第7話 街?農村?いやいや廃村です
大規模災害の表現があります。
苦手な方はご注意下さい。
「アッアシュリー?これが街?」
「ええ、驚いた?これから私達が居住する屋敷に向かうわ」
驚くわ!!
街って言わない!これは廃村だろ?
道は辛うじて、舗装されている程度だし、家はめちゃくちゃで、殆ど見える家は崩れてる
さして言うならば・・
「何かあったのか?」
アシュリーは俯いたままコクリと首を縦に降った
「まず屋敷に入るわ、それから街の代表者を紹介する。その時にちゃんと説明する」
「あっ・・ああ、分かった」
ここで問い詰めてもダメそうだ
この廃村を見ながら屋敷へと向かった
一際大きな家があった。馬車はその前に止まり、いそいそと帰っていった
屋敷?の周りは所々に木製の杭が打ち込まれていて、その間を縄を這わしていた
あれは門なのではない。ここからはこの屋敷の土地ですよーっと言っているだけだ
さらに向かって左の屋根は大きく崩れてメテオでも喰らったみたいになっていた
きっと俺の顔は引きつっている。間違いない。
「カナデ?入りましょう」
「・・・はい」
観音開きの扉を開けるとホールになっていて、中央には階段。
入った所で、中年の男性と、年若い少女がいた
「ただいま、変わりはない?」
アシュリーは男性に向かって声を掛けた
「お帰りなさいませ領主様。変わりはありませんでした、お疲れでしょう応接室にお茶を用意しましょう。クロエ!」
「はい、用意して参ります」
俺は応接室に通された。
おいおいまじか
窓ガラスがなく、あるのはうっすい布が貼られてた窓。
埃まみれのソファー
座るとボブっと埃が舞った。アニメか!
クロエと呼ばれた少女が紅茶?をいれてくれた
桃みたいな味がほのかに香る紅茶だった。上手い
アシュリーと俺、対面に男性と少女座っている
「カナデ、自己紹介を」
「佐藤奏です。よろしくお願いします」
「サトウ・カナデ様?家名のカナデ様とお呼びすれば宜しいでしょうか」
「いや、奏が名前で家名は佐藤ですが、奏と呼んで下さい」
「畏まりました。ではカナデ様とお呼びします。」
男性は穏やかに言った。感じのいい人でよかった
「私はトゥケーと申します。カナデ様がいらっしゃる前までは村長をしておりました。そしてこれが私の娘の」
「クロエと申します。カナデ様、以後お見知り置きを」
今村長って言ったよね?聞こえたよ?街じゃなくて村?
おーーーいアシュリー?
ギギギと首を回しアシュリーを見た
アシュリーは目を泳がせてから、口を開いた
「ゴホン・・えっと、説明するわ」
「事細かに頼む」
要約するとこうだ。
前領主が死去する際は速やかに、新しい領主が結界を張るらしいが、アシュリーが王都からの帰還途中に死去されたそうで、結界を張るのが遅れた。その隙をダンジョンの魔物は見逃さず、モンスターが街になだれ込んできた。到着後、すぐにアシュリーが結界を貼ったが、時既に遅し。
街は半壊、いや全壊し、前領主が危篤状態だったので、念のため配備された騎士団とアシュリーで結界内のモンスターを倒したそうだ。
しかし住人達の被害は計り知れない。街外れの住人は残らず被害にあい、騎士団の置かれた街の中心部でさえ、殆どの住人はモンスターの餌食となった
残った住人達に生産スキルを持つものが居らず、街を建て直すには外部から雇わなくてはならない、しかも大量に
そんな雇う金もなく、ボロボロになった畑を直すのに体いっぱいだったそうだ。
アシュリーの手は、合わせて固く握られていた。その手は震えていた
辛かったと思うし、責任を感じているだろう
もちろんトゥケーさんもクロエちゃんも辛いはずだ。見た来た街を思い出した。確かに建物はボロボロだが、住人達の表情が明らかに暗い、失意のどん底で疲れきっている
辛いなか、壊された家を見ればその惨劇が蘇ってしまうのではないだろうか?
「話は分かりました。俺は生産スキルがあるって言ってもまだ使いこなせないですし、至らないとは存じますが、頑張ってみますので、どうぞよろしくお願いします」
俺は頭を下げた、謝るとかじゃなくて、彼等に敬意を払いたかった。辛い現実だが、何とか食料を確保して懸命に生きる姿に。おもてなしとして、美味しいお茶をいれてくれた心遣いに
顔をあげるとアシュリーがこちらを見ていた。
悲しい顔をしてる、眉を下げたまま「ありがとう」と言った
新ヒロインクロエちゃん。描写は後ほど
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