2.11.10 ブルンスワードへの旅行
翌日、おばあさまとは別行動になった。
医者のシーズさんが付いているので大丈夫だろう。
おばあさまは、この地にある友達のお墓参りに行ったそうだ。
一人で行って静かに過ごしたいのだろう。
僕らは昔からあるという庭園も見に行った。
日本風の庭園だった。
最初に作ったのはこの領地の城を作った大賢者らしいが、一度失われた庭園を数十年かけて再現し、それからずっと維持されているそうだ。
城の日本語の仕掛けと言い、この日本庭園。
大賢者さんは間違いなく転移者だろう。
他にも日本の物が無いのだろうか。
できれば日本食が伝わっていると良いのだが。
昼に現地の食堂に入って料理のメニューを見るが、このクロスロードの領地と同じだった。
はずれだ。
そう思っていたところで近くに座っていた人の呟きが聞こえた。
「"ミソ"と"ショウユ"を期待してきたけど、やっぱりだめか。大賢者は転移者だと思ったんだけどな。もう帰ろうかな。金と時間さえあれば自分でも作れそうなんだけどな」
つぶやき自体はこちらの言葉。
だが味噌と醤油は日本語のそのままの発音だった。
鑑定で確認すると、メリーナの加護 中をもっている。
転生者だ。
僕は、近づいて声をかける。
「じゃあ、僕がお金を出しますから、味噌と醤油を作りましょう」
「うわ。びっくりした」
「あ、驚かしてしまいました。
ごめんなさい。
僕はジルベール・クロスロードです」
「ほえ、クロスロードですか。
それはそれは。って。
いやそれよりも醤油って言いました」
「ええ、さっきあなたが言っていたでしょ」
「ああ、そうか。そりゃそうですよね。
醤油を知っていて声をかけたわけじゃないのか」
小声でこっそりと日本語でつぶやく。
『知っていますよ。黒いあれでしょ』
「まさか」
「ここではそれ以上は言えません」
相手の男性は、なにか考え出した。
それから立ち上がり、きちんとした姿勢で話しはじめた。