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8/9

8話

 side???

 私は小さい頃からほとんどなんでも出来た。

 勉強にスポーツに、ピアノのような楽器も演奏できる。

 ただひとつ出来ないのは料理だけ。

 私はほとんどのことがすぐ習得するのは誇らしかった。

「冬子ちゃんすごいねぇ」

「将来が楽しみだねぇ」

 両親も私の才能に期待していた。

 私が様々な分野に長けている反面、妹のあいつは何も出来なかった。

「お姉ちゃんならできる」

「お姉ちゃんに比べてあんたは何も出来ない」

 あいつは私を兼ね合いにされていた。

 勉強でもスポーツでも出来ることが多いと、ちやほやされるのが気持ちよかった。

 そしてあいつは出来ないことを必死に頑張っていた。

 しかし、どこかでつまずく。

「なんでこれくらいのことも出来ないの!?」

 ビターン!

 別室で母が付きっきりでピアノの練習をしていた。あいつが失敗すると頬をビンタされていた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 泣きじゃくりながら、必死に謝罪する。

 何に?才能のない自分にだ。

 私はそれが愉快であり、恐怖でもあった。

 私もなにかできなかったらあんな風に虐待されるのだろうか?

 怖さで震え上がった。

 それからも、様々な分野に挑戦した。

 しかし、料理だけは上達しなかった。

 否、料理はさせて貰えなかったのだ。

 1度母とカレーを作ることになった。

 その時に、私は誤って自分の指を切ってしまったのだ。

 指から血が滲むが、その小さな失敗より母の視線が怖かった。

 私もあいつのように暴力を振られる……!

 その怖さで私の感情は支配されていた。

 母は、その指先から流れる血を見て笑顔だった。

「大変、冬子ちゃんにはまだ早かったね」

 そう告げられてから、料理はさせて貰えなくなった。

「冬子ちゃん、もう少しで誕生日だけど、欲しいものある?」

「3○S!」

「いいわよ」

 これが私に対する対応。一方あいつには

「誕生日?何も出来ないお荷物に割くお金はないわよ」

 と一蹴されていた。

 両親はおかしい。

 子どもながらに感じていた。

 しかし、小学生に上がったばかりの私には、この人たちから逃れられる策は浮かばなかった。

 私がこれまで通りに出来ていれば、私に危害が及ぶことは無い。

 何も取り柄にないあいつが生贄になってくれれば私は助かる。

 姉として最低な判断だと薄々感じていた。

 それでも、あいつが怒られて私が褒められる。

 これが愉快で助けたいとは思わなかった。

 あいつにも唯一の救いがあった。

 祖母だ。

 親から殴られても蹴られても、祖母だけはあいつに優しかった。

「凜々ちゃん、児童相談所に行こう」

 祖母がこの家からあいつを助け出そうとした。

「行く前に友達に挨拶したい」

 その日の夕方、あいつの後を追った。

「私ね、施設に入ることになったの。だからお別れ」

「例え今離れても大人になったら迎えに行く」

 相手はそう宣言した。

「だから」

「大きくなったら結婚しよう」

 あいつがプロポーズされたのだ。

 なんで?

 虐げられていたあいつに恋人?

 許せない、私を差し置いて幸せになろうだなんて……!

 怒りに狂った私は母に連絡。

 そいつを亡き者にしようと結託。

 あいつだけは許さない……!静かな怒りが私を包む。

 母が交通ルール無視であいつを車で跳ねた。

 宙を舞う男の子。

 時間にして一瞬、道路に打ち付けられた男の子は頭から血が流れた。

 コンクリートが紅く塗られていく。

 すぐさま救急車が呼ばれた。

 その男の子は奇跡的に一命を取り留めた。

 しかし

「事故に遭う前に記憶がありません」

 キュピーン。

 私の頭に電流が走った。

「健人、忘れたの?私と結婚するって約束したよね?」

「そう、だったっけ?」

「そう。それで嫉妬したのがあいつ」

「あの子がどうしたんだ?」

「おばあちゃんに頼んであんたを轢き殺そうとしたのよ」

「違う、私は……!」

「そうです。私の静止を振り切ってお義母さんが彼を殺そうとしました」

「あんた……!」

「2人とも、署まで来てもらいます。」

 雑な擦り付けだったが、幸いにも父が刑事だ。

 上手く事件を歪めてくれた。

 そうして私、天野冬子と叢雲健人は婚約したのだ。

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