限界惑星
環境破壊に資源枯渇、そんな星の人類の物語
この星はもう限界だ。
偉い学者の誰かが言った。
確かに誰が見ても限界だった、世界規模の環境破壊と資源不足は確実に人類の首を絞めていった。
-世界危機会議-
「…という訳で、この星はもう限界です。よって人類移住計画を進めたいと思います」
「馬鹿な!この星が限界なのではない!人類が限界なだけだ!!散々この星を食い荒らしておいて無責任に投げ捨てるのか!!」
ザワザワザワ
「ではどうしろというんです」
「責任を取るべきだ。全人類の人口を10分の1に制限し、環境回復にすべてのエネルギーを向けるべきだ」
「それで人類はどうなるのです。たとえ人口を10分の1にしたとしてもせいぜい200~300年永らえるだけだ」
「その考えがエゴだといっているんだ、200年結構じゃないか、それだけあれば少しは自然を取り戻せるだろう」
「文明は確実に滅びます」
「滅びて何が悪い、人類は特別な生命だから守られねばならないとでも考えているのか?」
「そうです」
「何もわかっちゃいない、そんな考えではたとえ別の資源惑星にたどり着けてもまた同じことを繰り返すだけだ」
「… … …」
「消費し、荒廃させ、そして捨てる。何度でも繰り返すさ。そうでなければこの星を捨てる必要がない」
「それでも生き残らねばなりません、これは生命としての本能です。そして我々にはそれを実現させるための知恵もある」
「…議論は平行線だな」
「しかし、人類の多くは生存を希望するはずです」
「私はそれが情けない…。所詮、多少知恵あるだけの動物だったということだ…人類は」
-8年後-
「ついに完成しましたね、大統領」
「あぁこれで人類は救われるだろう」
「…ところで選出は進んでいるのかね」
「はい、87%まで完了しています。しかし、本当に全人類から選出を行うとは思いませんでした…」
「まぁ、せめてもの贖罪だな、これは。いかなる不正も許されない。…これは命の伝達なのだから」
「1200万人、多いのか少ないのかわかりませんね」
「しかし、この移民船団が我々のできる全てだ。この星に残された54%以上の資源がすでに運び込まれている」
「出発は3年後の予定です」
「それくらいはまだ持つだろう」
「…はい、しかし残された人類はどうなるのでしょう」
「それもすでに考えてある、我々が最後にできることだ、それくらい責任を持つさ」
-14年後-
「予定よりもずいぶん大規模になったものだ」
「時間はかかりましたが意味があったかと思います」
「そうだな」
『…本日、ついに我々人類の希望、惑星移民船団”星の舟”が出発しました…』
『…船団は4つ居住船、7つの環境船、21の工業船からなり、当初予定されていた1200万人の搭乗員を大きく上回る2860万人を収容する人類最後の英知の結集となっております…』
『…星を離れた船団はおよそ27年の歳月をかけ太陽圏を脱出し、あたらなる土地を目指します…』
『…これは別れではありません、新たなる人類の一歩であります…』
「大統領、そろそろお時間です」
「わかった、各国と連絡はできているな」
『…今日という日は全人類にとって記念するべき日となるでしょう…』
「はい、問題ありません」
「では行こう」
『…この日を記念し、各国では盛大な花火が打ち上げられる予定となっております…』
「こんなものが、残された人類の最後の希望となるとはな…皮肉なものだ」
「しかし、ゆるやかな死を待てるほど我々は強くはありません」
「そうだな」
『…それではみなさん、このよき日に…さようなら、さようなら、さようなら…』
…
……
………
-宇宙船デッキ-
「ほら見て、星が光ってる…きれい…」
「みんな。バイバイ…いってきます…」
「いってきます…」
ピー
-ERROR CODE 204 発生-
「先生ぇ!なんか出ましたぁ」
「あぁ、はいはい」
「あー、ざんねん。これは滅亡だね、204だから星を捨てて外宇宙へ行こうとしちゃったんだろ」
「ええぇー、昨日まで文明レベル16で安定してたのにぃー」
そういいながらコンソールのデータを確認する。
「ほら、ここ。ここで消費文明に傾いてる。ここからー、こう」
「あ、本当だ。幸福度が高くなってたから気が付かなかったぁ~」
「ま、次はそのあたりに気を付けてみればもう少しうまくいくから。ちゃんと統計データにまとめておくようにね」
「はぁーい、また最初からかぁ」
ピッピッ、ピー
-RESET ALL CLEAR-
ピッ
-START NEW WORLD-
宇宙好きです。ただ未知は怖いです。
外宇宙とか箱庭世界をテーマにした作品は沢山ありますが、どちらかというと旅立つ側の目線に立ったものが多い気がします。
残された人たちはどうなるのでしょう?そんな気持ちで書きました。
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