4話
『大きくなったら結婚しよう』
そうプロポーズしてる男の子と、それに応える女の子。
2人の間には恋心とは違う、愛情という名の絆が既に出来上がっていた。
その間には誰も入ることができない大きな壁があった。
1人の男の子の恋愛が成就すると同時に、1人の別の男の子の初恋はここで終わった。
映像が途切れる。
「冬子さーん、お願いしますよー!」
再び覚醒。
雄一郎が冬子に言い寄る。
それを受け流す冬子。
雄一郎を止める
雄一郎を止めない
雄一郎を止めてこいつは嫉妬に狂ったんだ。
今度は止めずに様子を見る。
「ねぇ、健人、黙って見てないで雄くん止めて」
さすがに困ったのか俺に助けを求めた。
「雄一郎」
「なんだ?」
「冬子は俺の女だ」
「……そうか……」
さらりと身を引いた。
その表情はどこか悲しげだった。
あれ?結局俺こいつに殺されない?大丈夫?
「けーんと、帰ろっ♪」
冬子は俺と腕を組み、どこか勝ち誇った表情だ。
ズキッ。
心に針が刺さったかのような痛み。
なんだ?俺は冬子とこのまま一緒に帰っていいのか?
正体の分からない不安が襲う。
冬子の腕を振り切る
このまま一緒に帰る
このまま帰るのがいいんだろうけど、雄一郎に殺される可能性はまだある。
いや、そんなことは些細なことだと感じる。
なぜ?
俺が選ぶべき相手は本当に冬子か?
冬子の腕を振り切る
「悪い冬子」
「えっ?」
短いやり取り。
冬子が不安気に俺を見つめる。
それは、「どうして?」と訴えていた。
「俺さぁ、夕飯の買い出し行かなきゃ行けないんだ」
「そっかぁ、一人暮らしだもんね♪」
そう、この時俺は既に一人暮らしだった。
両親と上手く行かなくて、逃げるように実家を飛び出て祖母に金の工面を頼んでいた。
「1人でいる時注意してね」
ゾクッ……!
背筋の凍るような、冷たい囁き。
「冬子……?」
「なんでもなーい♪」
「怖いこと言うなよ」
「ごめんね♪寂しかったから♪」
恋人同士の冗談にしては重いやり取り。
「じゃあな」
手を振り俺はふたりと別れた。
雄一郎と一緒に通ったT地路を今度は1人で歩く。
「1人でいる時注意してね」
冬子の呟きが耳から離れない。
まさか冬子に殺されるってことは無いよな?
アパートに帰るのが怖い。
今までの事を振り返って見よう。
1.飛び降り自殺
2.親友に殺される
3.未来で雄一郎に殺されることは確定。
あれ?どれもバットエンドじゃない?
4.恋人に殺される
今までの事を振り返るとその可能性は高い。
いやいや、冬子だぜ?
あいつがそんな……。
冷たい視線が脳内再生された。
いや、あの目はガチだ。
今までの経験がそう告げている。
対策を考えねば……。
思考を巡らせつつスーパーへ。
買い物かごを取り、食材を物色する。
「あっ」
「あっ」
なんとばったり、春川凜々とエンカウントした。