話し合ってもらうんだから。
まずはこれを見て」
「ほう、大きな歯ブラシですね」
「ここを触ってみて」
「振動、ですか」
「これで歯にあてるだけで磨けるんだ。
説明するよりも使ってみた方がわかるから。
レティーシア、案内してあげて」