ビクトリー。
はい2話です。
シロ君が言うに転移魔法には簡単に纏めると3つの条件があるらしい。
1つ今までに行ったことがるある場所にしかいけない。
2つ世界を跨ぐ時には歪みを超えなければいけない。
3つ妨害されていないこと。
今居るこの世界は他の世界とは位相が違うらしく歪みの先の世界にしかいけないらしい。
この時は転移魔法使わなくても世界を越えられるらしいが危険度が違うらしい座標が〜とか特異点が〜とか言ってた。
どんな世界かは行ってみないと解からないみたいだけれどそろそろ人恋しくなってしまったみたいだ。
歪みのある地点につくまでにシロ君に戦闘を仕込んでもらいながら向かうことに決まった。
シロ君曰く今の俺では軽くしゅんころらしい。
異世界探検したい俺としても直ぐに死にたくはないのでこの話を受ける。
こうして7泊8日[歪みの先までコンニチハ、シロ君の超ブートキャンプが始まってしまった。
「わぉおおおおおおおおんん。」
「ひぃ~~~~~。」
涙目になりながら大きくなったシロ君から逃げる俺。
途中進む方向を間違えそうになるとシロ君が牧羊犬ばりに誘導してくる。
曰く圧倒的強者と立ち会ったときに恐怖で動けなくなることを防ぐためらしい。
日ごとに威圧も強めているらしく俺からすれば怖いものは怖いとしか言えず違いが分からない。
こうして2時間程のマラソンを終えた後は魔法の特訓をする。
内容は至って地味でシロ君の背中で寝そべりながら大気中のマナを感じるというもの。
エルフ特性のおかげかこれは初日から出来、今は精霊さんとお話をしている。
この山は水、土、風の精霊がたくさんいるらしくみんなとおしゃべりするのは楽しい。
人外の友達ばかり増えていくこの先に一抹の不安を感じながら休憩は終わりだと言わんばかりにシロ君に降ろされマラソンを再開する。
食事はあの林檎と川で採取したネクタスなる飲み物。
煙草な世界の天然水の味はとっても美味しく頭も冴え体の疲れも抜けていくファンタジーな飲み物です。
マーブル世界に常識なんて欠片もありませんでした。
こんなことを5日も続けてこれで6日目。
景色は暗い色が増えていき空気も冷たく世界が変わってしまったかのようだ。
ギィギィと君の悪い声が周囲から聞こえ俺の心に不安を植え付けてくる。
シロ君のおかげで近寄ってはこないが遠巻きに向こうもこちらを伺っているようだ。
この短い間でシロ君の超高スペックぶりは散々見せつけられてきた。
顔良し頭良し力良しのいけめんわんこモンスターからしたら死神以外の何者でもない。
俺がわんこなら惚れているところだった。
危ない危ない。
1人妄想という現実逃避を行っているとシロ君が唐突に降りるように促してくる。
辺りは森の中にしては木々が少なくテントを幾つか広げられるほどに開けた場所だ。
俺が降りるとシロ君は颯爽と暗闇の中に消えていく。
不安な心に押しつぶされそうになりながら1人蹲っていると血まみれの緑色の小人の化け物とシロ君が帰ってきた。
シロ君はヒューヒューと死にそうな声をあげる化け物を俺の前におき腰にさしている錆ついたナイフを俺に渡してきた。
殺せということだろうか?俺がどうしたらいいのか戸惑っているとシロ君は喉元を爪で切り裂き小人は絶命した。
俺は突然の血まみれスプラッタ劇場に吐き気を催し我慢できずに吐いてしまった。
シロ君は2分としない間に同じような小人を連れてきて首の辺りを爪でなぞる。
やはり俺に殺せというようだ。
首を横に振り俺が否定の感情を示すがシロ君の目がそれを許さない。
(慣れ・・とア・ン)
ノイズ混じりの声が聞こえ違和感を覚えながらシロ君の方を向くと疲れきった顔が見えた。
スプラッタな場に呑まれ冷静に周りを見えなかった頭が急に冴えてくる。
シロ君はこの6日間俺を乗せて走り続けてきた。
俺が休憩してるときも寝ているときも彼は俺を起こさないように丁寧に運んでくれた。
疲れていないわけがないのだ。
覚悟を1つ決め喉を鳴らす。ナイフを右手に持ち目の前の醜い小人に視線を向ける。
心臓がドクドクと張り裂けそうなほど音を鳴らす。
顔からは汗が止まらず視界が歪む。
俺は目を瞑り小人の首元にナイフを当て突き刺した。
プギャという汚い悲鳴と共に俺の右手には温かいものがとびちる。
眼を開けると息絶えた死体が1つと青い血がべっとりついた右手があった。
俺は気が遠くなっていくのを感じながらも耐えられず後ろへと倒れこむが白いふわふわに支えられそのまま眠りについてしまった。