この世界の理
「だから僕たちはあの夢と呼ばれる世界から飛び降りてここに来たんだ」
真紅の瞳の青年はそう話を締めくくった
吹雪の中迷い込んだ小さな村の中で出会ったのは
世界の理を否定した反逆者たちだった
良いことを行うと翼が輝き悪いことを行うと翼がくすむ
翼が黄金に染まるとき虹の橋が現れ願いの叶う楽園に行くことができるだろう
翼が漆黒に染まるときその翼は崩れ落ち二度と楽園への道は開かれることはないだろう
楽園ではすべての願いが叶い何も問題が起こることはない
楽園に行けばあらゆる幸福が訪れる
これがこの世界で言い伝えられている伝説
いや、伝説というのは正しくないのかな
だって『翼』も『虹の橋』も『楽園』も実際に存在しているのだから
伝説というよりはこの世界の理を表した物と言った方がいいのかもしれない
『楽園に行き幸せになる』
それがこの世界の目標であり神の定めた掟である
良いことをすれば背中にある『翼』が輝いていき
綺麗な金色になったら虹の橋を渡ることができる
虹の橋の向こうにある楽園では幸せに暮らすことができる
だけど悪いことをすれば『翼』の色が少しずつ暗くなって
完全に真っ黒になったら『翼』は消えてしまう
『翼』の消えた『羽無』はもう二度と楽園には行くことができなくなる
楽園に行かなかったり楽園から去ったものは『反逆者』として瞳が真紅に染まる
『反逆者』は世界に逆らったのだから殺してもいい
逆らった方が悪いのだからどれだけひどいことをしても悪行にはならない
それがこの世界のルールで、この世界の常識で
だからそのことを疑問に思った事なんて一度も無かった
『反逆者』だから何をしてもいい
『反逆者』は何をされても文句を言えない
『反逆者』は忌むべき者
だからって『反逆者』をいじめたり迫害してもいい理由にはならないんだって
私は…いや私だけじゃない、ここにいる全員がわかってなかったんだ
彼らがどんな理由で世界に『反逆』したのかなんて
どんな思いで世界に『反逆』したのかなんて
そんなこと一度も考えたことなかったんだ