2.14.1 7歳の誕生月
今日は7歳の誕生月。
教会に行く日だ。
午前中にはファールじいちゃんが到着した。
今日のファールじいちゃんは、たくさんの人を連れてきた。
事前に、エレノア、ニナシスティもいるので、音楽とダンスの先生が来ると聞いていた。
先生と思われる人とは別と思われる貴婦人がファールじいちゃんの隣に立っていた。
服装からして先生ではない。
とてもきれいな40歳前後のおばさまだ。
ファールじいちゃんから紹介があった。
「妻のカトレアだ。美人じゃろ」
そういう紹介ですか。
ファールじいちゃんは妻一筋と聞いてはいたけど、こんな感じだったのか。
とても自慢げに、どうだと言わんばかりの妻バカぷりだった。
紹介されたカトレアさんが恥ずかしがっている。
カトレアの名が示すとおりピンクの髪。
眼は黒いのだがとてもかわいらしい感じのする人だ。
ファールじいちゃんと比べると、とても若い気がする。
実は、ものすごく年齢差があるのか。
その服装、姿勢、手に持っている扇。
さすが公爵夫人だ。
「ジルベールです。いつもファールじいちゃんにお世話になってます」
ごく普通に挨拶をしてみた。
「カトレアよ。
あなたがジルベールなのね。
なんてかわいい子なの。
養子になると聞いているけど、いつになったらきてくれるのかしら。
私はいつでも良いのよ。
この人と妾の子なんて苛めたりはしないわよ。
安心してね。
私は子供が大好きなの。
大丈夫よ。
そうね、明日一緒に帰りましょう。
そして一緒にお買い物よ。
ああ楽しみだわ」
弾丸のように一気にしゃべられてかなり驚いた。
いや、かなり驚いた。
ファールじいちゃんの紹介でちょっと恥ずかしそうにした感じとのギャップもすごかった。
そして、なにより養子って何?
そんなの聞いてないし、明日には移動なんて気がはやすぎる。
どうなっているのだ。
夫婦でちゃんと話してるのか、とファールじいちゃんの方を見る。
「まだ連れて帰らんと言ったじゃろ。
ワシの後継者は他の候補者もいるのだ。
それにジルベールはもう少し大きくなってからでなければ王都に連れていけぬ」
カトレア様は、不思議な顔をして私とファールじいちゃんを見る。
「王都では説明できない事情があるのじゃ。
これから説明するから中に入ろう」
ファールじいちゃんは毎年この家に来ているが、まるで自分の家の様にさっさと応接室に移動した。
応接室に移動後、カトレア様に僕の目を見せろと言われたのでイヤリングを外して目を見せた。
一瞬ぎょっとした顔をしたが、納得したようだ。
そしてそっと抱きしめられた。
「ジルベール。はやく大きくなってね。
無事に我が家に来ることを祈っているわ」
意外に大きな胸に挟まれ、ちょっと嬉しかった。
それになんだかすごく良い匂いがした。
さすが公爵夫人だ。