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「ぽかふりょ」台本

作者: A18

登場人物

依:相葉依緒あいばいお

隆:尾丹隆一おにりゅういち

姫:春野姫代はるのひめよ

柊:柊洋太ひいらぎようた

日:尾丹日向おにひなた

乾:乾智也いぬいともや

銀:ぎんC不問


↓以下台本

***

(通学路)


1依:太いおさげに、牛乳ビンの底のような眼鏡をかけた、見た目からして完全なる地味な女子生徒。趣味は読書。声も背も小さくて存在感はあまりないし、方向音痴でいつもドジをして周りの人に迷惑をかけちゃう。でもいつか、こんな私の目の前にも素敵な人が現れて憧れの「恋」というやつを・・・


2姫:いーお!!!

3依:わわっひっ、ひーちゃん!?

4姫:うお、っとごめんごめん、そこまで驚くとは思ってなくてさ。なにぼーっとしてんの。どした?風邪?

5依:う、ううん。元気だよ?ひーちゃんは?

6姫:あたしは勿論超元気!なんせ今日から高校生だよ?なんかワクワクしない?

7依:そうだね・・・私はひーちゃんと同じクラスじゃないとお友達出来るか不安だから・・・

8姫:大丈夫だって、クラスが違ったとしてもあんたのことはあたしが守ってあげるから!それにほら、あたし以外にもあの馬鹿が

9柊:誰のことかねえそれは

10姫:噂をすればあんたのことよ洋太。

11依:あ、お、おはよう洋くん。

12柊:・・・はよ。今日も相変わらず地味だな依緒。高校生になってもなあんも変わんねえのな?

13依:あ・・・うん、えへへ・・・

14姫:そこが依緒のいいとこでしょ?可愛い可愛い依緒が変わったらあたし・・・

15柊:カワイコぶっても恐怖なだけだぜ姫代ちゃん。

16姫:死にたいの?

17柊:すんません

18依:ふふ、あ、急がないと入学式遅れちゃうよ・・・!行こ、ひーちゃん!洋くん!


19依:中学生の時に出会ってからずっと仲良しの春野姫代ちゃんと、家が隣でちょっと意地悪だけど幼なじみの柊洋太くん。二人と一緒に初めて高校へと向かう朝。まさか、私、相葉依緒の運命が大きく変わるのが今日だったなんてその時は思ってもいませんでした。


20依:企画ボイスドラマ

21全員:ぽかふりょ


***

(教室)


22姫:あたしと依緒が同じクラスでよかったよ!まあ余計なのもついてきたけど

23柊:だから、誰のことかねえそれは

24姫:だから、あんたのことよ洋太

25依:で、でも私、二人が同じクラスだったらすっごく安心だよ?しっかり者のお姉ちゃんとお兄ちゃんが近くにいてくれてるみたいで…えへへ

26柊:・・・お兄ちゃん、ね

27姫:ま、まあ依緒が安心するならいいじゃない、ね、洋太

28柊:・・・依緒は危なっかしいからな、同じクラスにいたほうが都合がいい

29依:えっと・・・いつも迷惑をかけてごめんね?洋くん。

30柊:・・・別にそういうんじゃねーし

31依:・・・?

32姫:んんんっだあ!ったく男ならはっきり言えよ!!依緒のことがしんぱ・・・

33柊:おおおお?!あれはなんだあ?!なんだか向こうがとってもざわついている!!!

34姫:ちっ

35依:ほんとだ、なんだろう・・・?


36姫:あ、あいつ・・・ここの高校だったのか・・・

37依:男の子・・・?うわあ背高いねえ・・・

38柊:なに呑気なこと言ってんだ馬鹿。いいか、お前あいつにだけはぜってえ近づくんじゃねえよ

39依:え?どうして・・・?

40姫:依緒はこういうの疎いから知らないだろうけど。あいつはこの辺じゃすごい有名な不良なんだよ。何人も病院送りにしてるって噂だし、中学の時だって先生が手をつけられなくて月に何回か授業を受ければ卒業を約束されてたってさ。

41依:怖い人なの・・・?

42柊:お前なんか一瞬で捕食されて食われちまうかもな

43依:ええ・・・っ!?

44姫:いい?依緒。あいつと目を合わせちゃ駄目。話すなんて以ての外だからね?

45依:う、うん・・・


***

(放課後敷地内)


46依:ひーちゃんは中学からバスケットボール部のエースだったもんね、やっぱり高校でもバスケットボールするんだ・・・。前までは終わるまで待ってたけど、やっぱり迷惑だよね・・・。ちゃんと一人で帰れるようにならなきゃ・・・。とにかく今日だけはひーちゃんが入部し終わるのを待って相談してみようかな・・・。洋くんは優しいけどたまに意地悪だし・・・方向音痴だから一緒に帰ってなんてお願い出来ない・・・うううう・・・だ、駄目よ依緒!今悩んでも駄目!とにかく本でも読んで・・・っあ、しおりが・・・!


47隆:・・・?

48依:よ・・・よりによって・・・今朝の不良さんの足元に落ちてしまうのねしおりさん・・・。ど、どうしようどうしようどうしよう・・・二人から目を合わすなって言われてるし・・・でもしおりが・・・諦めて逃げる・・・?で、でもしおりがないとどこまで読んだかわかんなくなるし、でも、でも・・・

49隆:・・・

50依:ち、ちちち近づいていらっしゃる・・・!!!歩いてこっちに近づいていらっしゃ・・・

51隆:ちょっと

52依:はっ・・・はい・・・。

53隆:これ、あんたの?

54依:そ、そうです・・・・・

55隆:そう。・・・はい。

56依:・・・・え?・・・・あれ?

57隆:はい、って。早くとれよ、でどっか行け。

58依:あ、ありがとうございます・・・。・・・あの、

59隆:なに

60依:意地悪・・・しないんですか?

61隆:・・・は?

62依:私のお友達の洋くんは私が取ろうとしたらひょいってして、お前こんなんも届かねえのかよチビだなあって意地悪して来るんです。あの・・・この辺じゃすごい有名な不良・・なんですよね?私に意地悪しないんですか?

63隆:・・・・・

64依:え、あ、ごめんなさい・・・!不良“さん”ですよね!私ってば失礼なことを・・・

65隆:・・・尾丹

66依:え?

67隆:・・尾丹隆一だ。不良さんはやめろ、・・・気持ち悪ぃから

68依:尾丹・・・隆一くん・・・ふふ、強そうな名前ですね・・・!私は相葉依緒っていいます。

69隆:・・・・あんたさ、俺のこと怖くねえのかよ

70依:怖い?なんでですか?

71隆:お前もいろいろ噂聞いてんだろ。俺が病院送りにしてるとか。あとはヤクザと関わってるとか学ランの中に常にナイフ隠し持ってるとか

72依:ええと・・・あとの2つは初耳です・・かね、えへへ・・・

73隆:・・・はぁ、もういいからさっさとどっかいけって。見られちゃまずいだろ。

74依:まずい?どうしてですか?

75隆:なんでどうしてって・・・俺と話したがるやつなんかいねえんだよ普通は!質のわりぃ連中から目ぇつけられる前に帰れっつってんの。

76依:あ、やっぱり・・・!

77隆:は?

78依:私、尾丹くんはそんなに悪い人じゃないって思ったんです。意地悪もしないし、こんな地味な私とも普通に会話して下さる。それに・・・ほら!!

79隆:ちょ・・・っおい!

80依:学ランの中にナイフなんてありません!噂はデマカセですね!

81隆:・・・・・・・

82依:はっ、あ、すみませんいきなり前を開けたりしちゃって・・・!私ってばなんてことを・・・

83隆:・・・・・変なやつ。

84依:・・・あ、あのすみません・・・

85隆:謝んな、・・・いい意味で、だから

86依:え・・・・

87隆:でもこれからは俺には関わんな。今日は俺から話しかけちまったけど、もう二度としねぇ。目も合わせんな、分かったな。

89依:そんな・・・!私尾丹くんとお友達になりたいです・・・!

90隆:・・・無理だよ。

91依:あ・・・・!・・・・・・行っちゃった・・。・・・尾丹・・・隆一くん・・・。


***

(放課後、教室)


92柊:中学の時と同じように先生びびっちまって、やっぱり何回か授業を受ければ卒業出来るらしいぜ尾丹のやつ。どうりであれから一週間姿を見ねえ訳だ。

93姫:まあそのほうが学校は安全だからいいっちゃいいんだけどねえ。ね、いーお?

94依:・・・・

95姫:なに依緒どうした?調子悪い?

96依:そんなに悪い人じゃなかったけどなあ・・・

97姫:ん?なんて?ごめん聞き取れなかった。

98依:なんでもないよ、ひーちゃん!それより今日は部活でしょう?頑張ってきてね?

99姫:お、おお・・・でも本当に一人で帰んの?確かに待たせんのは悪いなあとは思ってたけど・・・。

100依:大丈夫だよ!!さすがにもう迷惑かけられないし、万が一迷っても人に聞けるから・・・

101柊:小学生低学年かよ

102依:え、えへへ・・・・

103姫:そっか、わかった。でもなんかあったら連絡してくるんだよ?気をつけてね

104依:うん!じゃあひーちゃん洋くん、また明日ね!ばいばい!

105姫:ばいばいまた明日ー!・・・・・・・あのさ洋太、あんたもうちょっとマシな言い方出来ないわけ?あれじゃほんとに嫌われる一方でしょ。というかあんたが送ってあげたらいいじゃない、家隣りなんだし。

106柊:・・・別にやりたくてやってる訳じゃねえっての。それに、出来たら俺だって送ってやりてぇよ、心配だし・・・。でもあいつは俺を怖がってる。まあ俺のせいだけど・・・。

107姫:あんたのそのひねくれた性格、たまに可哀想になるわ。小さい時からずっと好きな子に、素直になれないせいで怖がられてるなんて

108柊:・・・うるせぇよ


***

(小学校前)


109依:ま、迷った・・・。まさか学校を出て、ものの数分で全く知らない所にたどり着くなんて・・・私の方向音痴の酷さには自分でも驚いちゃう・・・ってそんなこと言ってる場合じゃなかった・・・!えっと、どうしたら・・・あ、ひーちゃんに連絡・・・は駄目だ・・・部活中だし迷惑かけないって決めたんだから・・・!わあんどうしたらいいの・・・・・ってあれ?


110隆:ほら先生にちゃんと挨拶しな

111日:・・・せんせ、さようなら

112隆:いい子だな。さ、うちに帰るぞひな・・・た・・・

113依:尾丹・・・くん・・・?

114隆:お・・・・まえ・・・・

115日:おねーさんだあれ・・・?りゅうにいのおともだち・・?

116依:りゅう・・・にい・・・?

117隆:はぁぁぁぁぁ・・・・・・・


***

(尾丹宅)


118依:つまりご両親は海外で勤務されていて、尾丹くんは妹の日向ちゃんと二人で暮らしていると・・・。

119隆:そう。で、俺は朝から働いて生計立ててるから普通の学校には行けねえ。その事情を学校に話したら大事な時に何回か学校に来て書類もらったり話聞いたりしたら卒業させてくれるって言うから。

120依:ええと・・・あのじゃあこの辺じゃすごい有名な不良さんっていうのは・・・

121日:・・・りゅうにいはけんかしないよ・・・?おりょうりもすごくじょうずなの。おせんたくも

122依:・・・・・・・・

123隆:・・・・・・・・

124依:あの・・・誤解を解こうとは思わないんですか?

125隆:誤解?

126依:だって不良さんどころかすごくいいお兄ちゃんじゃないですか!皆さんの誤解を解きましょうよ!すごく酷いことを言われてるのにどうして何も言わないんですか?

127隆:はぁ・・・もういいんだよいちいち説明するのも面倒だし、学校は分かってくれてる。別に誰かに迷惑をかけてるわけでもないし、ただの噂だ、いつかは消える。

128依:でも・・・

129隆:それに

130依:・・・それに?

131隆:昔から厄介な奴がいて今も狙われてる。

132依:だから私を避けようとしてくださったんですね?

133隆:あんたなぁ、良いように俺を言いすぎだ。俺はそんなやつじゃ・・・

134依:いいえ、尾丹くんはいい人です。例え前は喧嘩をしていたとしても、今日向ちゃんの為にここまで頑張っているんです。日向ちゃんはそんなお兄ちゃんが大好きなんだよね?

135日:うん・・・りゅうにいのことだいすきだよ・・・やさしいもん・・

136隆:日向・・・・

137依:悪いひとはこんなふうに言ってはもらえない・・・でしょう?

138隆:・・・・・はぁ・・・ほんっと、・・・参ったよあんたには

139依:あ・・・わたしまた偉そうなことを・・・ごめんなさ・・・むぐっ

140隆:・・・だから謝んなって言ったろ。いい意味で、だよ。

141依:・・・ぷは、あ、あの・・・!私、ご迷惑なことだとは思ってるんですけど・・・、尾丹くんと学校でも会いたいんです。

142隆:え?

143依:私、男の子とこんなに話したの初めてで・・・緊張せずに話せたのも・・・。男の子で唯一話してくれる洋く・・・柊洋太くんも幼なじみだけど、ちょっと怖くって上手く話せなくて・・・。尾丹くんともっと話したいなって思ったんです。尾丹くんのこともっと知りたいんです。もっと仲良くなりたい・・・。だから、学校に今までよりちょっとでも良いから来てもらいたいんです。

144隆:いやでも俺は・・・

145日:りゅうにい・・・わたしもりゅうにいに、がっこたくさんいってほしい

146隆:日向お前・・・

147日:おともだちとかいっぱいつくってほしい・・・

148隆:・・・・・・・

149依:わがままなのは分かってます・・・。でも私、尾丹くんにも楽しいって思ってもらいたいです。尾丹くんの笑顔が見てみたい・・・。

150日:わたしもりゅうにいのえがお、みたい

151依:だめ・・・ですか・・・?

152隆:・・・・・はぁ、ずるいだろそういうの。

153依:ず、ずるいですか・・・?

154隆:ああ。めちゃくちゃずるい。・・・・行きたいと思っちまうだろ。

155依:ほ、本当ですか・・・?!やったあ・・・!嬉しいですわたし・・・!

156隆:・・・ったく、あんたみたいな馬鹿、ほんとにいるんだな・・・・ふはっ

157依:あ、今笑いました?

158隆:・・笑ってねえよ

159依:いや笑いましたよ!ふはって言いましたよいま!

160隆:ああああうるせえ笑ってねえって!

161依:いーや笑いました!日向ちゃんわらってたよね?見てた!?笑ってたよね!ふふふ!!

162日:ふふふっ

163隆:日向も笑ってんじゃねえよ!あああもうなんだよもう・・!ははっ


***

(教室)


164姫:え、

165柊:え、

166姫:ごめん依緒、私いま耳と脳ミソが連携取れてなかったみたい

167依:私尾丹隆一くんとお話したの。学校に来るように説得したの。

168姫:いやあの・・・まず前半ね、うん、それもまずビックリなんだけど、後半どうした?

189依:どうしたって?

190姫:ええと・・・依緒が話したという尾丹隆一くんというのはちまたで有名なあの不良とは全くの別人である。オーケー?

191依:ノンノン。ちまたで有名なあの不良くんのことだよ?

192姫:オウマイガーッシュ!!

193依:で、でもねひーちゃ・・!

194姫:なんってことだよ依緒!!あいつに近寄っちゃ駄目っていったろ!!あんな危ないやつといたらろくな目にあわないんだから!!怪我でもしたら大変でしょ?!変なことされてないでしょうね?!脅されたりとか・・・!!

195依:ひーちゃん聞いて・・・!

196姫:こうなったらあたしがあの不良から依緒の事守ってやんねえと・・・!

197依:お、尾丹くんはそんな人じゃない・・・っ!!!!

198姫:・・・・っ?!

199柊:・・・・・

200依:依緒、あんた・・・・

201依:・・あ、ごめんなさいひーちゃん・・・私・・・

202柊:・・・依緒、お前なんであいつに学校に来るように説得したんだ?

203依:え・・・・えと・・・

204柊:・・いいから。怒んねぇから言ってみろ。

205依:・・う・・ん、えっとね・・・実は尾丹くんは・・・


206姫:なるほどねえ・・・

207依:・・・信じてくれるの?

208姫:ふっ・・あんたがあんなに言うの初めてだったしね、信じない訳にはいかないよ

209依:ひーちゃん・・・

210姫:まあでもそれで納得がいったわ。最近尾丹隆一の登校回数が増えたわ、噂が流れなくなってきたわで謎だらけだったんだ。あんたがそんなこと言ったらそりゃ来ちゃうわなあ、男は。ね、洋太。

211柊:なんで俺にふる

212姫:あんたも来そうだから

213柊:っはあ?!俺は別に・・・!

214依:洋くん。

215柊:な、なんだよ

216依:ありがとう、お話聞いてくれて。洋くん私にはいつもちょっとその、・・意地悪だから。今回も聞いてくれないかなあって・・・。でも尾丹くんのこと分かってくれて本当に嬉しいの。

217柊:・・・そうかよ

218姫:お、噂をすれば

219依:あ!尾丹くん!!

220隆:・・っな!そんなでかい声・・・!

221依:尾丹くん、私のお友達のひーちゃんと洋くんです。

222隆:え、あ、・・・どうも

223姫:・・・どーも

224柊:・・・ども

225隆:え、で・・・?

226依:いろいろ二人に喋っちゃいました☆

227隆:はぁぁ?!あー・・・うん、まあ、ありがとう。

228姫:それでいいのかよ!!!

229柊:お礼言っちゃうのかよ!!

230隆:わっびっくりした、・・・まあ、・・面倒くさいから放っておいただけで・・・誤解が解けて話せる奴増えるのは嬉しいし・・。

231姫:・・・こりゃ驚いたぞ・・。

232柊:・・・そうだな・・・

233姫:まさかツンデレキャラが被ってくるとは・・・予想外の展開です。

234柊:そっち?!ってか俺は違うからな!!!!断じて違う!!!

235隆:ツンデレ・・・?

236姫:いやこっちの話。それにしてもちょっと予想外だったというか。なんか変な感じだわ、ねえ。

237柊:・・・そうだな。あの尾丹隆一が、目の前で普通に話してんだもんな・・・

238隆:そうだろうな、俺も普通に話してくる奴相葉が初めてだったし・・・お前らともこうやって話せてるのがなんか違和感っていうか。

239姫:なんか・・・ごめんな、今まで、噂を信じきってお前にひどいこと・・

240隆:いや、いいんだ。そんなに俺は気にしてねえ。ただ日向・・・妹は気にしてたみたいだから・・・こうやって誤解が解けるのは有り難いよ。ありがとうな、ええと・・・

241姫:春野姫代。ひーちゃんと呼べ?名前で呼んだらコロスからな?

242柊:柊洋太だ。

243隆:知ってると思うが尾丹隆一だ。よろしく頼む。

244姫:おい、なにニヤニヤしてんだよ依緒。

245依:えっ、ニヤニヤしてたかな・・・っ?

246姫:してたよw嬉しそうだな?

247依:だって・・・!尾丹くんが私の大好きなお友達と仲良くなってくれるのが嬉しくて・・・!

248柊:・・・俺、先に次の教室行っとくわ。

249隆:あ、俺も・・・


***

(別の教室に向かう途中)


250隆:柊、お前相葉の事好きだろ

251柊:あ?・・・ちげえよ

252隆:見てたらわかる。相葉は鈍感だもんな。気付いてないのあいつだけだろ

253柊:・・・・はぁ、・・・そうだな。

256隆:・・・・いつから好きなんだ?

257柊:・・・・幼稚園から

258隆:・・・そうか、長いな

259柊:・・・・・・

260隆:わかる気がするんだよな・・・

261柊:え?

262隆:・・・・相葉を好きになっちまうのも

263柊:お前・・・・まさか・・・

264隆:そういうんじゃない、と思ってる。今は。まだ。今まで関わったことないような奴だから。

265柊:・・・俺は・・・あいつのそういうトコが好きなんだよ。誰にでも素直で裏表がなくて。真っ白なんだ。歪みまくってる・・俺とは違って。

266隆:俺はお前こそ、ずっと同じ人のことを好きになれる純粋なやつだと思えるけどな

267柊:・・はっ、そんなこと言われたの初めてだわ。お前も依緒に負けねえくらい真っ白だな。

268隆:・・・はは、そんなことねえけど。

269柊:・・・お似合いだよ、羨ましいくらいに

270隆:柊・・・・

271柊:まあまだ渡さねぇけどな

272隆:・・また改めて言いに来る。もし、本気になったら

273柊:宣戦布告ってわけね、おもしれぇじゃん。来いよ、そんときは俺も本気になってやる。


***

(学校の前)


274銀:乾さん、こんなとこまで来ちゃって大丈夫なんですか?あとでとんでもない事に・・・・

275乾:うるせえ黙ってろ銀。俺はなあ、もういい加減に我慢の限界なんだよ。最近アイツの噂を聞かねえと思ったら原因は女だって言うじゃねえか、なあ。

276銀:そうですね、確かおさげに丸眼鏡の地味な女、だったと思いますが。

276.2乾:ふざけやがって・・・この俺様を馬鹿にしてやがる。いいか銀、その女を見つけるんだ。

277銀:しかし乾さん、最近の女はみな色気づいていて、おさげに丸眼鏡の地味女などめっきり見かけませんが、本当にそのような女が存在するのでしょうか。

278乾:それもそうだな、まさかこれも奴のさくにゃ・・・しゃくりゃ・・ええと、・・さ、く、ら、く・・なんじゃねえだろうな?!

279銀:ゆっくり言っても策略が言えない乾さん萌え萌えキュン。

280乾:うるせえ!!意地でも探し出せ!!いねえなら作り出せ!!なんか「かぐらひめ」でもいたろ!姫を嫁に出来ないなら姫を作り出したらいい!って言ったヤツ!

281銀:いません乾さん。人を作り出せとかそういう頭悪そうなことを考える人は乾さんくらいしかいません。あと「かぐや」です、「や」。

282乾:もっもういい!とにかく探せ!!探せったら探・・・あ。

283銀:あ。

284依:ええと、こっちの方にあれがあるからこっちに148歩・・・

285乾:・・・いたな

289銀:・・いましたね

290乾:あいつ相当の馬鹿じゃねえか?

291銀:あの乾さんと並ぶお馬鹿さんですね

292乾:誰だよそいつ。俺と同じ名前の癖に馬鹿とかやめろっつの。次会ったら言っとけ。

293銀:・・・・ここまでとは。

294乾:なんか言ったか?

295銀:いいえ。声をかけますか?

296乾:・・・ああ、勿論だ!


297銀:こんにちは、お嬢さん?

298依:こ、こんにちは。・・あの、あなたがたは?

299乾:尾丹隆一の「お友達」だ!さあてどう調理してや・・

300依:ええっ尾丹くんのお友達なんですか?!

301乾:へえっ?!

302依:尾丹くんには全くお友達がいないと思ってたんですけどそうじゃなかったんですね!!!うわあ・・なんだか凄く嬉しいです!!

303乾:い、いや、お友達ってそういうんじゃなくてなんかあるだろほら!!えええと銀!説明!!

304銀:犬猿の仲、ですかね

305乾:なんだそれは!!!

306依:あっ、知ってます!喧嘩するほど仲がいい!って意味ですよね?

307銀:違う・・けどまあいいか。そうです。

308乾:俺と尾丹は仲良くねえ!!いいかおさげメガネ!俺様は隣の学校で名の知れている不良、乾智也だ!!で、こいつは俺様の右腕、銀だ!

309銀:どうも〜

310依:相葉依緒です。お2人は不良さんだったんですね。乾さんは背が私と同じくらいなので、てっきり銀さんの方がボスの方かと。

311乾:なっ・・・

312銀:あ、それ禁句ですよ。

313依:えっ?

314乾:銀・・・こいつ連れていけ。手荒になってもかまわねえ。

315銀:はぁ、全く。仕方ありませんね。相葉依緒さん、少し我慢をしてください?

316依:な、なにするんですか・・・?!だ、誰か・・・・っ!!!


***

(放課後教室)


317姫:おお尾丹、丁度いいところに!!!依緒から連絡来てないか?!

318隆:春野と柊か。どうした、そんな慌てた顔して、相葉がどうした?

319柊:依緒と連絡がつかねえんだ・・・!!

320姫:そろそろ家につく時間なのにこっちから電話しても全然出なくて・・・今までそんなこと1度もなかったのに・・!

321隆:・・・・まさか・・っ

322姫:っおい尾丹!!どこ行くんだよ?!?!

323柊:・・、依緒・・


***

(倉庫)


324日:おい、起きろ

325依:う、うう・・・

326日:起きろってこの馬鹿

327依:ひ・・・日向・・ちゃん・・?あれ、なんか縛られてる・・・?

328日:やっと起きたかいつまで寝てんだよ。さっさと起きろ、逃げるぞ

329依:・・・日向ちゃん性転換したの・・?それともキャラチェン・・?

330日:僕はもともと男だよ。女の格好の方が都合いい事があんの。それよりあんた、今の状況分かってる?

331依:そうだ・・乾さんと銀さんに連れてこられて・・なんで日向ちゃ・・日向くんはここが分かったの?

332日:それは、・・ほらこれ。

333依:え、とこれは・・

334日:盗聴器。りゅうにいに変な虫がついたら困ると思って、あんたのカバンに付けさせて貰ってたんだ。まさかこんなふうに役に立つとは思わなかったけど。あんたが生粋の馬鹿だってことも分かったしな。

335依:えっ・・と・・?

336日:だーっもう、分かんねえならいいよ。ほんとめんどくさい。とりあえず家に伝言置いてきたし、りゅうにいが来てくれるだろうけど。とりあえず逃げるに越したことはない・・

337乾:おーい、そこで何してんだチビ?

338銀:あれ、いつのまに。

339日:ちっ、チビにチビ言われたかねえなあ。気付くのが早すぎんじゃねえの?

340乾:いーや、ナイスタイミングってやつだよ。お前も一緒に尾丹の餌になってもらう。

341依:餌って・・・お二人の狙いは尾丹くんですか?!

342乾:当たり前だろ。俺はお前になんか興味ねえんだよ。あいつは俺がこうでもしねえと会おうとすらしねえからな。

343依:だからといってこんな事間違ってます・・・!私は構いませんけど、日向くんだけは帰してあげてください!!

344日:お、おい依緒!

345依:この子はまだ小学生ですよ?!こんな危ない事に巻き込まないでください!

345.2乾:そうだな、尾丹がここに来たら開放してやるよ

346日:くそ・・・りゅうにいが目的だと知ってたら伝言なんて置いてこなかったのに・・・!

347依:日向くん・・・

348乾:さてそろそろか・・?

349銀:乾さん乾さん。お目当ての相手がやってきましたよ。

350乾:来たか。


351隆:はぁ・・・はぁ・・・乾・・・お前・・・・

352乾:久しぶりだなあ、尾丹隆一・・・会いたかったぜ?

353隆:・・・俺はこんな形では会いたくなかったけどな。

354乾:そうかよ。まあそんなことはどうでもいいんだ。ついにこの時が来た・・・。俺と・・・・・俺と勝負しろ!!尾丹隆一!!!

355隆:お前まだそんなこと言って・・・

356乾:そんなことってなんだ!!お前は「この辺じゃすごい有名な不良」尾丹隆一!俺は「その隣の学校で名の知れている不良」乾智也!戦うしかねえだろが!!!

357依:それ肩書きだったんですね

358銀:私も知りませんでした。なんか長いしそれに・・・ねえ

359依:うん・・・ダサい

360銀:ダサいですね

361隆:・・・はあ、話にならないな。もういい、相葉帰るぞ、悪かったな巻き込んで。日向もありがとな。

362依:え、でも・・・

363隆:いいから。

364乾:よくねえよ、尾丹隆一。俺がどれだけお前に恨みがあるか分かってねえな。

365依:・・・・恨み?

366隆:悪いがお前に恨まれるようなことをした覚えはないぞ?

367乾:・・・ふざけてんのか?てめぇ・・。・・俺があの日からどれだけの苦痛を味わったか・・・。お前はなぁ・・・!!!俺に言ったんだよ!!!!高校生にもなったら、背はもう伸びないってな!!!!!

368隆:・・・・・・

369依:・・・・・・

370日:・・・・・・

371銀:あぁ・・・可愛い。

372乾:忘れたのかよ尾丹隆一!!!!てめぇは!!身長の低さを気にしている俺に面と向かってそう言ったんだ!!!!

373隆:ええと・・・悪かった・・・?

374乾:謝って済んだら・・・っ・・い、いらんのじゃー!!!

375銀:警察ね、警察。出てこなかったんですね。いやあ可愛い。過去最大規模で可愛い。

376日:お前はさっきからなにを言ってんだ

376.2銀:いやあ、乾さんが可愛くて可愛くて、もう食べちゃいたいくらいに可愛いなあと思いましてね。

377日:・・・こいつが一番危ねぇな

378依:い、乾さん!大丈夫ですよ!私もチビですけど胸を張って生きてますし!

379乾:わたしも、って俺がチビだって前提で喋ってんじゃねーよ!!!

380隆:大丈夫だ、伸びる。高校生でも背は伸びる。はずだ。

381乾:嘘だ!!!無責任に人に期待させんじゃねーよ喜んじゃうだろーが!!!!!俺はな!!あの日絶望を感じてからもずっと牛乳を飲み続けてるんだぞ?!?!毎日だ!!!それなのに1ミリも伸びない!!!こんなに努力してるのに周りの奴らは俺のことをチビチビ言いやがって・・・!!!俺はチビじゃねえ!!!・・・俺は、チビじゃ・・・・・ぐすっ・・うぇ・・・ひっ・・ふぅ・・ううう・・

382依:な、泣いちゃいましたね・・

383隆:ま・・いつものことだな

384銀:乾さん、今日はひとまず帰りましょう。勝負はまた挑むことにして、今は体制を立て直さなければ。

385乾:うっ・・うぐ・・すんっ・・わ、わかった・・先行ってるからな・・。尾丹隆一・・覚えておけよ・・!・・ぐすん・・

386銀:ふふ。あ、皆さん、今日はお騒がせしました。私達はとりあえず退散しますので。ええと、相葉さん、でしたよね。

387依:あっ、はい・・

388銀:いろいろとご迷惑おかけしました。また度々と貴方にはお会いすると思いますが・・優しい目で見てあげてください。いわゆる寂しがり屋の仔犬、なんですよ乾さんは。

389依:そうですね・・・笑 不良さんってあったかい人ばかりなんですね。

390銀:それはどうだか。仔犬では収まらず狼に変身してしまうかもしれませんよ。ねえ?尾丹隆一くん。

391隆:おまえ・・・・っ

392銀:あは、冗談ですよ。さてでは乾さんが待ってますので私はこれで。日向くんばいばーいまたねえ。

393日:じゃあな銀さん


394依:日向くん。あの、さっき銀さんに随分と親しげだったけど・・・

395日:親しげも何も、乾のやろーはりゅうにいの従兄弟だぜ?昔っからしょーもねえ勝負を仕掛けてきては負けてんだよ。

396依:ええっ?!そ、そうなんですか尾丹くん!!

397隆:んー、まあな。早食いとか腕立て伏せとか色々やったかな。

398依:へ、へええ・・

399日:で、あいつの親友の銀さんはそれに毎回付き合ってやってるって訳だ。まあ相変わらずの乾智也厨やけどな。

400隆:ちょくちょく連絡は来てたんだが、毎日何件も電話をよこすんでちょっと放っておいてたんだ。それでこんな事に・・・巻き込んで悪かった。

401依:いえ!気にしないでください!むしろ尾丹くんの事をもっと知る事ができたので私は嬉しいです。

402隆:お前・・それわざと言ってんのか?

403依:へ?

404日:んなわけねーだろりゅうにい。こいつにそんな器用なこと出来るかよ。

405隆:ほんと・・・参ったな・・

406依:えっ・・と?

407日:だからあんたは考えなくていいよ。はやく僕らも帰ろう。お腹減っちゃったよ。

408隆:そうだな。・・・依緒。

409依:はいっ・・・え?今・・

410隆:帰るぞ。

411依:はっ、はい!


***

(依緒宅前)


412姫:依緒っ・・・!!!!ああほんとに良かった!!あたしも洋太もすっごい心配したんだからな!!!!もおおおおお!!

413依:ひーちゃんごめんね?心配してくれてありがと・・っ

414姫:当たり前でしょーが!尾丹が血相変えて走ってったから何があったのかと思ったけど・・無事で良かったよ。

415依:うん・・。洋くんもありがとう。

416柊:・・・・・・・

417隆:悪い依緒、柊を借りてもいいか?

418依:え、うん・・

419隆:すぐ返すから。・・・柊、ちょっと。

420柊:・・・わかった。

421依:・・・ひーちゃん、私やっぱり洋くんに嫌われてるのかな・・・

422姫:・・・依緒、これだけは言っておく。

423依:え?

424姫:あいつはあんたのこと、嫌ってなんかいないよ。

425依:・・でも・・

426姫:頼むよ、それだけは信じてやって

427依:・・・うん、わかった。


428柊:・・いつのまに名前で呼ぶようになったんだ?尾丹

429隆:・・気付いてからだ。

430柊:・・なにに

431隆:俺が、・・・相葉依緒のことが好きだと、気付いてからだ。

432柊:・・へえ、宣戦布告は今な訳ね。でも依緒はお前のことを尾丹くんって呼んでる。その分俺のほうが・・

433隆:・・・そうかもな、でも俺も気付いた以上、引くつもりは無い。お前とは真っ正面から戦うつもりでいる事を伝えたかった。それだけなんだ、会話割って悪かったな。2人のところに戻ろう。

434柊:・・・嘘だよ。

435隆:え?

436柊:分かってんだもう、遅いって。自分で言ってて情けなかったよ、お前より俺の方があいつに好かれてるなんて。そんな訳あるはずないだろ。

437隆:柊、それは

438柊:本人に聞くまでもねえよ。そりゃ誰よりもあいつの事が好きなのは俺だって思ってるし、これからもきっとそうだって。でも俺は素直になれなかった。・・・自分の気持ちに。その時点で俺の負けなんだ。真っ正面から戦うって言ったお前に敵うわけないんだよ。

439隆:なら、お前も真っ正面からぶつかればいいだろ

440柊:でももう

441隆:遅くても!別に素直になっていいだろ。それにお前、俺も本気になるって言ってたろ。今までの柊の思いを全部無かったことにする事は俺が許さねえ。何様だって感じだろうけど・・・それでも。

442柊:・・・ほんと、何様だよ。

443隆:・・・悪い。

444柊:でも、なんでだろうな。・・うん・・そうだな、俺も、真っ正面から戦ってみる。依緒を・・・俺の大好きな人を助けてくれて、ありがとう。

445隆:当然だろ。俺の好きな奴でもあるんだから。

446柊:はは、それもそうだな!


***

(放課後、教室)


447依:洋くん、お話って・・?

448柊:・・・お前、俺のこと怖いだろ。

449依:そ、そんなこと・・・

450柊:いいんだ、意地悪って言われてたし自分でも分かってる。でも頼む、正直に言って欲しいんだ。ちゃんと俺のことも話すから。

451依:・・・うん。あのね、嫌われてるのかなって、思ってたの。

452柊:・・うん。

453依:意地悪もされるし、よく黙ってることも多いから、おどおどしてる私を見てイライラしちゃうのかな、とか・・そう思ってた。

454柊:・・・そっか。

455依:でも洋くんが優しい人だってことも私は知ってるの。

456柊:え?

457依:だって幼稚園からずっと一緒なんだよ?洋くんのことはなんでも分かってるつもり!・・って思ってたんだけど、えへへ・・違ったみたい・・。

458柊:・・・そうだな、お前間違ってるよ。俺は優しくない。お前に怖がられるようなやつが優しいわけないんだ。

459依:そんなこと・・

460柊:なんで俺が優しいとか言えんだよ。お前に優しかった時なんてなかっただろ。ほんとお人好しだな。

461依:それは違うよ!本当に洋くんは優しい人だよ。私のことが嫌いなのに、それでもずっと傍にいてくれたんだもん。心配してくれたんだもん。そんなことが出来る人は洋くんしかいないよ。だから、私、・・私は!洋くんの事大好きなんだよ?

462柊:・・・・・

463依:洋くん?

464柊:依緒、俺はな、お前が言うように、お前に対してイラついたりした事は1度もなかった。けどたった今初めてすっげぇイラついたわ。

465依:・・・え?

466柊:俺はな、お前のことがずっと好きだったんだよ、依緒。

467依:・・・っ

468柊:幼稚園の時からずっと。でも俺は素直じゃねえからお前にはああいう態度とっちまった。それは悪かったと思ってるし、怖がられるのも無理はねえ。けどやっぱりお前は俺のことなんて何もわかっちゃいねえんだ。嫌われてる?逆だよ。

469依:洋くん・・あの・・わ、わたし・・

470柊:うるせえ黙れ。お前のことはもういい。俺はお前とは違って、お前のことは全て理解してんだよ。俺がお前の言葉に対してだんまりが多かった理由を教えてやる。いいか、気づいてねえだろうが、お前は最近尾丹隆一の話ばかりだ。好きな女から他の男の話を嬉しそうに話されてニコニコしてられると思うか?分かっただろ依緒、お前があいつの事をどう思ってんのか!

471依:私が・・・尾丹くんのことを・・?

472柊:そうだよ。尾丹と俺らが仲良くなったのが嬉しかったんだよな?それはなんでだ?そもそもお前はなんであいつと友達になろうとしたんだ?

473依:それは・・尾丹くんの誤解が解けて欲しかったから・・尾丹くんのこともっと知りたかったから・・

474柊:それはなんでだよ?

475依:それは・・私が尾丹くんとは上手に話すことが出来たから・・

476柊:なんで!

477依:なんで・・・・?

478柊:なんで尾丹とは上手く話せたんだよ?不良だって言われてたんだぞ?

479依:・・・・それは・・・それは、尾丹くんが本当は凄く優しい人だったから。あたたかい人だったからだよ。

480柊:・・・はぁ、あのな依緒。優しい、だけが理由ならそれは俺でもいいはずだろ。お前が俺のことを優しいって言ってんだから。でも俺じゃないんだ。俺じゃねえんだよ。お前が選んだのはあいつなんだ。

481依:・・洋くん・・

482柊:お前は尾丹隆一の事が好きなんだよ。出会った時には多分もう。

483依:・・・どうして洋くんがそれを私に・・

484柊:言っただろイラついてるって。八つ当たりだよ八つ当たり。お前が俺に対してどんなひでえ事してたか充分分かったろ。

485依:・・・ご・・、ううん、ありがとう、洋くん。私行ってくるね。

486柊:・・・・ごめん、って言わねぇのかよ。ちっ、言ったら罰ゲームで無理矢理キスの1つくらいしてやろうかと思ってたのによ。まあでも尾丹、悪ぃがお前との勝負は俺の勝ちだ。・・たく、どっちがお人好しだよちくしょ・・


***

(尾丹宅)


487依:尾丹くんっ!!!!!

488隆:う、わっびっくりした急になに・・・

489依:私、尾丹くんの事が好きです!!!

490隆:っえ、ちょ

491依:気付いたんです!私!尾丹くんの事が好きなんだって!!

492隆:ちょちょちょっとまて、

493依:今すぐ言いに行かなきゃって思ったんです・・・!私、こんな私でも恋できるのかなってずっと思ってて!!!気付きませんでした・・・これが恋だったんですね!!!

494隆:待てって!!!気付きませんでしたって、誰かに教えてもらったのか?

495依:あ・・えと、洋くんが・・

496隆:・・あのやろ・・・やりやがったな・・

497依:え?

498隆:依緒、今のそれ全部無しにして。

499依:えええっそんな!!そんなの無理ですだって私尾丹くんのこと好・・

500隆:ちゅ

501依:・・・・・・・へ

502隆:やっぱやめた。両思いなら、して大丈夫だもんな?

503依:い、いいいいいいやいやいやいや

504隆:いや?嫌じゃねーだろ

505依:そっ!そりゃ、いいい嫌じゃなっないですけどここ心の準備ってものが

506隆:嫌じゃないならいいだろ?準備は、だめ。

507依:おっ!!!尾丹くんいきなり意地悪じゃありませんかっ?!?!

508隆:仔犬で収まりそうにねえからさ。狼になろうかと思って。とりあえず家あがっていくだろ?

509依:そっそんな!!かっ帰りますよ!!意地悪はやだです尾丹くん!!!

510隆:そうだな、下の名前で呼んだらやめてやるよ

511依:ええっ?!しし下の名前?!?!ええええと・・・・りゅ、隆一くん!!!!

512隆:あ、すげえいい。よし。

513依:よしじゃないです!!!約束は!!!やめてくれるって約束!!!

514隆:せっかく捕まえた羊を狼が逃がすと思うか?

515依:おっ尾丹くんずるいです!!!!

516隆:ちがうだろ?あと敬語もだめ。

517依:うう・・いじめるの楽しんでるよね・・?!それに私はちゃんと告白したのに隆一くんからは何も・・・!!!

518隆:大好きだよ、依緒。

519依:・・・っそんな耳元で急に言わないで下さい・・!!

520隆:聞きてぇのか聞きたくねぇのかどっちなんだよ。てか敬語。いきなり告白してきたと思えば恥ずかしがるし・・・やっぱあんた変なやつだよ。

521依:う、うう・・・っ尾丹くんなんて嫌いっ・・・

522隆:そうなのか?

523依:嘘だよっ!!好きに決まってるじゃないですかっ!うう・・うえぇ・・泣

524隆:はは、ほんと・・可愛くて困ったな


***

(教室)


525姫:なるほど、であんたらはやっとくっついたわけね?ほんと焦れったいったら無かったわよ。あんだけ依緒からスキスキオーラ出てんのに気付かないとか・・依緒もそうだけど尾丹もなかなかのピュアピュア♡ボーイだわ。

526隆:いきなりそんな声出したら怖いだろ?姫代ちゃん

527姫:死にたいの?

528隆:すんません

529柊:まさかあの尾丹がこれほどまでにくだけるとはな、俺はビックリだわ。

530隆:自分では気にしてないつもりだったけど、結構縛られてたのかも知れねえ。今は凄く気持ちが楽なんだ。こんな俺に優しくしてくれてありがとうな、依緒、春野、柊。

531依:ふふっ当然だよ?だって、ね?

532姫:まあ、そうだな!

533柊:だな。

534隆:な、なんだよ?

535依:尾丹くんがぽかぽかなんだもん!

536隆:ぽか・・ぽか?

537姫:あったかい。優しいってことだろ。

538柊:お前自身が優しかったから、俺達もお前に優しくなれた。だから礼なんていらねーんだよ。

539隆:そうか・・。はは、そっか。

540依:そうだよ!・・ふふっ

541姫:さあて!じゃあ今日学校終わったらどっか遊びに行くとかどうよ!

542柊:そりゃあいいな!お前も来るだろ?隆一。

543隆:・・えっ

544柊:いや、違うな。これは強制だ。一緒に来い、分かったな?お前には愚痴をたっぷり聞かせてやる!覚悟しやがれ!バーカバーカ!

545隆:・・ははっ、ああ、勿論だよ、洋太。

546姫:よっしゃー!!!じゃあ最近出来たパンケーキ屋さん行こうぜ!!

547柊:似合わねえ・・・

548隆:似合わねえ・・・

549姫:絞め殺したろか

550柊:すんません

551隆:すんません

552依:あははっ


553依:太いおさげに、牛乳ビンの底のような眼鏡をかけた、見た目からして完全なる地味な女子生徒。趣味は読書。声も背も小さくて存在感はあまりないし、方向音痴でいつもドジをして周りの人に迷惑をかけちゃう。でもいつか、こんな私の目の前にも素敵な人が現れて憧れの「恋」というやつをしてみたい。そんなふうに思っていたあの入学式の日。


その夢が遂に叶いました。お相手は・・・私の、大好きな人は、・・・とっても優しい、あったかい不良さんでした。
















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