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第一章 第三話

投稿~

リムジンに乗ること約一時間。どうやら目的地に到着したようで車は停車する。

ルキフェル達は綾香からリムジンから降りるように促され、ランスリンデと共に下車する。



「随分と大きな屋敷だな……」



ルキフェルが下車して始めに見たのは巨大な屋敷だった。だがルキフェルはそれよりも違うものに注目していた。



(特級魔人に匹敵するこの魔力………人間にしては異様な魔力量だな)



ルキフェルの“瞳”は直接本人を視なくとも誰がどの程度魔力を保有しているか分かるのだ。そのためこの屋敷に存在する一人の強者の魔力をルキフェルは正確に感じ取った。



「ルキフェル」



「何だ?」



「あんた、撃たれたでしょ。医者に見せるから付いてきなさい」



「ああ、そのことか。肩の傷なら問題ない。既に治ってる」



「はぁ?」



綾香は訝しげにルキフェルを見る。ルキフェルは特に痛みを我慢してる様子はない。その事実に綾香は不思議そうな表情でルキフェルに尋ねる。



「どういうこと? あんたは確かに撃たれたはずよ。なのに……」



「言ったろ。傷は既に治ってるって。なんなら見てみるか?」



肩を撃たれた際の傷で赤くなった上着を脱いで、ルキフェルは続けて長袖の服を脱ぐ。タンクトップ姿になったルキフェルが綾香に肩を見せる肩には確かに傷はなかった。

だが撃たれた証拠に血で汚れていた。といってもルキフェルの自作自演なのだが………



「………………」



「おい、どうした? 見ないのか?」



「……いいから服を着て」



顔を真っ赤にして綾香は目を逸らす。彼女は父親以外の男性の裸を見たことがなかったのだ。そのためタンクトップとはいえ、ルキフェルの肉体を見て綾香は恥ずかしがっている。

ルキフェルは一応雇い主になる綾香の言葉に従い服を着る。



「それで、俺達はどうすればいいんだ?」



「ルキフェルは私の護衛になるんだから今日からこの屋敷に住み込んでもらうわ。といっても学院に入学したら、すぐに出ていくんだけどね。ランスリンデは……そうね、ルキフェルと同じく私の護衛として雇ってあげてもいいけど、どうする?」



「ならお願いします。僕はルキフェルさんの忠実な僕なので、離れるわけにはいかないんです」



「………………」



「何だ、その汚物を見るような目は。言っとくが俺は何もしていないし、こいつは男だ」



「あんた……いいわけでもそれはないでしょ。彼女に失礼すぎるわ」



綾香は知らない。ランスリンデがルキフェルの言った通り男だということに……。

おそらく事実を知ったら彼女もランスリンデの存在に驚くだろう。何故男なのだ、と。



「嘘かどうかは自分で確かめてみろ。見かけで判断してると、そのうち痛い目みるぞ」



「はぁ……ランスリンデ、あんたも言い返しなさいよ」



「あの……僕はルキフェルさんの言う通り男ですよ」



「…………はぁ?」



綾香は素っ頓狂な声を上げる。見た目完全な美少女のランスリンデが男と言い出したのだから無理もないだろう。



「ですから僕は男です。嘘だと思うなら胸を触ってください。それで分かるはずですから」



「……そう。なら触らせてもらうわ」



綾香は恐る恐るランスリンデの胸を触る。そこには女性特有の柔らかい感触はなかった。



「うそ………」



「だから言っただろ? こいつは男だと」



未だに信じられないといった表情で綾香はランスリンデを見ている。

彼女の常識はまた一つ壊された。



「……あんた達に常識は通用しないのは分かったわ」



「そうかよ。なら、よく覚えとけ。俺達は世間一般の常識に当てはまらないと」



「分かったわよ。もういいから付いてきなさい。私直々に屋敷を案内してあげる」



「了解」



綾香が歩きだしたのに続いてルキフェルとランスリンデは屋敷内に足を踏み入れた。















各部屋、食堂、大浴場、書斎など屋敷の主要な場所を回ったルキフェルの感想はとにかくデカい、であった。大和国の頂点に君臨するすめらぎの一つ、暁家なら当たり前なのだろうが、色々な屋敷を見てきたルキフェルにとって自身の城と同じぐらいの面積とまでは思っていなかった。

そして綾香に今日から寝泊まりする部屋に連れて行かれている途中、一人の人物が前から歩いてきた。

赤い髪をツインテールにしている綾香と違い、その人物は赤い髪を腰まで伸びるロングストレートにしている。綾香と同じく美少女だが、その鋭い目はあまり人を寄せ付けないだろう。



「む……貴様か。新しく綾香の護衛になった者とは」



「お姉様!!!」



綾香が嬉しそうに姉である女性に近づくと彼女はチラッと綾香を見て笑みを浮かべ、再び鋭い視線をルキフェルを見る。



「私の名はあかつき紗耶香さやか。綾香の姉だ」



「ルキフェルだ。好きに呼べ」



「ランスリンデです……」



「ちょっと、あんた達! お姉様がご挨拶したんだから、もっと礼儀正しくしなさいよ!」



綾香が怒りの表情でルキフェル達を見るが、二人は態度を改める気はない。



「すみません、お姉様。実力は高いんですが、礼儀がなくって……」



「いや、いい。確かに彼は魔力がないようだが、実力は本物のようだからな」



ルキフェルは内心で紗耶香の評価を上げた。彼女の観察眼は評価に値する、そう判断したのだ。



「綾香をよろしく頼むぞ。しっかりと守ってくれ」



「ああ」



ルキフェルの返事を聞くと紗耶香は綾香に小さく一言何か言ってから立ち去った。



(人間にしてはなかなかの実力のようだな……)



「何してるのよ。早く行くわよ」



「あ? 俺達が寝泊まりする部屋に連れてってくれるんじゃないのか?」



「それは後。今はお姉様が来ているから訓練所に行くわよ」



「了解」



行き先を変更した綾香にルキフェルとランスリンデは何を言うわけでもなく付いていく。

綾香に連れられて到着した場所は勿論訓練所。ドーム型の訓練所は四方に三百メートルずつ広がっており、高さは五十メートルほどある。

そして訓練所には常にⅨランクの結界、“無天結界”が張られている。“無天結界”とは結界内の者が肉体的ダメージを受けた際に、結界の維持魔力を減らして回復魔法が発動するといった特殊な結界だ。つまり訓練で死人が出ないようにするための結界である。

しかし常に結界の能力維持のために魔力を注入しないといけないというデメリットもある。

国に存在する巨大な訓練所には全て張られているのは、その利便性故だろう。

結界は大和国の長老的存在、おおとり鷹子たかこによって張られており、一度張られた結界は壊されても空気中の魔力を吸って自己修復するため半永久的に存在する。

“無天結界”が張られている訓練所の一つである暁家の暁訓練所では、一人の赤い髪のロングストレートの女性が炎の剣を持って剣舞を舞っていた。紗耶香である。

若くして東洋の守護神、“十二天”の一つ“火天”の称号を手に入れた天才。炎に愛された姫君と彼女は呼ばれている。

綾香は姉の剣舞を見て見惚れている。ルキフェルとランスリンデも彼女の剣舞の美しさに感心した。ここまでの剣舞を舞える者は世界でもほんの一握りだろう。

紗耶香の剣舞はその後数分続き、終わると見ていた綾香に視線を向けた。



「どうだ、綾香も私と舞ってみるか?」



「えっ!? わ、私はお姉様みたいに舞えませんから遠慮します!」



「ふむ……そうか。なら、ランスリンデ、君はどうだ?」



「僕の剣技は舞には向いていないので遠慮しときます」



綾香、ランスリンデに断られた紗耶香は最後にルキフェルに視線を向ける。



「ルキフェル、君はどうだ?」



「断る。面倒なことはごめんだ」



「ほう……剣舞が出来ないわけではないない、と?」



「どう解釈するかはあんた次第だ」



ルキフェルが不敵に笑うと紗耶香も不敵な笑みを浮かべる。



「ふっ……まあいい。どのみち私はこれから仕事だ。今から剣舞をしている時間はあまりない」



「そうか」



「しかし……気が向いたのなら、何時でもいい、私に君の剣舞を見せてくれ」



紗耶香をそれだけを言い残すと訓練所の出口に向かって歩いていった。

ルキフェルは彼女が訓練所から出ていくのを見届けると、視線を綾香に向ける。



「気が済んだなら部屋に案内してくれ」



「……分かったわよ」



憮然とした表情で綾香は答える。自分より大好きな姉と長く話したルキフェルが気に入らないのだろう。可愛い嫉妬だ。

綾香が歩き始めたのに続いてルキフェル達も続き、部屋まで案内してもらった。

誤字脱字が有りました、御報告お願いします。

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