表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/536

1.3.3 転生者B

 いつもは薄化粧の姿しか見せていないが、今はアイドル化粧のまま。

 みんなが褒めてくれる格好だ。

 もしかしたら先生も少し興味を持ってくれるかもと期待した。


 先生との会話で先生が思っていたよりもずっとまじめだということを知った。

 自宅に着いた時に、お礼と言って先生を部屋に誘ったらどう答えるだろうか考えたけど、まじめな先生は断るだろうなと。


 そんなことを考えたことが恥ずかしくなった。

 そして、私のアイドルグループの仲間リリーが先生の従妹ということがわかったときだった。


 突然に爆音が聞こえた。


 後ろを振り返ると、車が爆走してきた。何も考えられず体が膠着(こうちゃく)する。


 身動きが取れない。


 ぶつかる寸前に、先生に押されて事なきを得るが、先生が車にひかれしまった。


 私は驚きのあまり声が出なかった。


 先生はひかれた後にすぐに首を持ち上げた。

 良かった生きている。すぐに救急車を呼ばないと。


 ところが、ひいた車が後退する。

 そして先生を再びひいた。


 車は何度も往復し先生を完全にひき殺した。


 目の前で起きた悲惨な現場が理解できず、そのまま立ち上がることもできず動けなくなった。



 車のドアが開き、人が出てきた。


 リリーを好きなはずの人だ。今日、夕方の公演でリリーに花束を渡していた。間違いない。なぜここにいるのかわからなかった。


 男は、私に向かってしゃべり始めた。

「リリーにふられた。リリーはもう手に入らない。でも、リリーのことが好きだ。あきらめきれない。死のうと思ったけど、せめてリリーのためになることをして記憶に残りたくて。リリーの邪魔になるあんたを殺しに来た」


「私を殺すようにリリーが頼んだってこと?」 

 恐る恐るたずねる。


「ふ、リリーは天使だ、そんなことを言うわけがないだろ。これは僕が決めたことさ。リリーがあんたのことを恨んだりするわけないだろ。でもわかるんだ。あんたがいるとリリーは有名になれない。だから僕はリリーのために君を殺すのさ。それから僕も死ぬよ」


「そんな、いやよ。死にたくない。 それに先生は、その人はリリーの従兄よ。どうして、なんで殺したの」

 私は悲痛な叫びを上げるが、男は淡々と答える。


「君を殺すのに邪魔だったから殺したけど、そうか従兄だったのか。じゃあ丁度良かったよ。リリーは従兄が好きだって言ってた。丁度良い。丁度。リリーが好きだと言った従兄と一緒にあんたが殺される。リリーは裏切られたって思うだろ。君がリリーの好きな従兄を奪った。君と付き合うから殺された。全て君が悪いって。さあ、君も死んでくれ」


 そういって、男は特に表情を変えるでもなく、今から料理をするかのような顔で包丁を取り出し両手で握る。


 そして私の胸に包丁を刺した。


 私は男を睨みつける。


 それでも男は淡々と刺してくる。

 何度も何度も刺してきた。

 途中で痛すぎて目を閉じ床に倒れこむ。

 痛すぎて痛さはわからない。


 寒かった。


 寒い中自分の温かい血がどくどく流れ出ていくのが解った。


 苦しんだ時間は数秒だったのかもしれない。

 それでもその時間が無限に感じられた。


 そして、気が付くと、白い空間にいた。


 どうなっているのだろうか。自分は死んだはずだ。ここはどこ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星★ よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ