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第一章 プロローグ

第一章 『創造の魔導書』、始まり始まり

地上界、通称アースは科学と魔法の二つが同時に発達した世界。

魔界、天界とは違い法で縛られた世界。だが法に縛られる代わりに多少の安全が確保された世界でもある。

魔法と科学の両方が発達されているが、六割は魔法によるところが大きい。電気も水道もガスも全て魔力が有れば問題ないからだ。そのため環境も整っている。

科学で発達した部分は車やビル群などの機械的なものや建造物だけ、動力源や大抵のエネルギーは魔力に頼っている。霊脈と呼ばれる場所から魔力を引っ張っているため、動力源は無限に等しいと言われているほどだ。

そんな魔力中心のこの世界は五つの国家によって成り立っている。

先ず一つ目はヨーロッパ連合。イギリスやドイツ等の国々を中心とした魔法至上主義の国家だ。そしてヨーロッパ連合の一国家、ローマ帝国の国内には“五大禁止地域”の一つ“天界門”が存在する。

二つ目にロシア連邦。最も広大な国土を有している巨大な国家だ。

三つ目にアメリカ合衆国。軍事力に優れた実力至上主義の国家だ。そしてアメリカ合衆国の近くの海域には“五大禁止地域”の一つ“魔の三角海域”が存在し、国内には同じく“五大禁止地域”の一つ“竜の渓谷”が存在する。

四つ目に中華人民共和国、通称中国。魔法と武術の二つを取り入れた“魔拳士”が有名な国家だ。

そして五つ目に大和国。極東の小さな島国だが、その実体は少数精鋭に守られた世界的に重要な国家だ。そして国内には“五大禁止地域”の一つ“魔界門”が存在する。

因みに“五大禁止地域”の最後の一つ“王家の谷”はエジプトに存在する。

この五つの国を合わせて通称“Mー5”(マジック・ファイブ)と呼ぶ。“Mー5”とは魔法を扱うことに関して優れた国家に与えられる称号である。

そして“Mー5”の中でも大和国は最も安全とされている。そんな大和国の地に一人の男が降りたった。



「……確か、一度だけ来たことがあったな。ったく、もう彼奴の顔も思い出せねえ」



男、ルキフェルは既に薄らとしか覚えていない遥か昔の思い出に浸っている。一人の少女と出会い、もう一度会いに来る約束をしたのを思い出す。だが少女の名前と顔が思い出せない。



「ルキフェルさ~ん!」



思考を一時中断してルキフェルは後ろを振り向く。

フレイヤの月に輝くような美しい銀色の長髪とは違った美しさを持つ銀褐色の髪を腰辺りまで伸ばした一人の“少女?”がルキフェルを追いかけてきた。



「ルキフェルさん、僕を置いていかないでくださいよ。放置プレイも有りですけど、優しくするのも大切ですよ?」



「……お前が女だったら少しは優しくしてもよかった」



「はっ、まさかルキフェルさんは僕とSMプレイを御希望!? それなら何時でも言ってください。僕なら何時でも何処でも縛ってお仕置きしてくれて構いませんから!」



「どうやったらそんな解釈になる!? 俺はお前の思考回路についていけねえよ!」



ルキフェルの前でイヤンイヤンと体をくねらせる見た目美少女は紛れもない男である。

ランスリンデ・クロード。ルキフェルには及ばないものの、なかなかの長身で美しい銀褐色の長髪を首筋辺りで縛っている。体つきも少女のそれだが間違いなくランスリンデは男。町中を歩けば必ずナンパされるような容姿だが紛れもない男なのだ。



「ちっ、ほら行くぞ。わざわざフレイヤ達に頼んで戸籍まで作ってもらったんだ。さっさと家を確保するぞ」



「あん、もう強引ですね」



ルキフェルに引っ張られるままにランスリンデはルキフェルについていく。

“魔界門”から出てきて走ること一時間。ルキフェル達は森の出口に辿り着いた。



「柵が在りますね。どうしますか?」



「今はまだ夜だ。幸いに柵の周辺に人間の気配はない。跳ぶぞ」



「そういうことですか、分かりました」



同時に二人は跳躍する。助走を付けずに跳んだにも関わらず、ルキフェル達は優に十メートルは跳躍した。

約八メートルは有った柵を易々と飛び越え、着地するとルキフェル達は何事もなかったよう歩きだした。



「さてこの時間帯に物件屋は開いているか」



「どうでしょうか? 流石に開いてないと思いますよ」



「それもそうだな。ならどうするか」



「そ、それなら、僕と二人でホテルに」



妙に恥ずかしそうにもじもじとするためか、ルキフェルにはランスリンデがどうしても美少女に見えてしまう。



「はぁ……お前は男だろうが。女と恋愛しろ」



「欲深い女やルキフェルさん以外の醜い男共なんてゴメンです。僕はルキフェルさんがいいんです」



女に言われたなら、まだしても男に言われては寒気を覚える台詞だ。だが言ったのはランスリンデのため、絵的には何も問題はない。



「……勝手にしろ」



「はい、勝手にします」



ルキフェルはランスリンデを説得するのを諦める。彼?の意志が固いのを知ってしまったからだ。

ルキフェルも、まさか性別学的には男のランスリンデに、ここまで想われているとは思っていなかったため対応に困っている。しかし今すぐに答えを出さないといけないわけじゃないと分かっているルキフェルは話を本題に戻す。



「そこらの良さげなホテルにでも泊まって今日はもう休むぞ」



「はい」



そしてその後ルキフェルはランスリンデと共に所謂シティホテルにチェックインして、一日を終えた。















夜が明けて朝方。ルキフェルは眠りから目覚めた。

隣のベッドで眠るランスリンデにチラッと一瞬だけ目を向け、ルキフェルはベッドから降りる。



「……久しぶりにゆっくり眠れたな」



毎夜毎夜、リル・リリスやフレイヤ、奈々鬼等の女性達の夜の相手をしていたルキフェルはまともに眠る時間がなかった。そのためルキフェルは久しぶりの睡眠に体が軽くなったのを感じている。



「……偶には惰眠を貪るのもいいかもな」



ベッドから降りたのはいいが特にやることもなかったのでルキフェルは再びベッドへと戻り、布団を掛けて目を閉じた。

しかしルキフェルは隣から近づいてくる気配に感づき、もう一度眠りに入ることを止めた。気配の正体がランスリンデと分かっているためである。彼?が何かしてくるかもしれないのに眠ってなどいられないのだ。

一方そのランスリンデはルキフェルの顔を見ながらうっとりとした恍惚な表情をしていた。



「はぁ、寝顔までなんて逞しいんでしょう。その唇に口付け出来るなら、僕は全財産を捧げてもいいくらいです」



声音まで女性のそれであるため、この声の主が女性ならと思わず思ってしまう。



「では早速。失礼します」



ランスリンデはルキフェルの布団を捲り中に侵入する。そしてルキフェルの胸元に手を置いて小さく呟く。



「愛しています、ルキフェルさん」



その言葉からランスリンデの声はぷつりと止まり、代わりに彼?の寝息が聞こえてくる。

ルキフェルはうっすらと片目を開けて、それを確認すると小さな溜息を吐く。



「今日だけは許してやる」



寝ているランスリンデには聞こえてないはずだが、ルキフェルの言葉に反応したようにルキフェルに抱きついてくる。

ルキフェルはそれを見て苦笑すると再び目を閉じた。

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