2.9.8 魔法の勉強
次の日、工房に行って粘土で作った現物を見せながら魔石と魔法陣を入れるための穴のサイズや歯ブラシの可動部分について相談した。
蓋は、振動を伝えやすくし、水分が入りこまないようにするシール構造を説明していくつか試作品を作ってくれることになった。
完成した魔道歯ブラシは、まずは家族に使ってもらう。
結果は、みな歯がきれいになると好評だった。
特にニナシスティは歯ブラシが嫌いだったが、魔道歯ブラシは痛くもないし当てるだけできれいになるのだから嫌がらなくなった。
これを製品にしたいと思ったけど、現状は手作りでケースを彫っているのでとても量産できる物ではない。
それに魔法陣を作り上げるには魔力が必要だ。
その他にもいろいろ解っていないことがある。
まずは、魔石を使って魔道歯ブラシを動かし続けるテスト装置を作った。
バーニィの予測どおり、充填できない魔石にずっと魔力を流せばすぐに壊れると言っていたので実験で検証した。
大きめの魔石から魔力を供給し続け魔力を流し続けると4日で壊れた。
ばらつきがあるが最長でも7日で壊れる。
1回3分、1日3回使って3年以上の寿命があるが5年以上はもたないだろう。
それだけ壊れなければ十分だと思ったのだが、この世界の魔道具は簡単に壊れない。
そういった事情から魔道具というのはとても高価だ。
転移門は200年前に作られたそうだが、今でも稼動している。
家の魔道具も設置から100年経っているがまだまだ現役だ。
魔道具は壊れないというのが一般的な常識だ。
だから3年で壊れる魔道具を作ろうと思う人はいない。
元の世界の電気製品と同じ考え方で魔道具を作るのが受け入れられるかわからない。
だがもともと歯ブラシは数か月で交換する物だ。
本体が3年、ブラシは交換品でもっと短い周期で買い替えるのだから魔道具としてではなく、歯ブラシの延長と考えれば受け入れられそうな気もする。
一度購入すれば一生買い続けるだろうと思われる商品は、製造側から考えればとても魅力がある。
だが、3年で新しい物が売れるとすると、新たに魔法陣に魔力を込めなければならない。
それは大変だし勿体ない。
できれば魔法陣を回収するか魔石を簡単に変更できるようにしたい。
大きな商売に繋がる気がするが、作り方、販路、回収方法まで考えなければ上手く運用できそうにない。
課題を確認して、準備を整えてから実行に移すべきだな。