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第3話 「転校生は筋肉に勝てるのか?」



「転校生は筋肉に勝てるのか?」


 こはねの“マッチョ発作”事件から翌日。


 俺・鶏谷ケンタは、鶏頭を押さえつけながら登校していた。

 昨日こはねが俺を片手で持ち上げたせいで、首がまだ変な角度になる。


「だいじょうぶ? ママじゃん」

「お前のせいだよ!!」


 今日も朝から“ママじゃん”コール。

 だが、こはねは昨日のことをすごく気にしているらしく、

 いつもより後ろをちょこちょこと歩いていた。


「ママじゃん、今日は……なるべく……筋肉出さないよう気をつけるね」

「“なるべく”って言ったな、今」


 こうして俺たちは昇降口に着いた。


 その瞬間――

 女子の黄色い声が飛び交った。


「きゃーっ! イケメン!」

「新入生!?」「え、モデルみたい!」


 視線の先には、一人の男子が立っていた。


 身長180近い。

 整った顔立ち。

 制服も無駄に似合っている。


「……誰だあいつ?」

「新しい転校生らしいよ」

「二日連続て何事だよ」


 その男子は、俺たちを見るとニコッと爽やかに笑った。


「やあ。君たちがこの学校の生徒だね?」


 声まで爽やか。どこのアニメの王子様だこいつ。


「俺、風間リンタ。今日からよろしく」


 瞬間、女子の悲鳴が再びあがる。


 が、俺は気づいた。

 風間の視線が一瞬、こはねに向かったのを。


 そして、


「きみ……もしかして、二人口こはねさん?」


 こはねがびくっとする。


「え、え? な、なんで……?」

「有名だよ。全国の学校で“突然凄まじい力を発揮する女子高生”がいるって噂があったから」


「それ噂になってんの!?」


 俺のツッコミを無視し、風間はこはねに近づいた。


「噂を聞いた瞬間、僕は君に興味を持ったんだ。

 “その子は一体、どんな姿をしているんだ?”って」


 こはねはおろおろして俺の袖をつまむ。


「ま、ママじゃん……(小声)」

「誰がママだ。後ろに隠れるな」


「もしかして……昨日の発作のことも、君が原因なのかな?」


 風間の言葉に、こはねは肩を震わせる。


 俺の胸に、なんかよく分からないモヤッとしたものが生まれた。


「おい。お前、何が言いたいんだよ」


 風間は俺を見る。

 その表情は笑顔のまま、しかしどこか挑発的だった。


「きみが……彼女の“引きトリガー”なんだろ?」


「トリガーって言うな!!」


 こはねは真っ赤になり、叫んだ。


「ち、違うもん! ケンタくんはママじゃんで……ちが……あっ……!」


 やばい。

 この流れは――まずい。


「こはね、深呼吸! 落ち着け! マッチョになるな! 今日の制服、新品だろ!!」


 しかし深呼吸は間に合わなかった。


 こはねの体がビクッと震え、目が潤んで、


「ママじゃぁぁぁぁあん……ッ!!」


 ――悪夢が再び始まった。


バキ!


 腕が膨れ、肩幅が広がり、背中の布が耐えきれず“ピギッ”と音を立てる。


風間リンタ

「……おお」


 なぜか感心している。


こはね(超マッチョ)

「マッチョ♪ ママじゃ〜〜ん♪」


 歌い出した瞬間、廊下の窓がビリッと揺れた。


「歌うな!! 昨日の続きか!!!!」


 こはねは俺に向かって走り出す。


「抱っこぉぉぉぉおおお!!」


「抱っこされるか!! 俺の骨が死ぬ!!」


 俺は必死に逃げる。

 しかしマッチョ化したこはねの速度は異常だ。


「やっぱり……すごい……!」


 風間リンタは目を輝かせていた。


「二人口こはね。

 君は僕が探しつづけた“力の逸才”だ……!」


「ややこしい称号つけんな!!」


 こはねはついに俺を捕まえ、

 “ひょいっ”

 と俺を片手で持ち上げた。


「ひょい、じゃねーよ!!!!」


 鶏頭がかつてないほど揺れた。


「やっぱりだ。

 君は彼女の“発作の核”になっている――

 鶏谷ケンタ」


「なんで俺の名前知ってんだよ!!」


「調べたからだよ」


「やめろ怖いわ!!」


 こはねは筋肉モリモリのまま、風間をじっと見た。


こはね

「ケンタくんに……近づかないで……!」


風間

「その反応……面白い」


 その瞬間、こはねの筋肉がさらに“モリッ”と増した。


「増量すんな!! 無意識で筋肥大するな!!」


こはね

「ケンタくんは……わたしのママじゃん……!」


「なんでそこで所有権みたいに言うんだよ!!」


女子たち

「怖い……」「え、これ恋愛……?」「違うよね……?」


男子たち

「風間くん、絶対かっこいいのに方向性がおかしい……」


 廊下は完全に修羅場だった。


 そしてようやく発作が治まり、こはねはしゅぅぅ……と元に戻った。


こはね

「はぁ……はぁ……ケンタくん……大丈夫……?」


「大丈夫じゃねぇよ!!」


風間リンタは満足げに微笑んだ。


「決めたよ。

 僕は……二人口こはねの“筋肉の謎”を解明する」


「科学者かよ!!」


「そして鶏谷ケンタ。

 君とはいずれ……決着をつける」


「勝手にライバル宣言すんな!!」


 こはねは俺の袖をつまんで、小さく呟いた。


「ケンタくん……わたし、守るからね……」


「お前が俺を!? 立場が逆!!」


 こうして、

鶏頭男子 vs マッチョ女子 vs イケメン転校生

という三角(?)関係が幕を開けたのだった。

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