1.3.2 転生者B
事務所に入ると続々と偉い人がたくさん来てすごく褒めてくれた。
ちょっと騙されている気もしたが誉められると嬉しかった。
そして、プロダクション契約をすればレッスン代も無料らしい。
まず練習に参加してみた。これが意外に楽しい。
バイト代も必要だったのでバイト感覚でアイドルを始めることにした。
入ったグループはできたばかり。
新人ばかりの集まりで、後ろの列は交代で舞台に上がるのだ。
するとお客様の投票結果であっというまに最前列に並ぶようになった。
偉い人に言われた通り、すぐに人気が出て時給もどんどん上昇。
大学に行く時はあえて薄化粧でアイドルも秘密にしていた。
そして学業はおろそかにせず二足のわらじでがんばった。
大学1年の学年末試験も終った頃、本当にそこそこの人気が出てきた。
テレビにも少し出たこともあるし、ソロデビューの話や写真集のオファーも来ていた。
でも学業も大事だし一生をアイドルとして過ごすつもりは毛頭無かったのでどうしようかと悩んでいた。
そんな日々を過ごす中、事務所からストーカー被害にあった子がいるから、来月から自宅までの送迎をすると連絡があった。
ほんとはすぐに送迎を始めたいけど来月からしか契約ができないと残念がっていた。
それまではタクシーを使ってほしいと。
領収書をだせば処理するから、ほんとに気をつけてと念を押された。
それから僅か数日後の事だ。
今日は、事務所と今後のことについて打合せがあり帰りが遅くなった。
結局、終電に乗ることになった。
電車の中では帽子にマスク、変な眼鏡で防御。
駅に着き、タクシーを拾って帰ろうと思ったが、タクシー乗り場には長大な列が。
まっていたら1時間以上はかかりそうなぐらい並んでいる。
駅から家まで歩けば20分ほどなのに。
そう思っていたら目の前に大学で数学講座を担当している先生を見かけた。
本年度の講義が終り春休みに入ったので2週間ぶりに先生を会えた。
私のお気に入りの先生だ。
ちょっとだけ好きな、いや少しだけ好きな、ほんとは大好きな先生だ。
チャンスだ。
私は急いで帽子を外してマスクを外し、眼鏡も全部鞄に入れて、声をかける。
そして先生を見事口説き落とし、一緒に帰ることになった。
そしてつかの間の、たった20分のデートが始まった。
僅かな会話でも嬉しかった。