表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

やつらが夜な夜な家に来る

認知症の父とその介護をする母の気持ちを考えながら書きました。


現在連載中の作品とは全く別の作風ですが、よろしくお願いします。

まただ。昨夜も()()()が家に来た。


俺は気が気ではなく、ベッドには入らずにリビングのソファで夜を明かした。


彼らは高校生くらいだろう。男子も女子もいるみたいだ。夜な夜な徒党を組んで俺の家まで来て、二階まで上がって何か悪さをしている。彼らが来るようになってもう何日にもなる。



明くる朝、妻に預金通帳を全て出してもらい、預金残高を確認。電卓を使って合計額を計算する。


()()()が通帳に悪さをしてもすぐわかるように。


家を守るのは家長たる俺の役目だ。


少年少女たちが、俺の仕事のせいで我が家まで押しかけてきていると思うと尚更だ。全ては俺の責任なんだ。


「おはよう。コーヒー淹れようか」


妻の良子だ。昨夜の騒ぎには特に何も触れてこない。俺が責任を感じると思って触れないでいてくれるんだろう。


「ああ、ありがとう。もらうよ」


「それからバナナもね。食前食後のお薬も置いておきますね」


「ああ、うん」


そうだ。朝は食前と食後の薬があるんだった。


まずは食前の薬を飲み、バナナを頬張りながら朝刊を読む。良子が淹れてくれたミルクと砂糖たっぷりのコーヒーも飲む。


以前は朝食は食べなかったが、いまは薬を飲まなくてはならないから、いつの間にかバナナを一本食べるようになった。


「ゴミ出しに行ってくるね」


テレビが八時を過ぎたことを告げると同時に、良子がゴミ袋を持って出かけてゆく。


「昨夜もあまり眠れなかったから調子が悪いな。今日は休もうかな」


帰宅した良子に告げると、にっこりと笑って答える。


「そうだね。休んだらいいよ」


「うん。もう一度寝てきてもいいか?」


「うんうん、寝ておいで」



◆◇◆◇◆◇◆◇


夫が起きてきた。寝ぼけ眼で目を擦っている。大きめに声をかける。


「おはよう。もう起きるの?」


「うん…あまり調子が良くないな。今日は休もうかな」


「そっか。休んだらいいんじゃない」


「そうだな。もう少し寝てきていいか?」


こうして夫は四度寝をしにベッドへと戻っていった。


今朝は少し落ち着いているみたい。やはり先週処方してもらった安定剤が効いてきたのかな。


季節の変わり目のせいなのか、ケアマネージャーとの面談が刺激となったのか、今月はずっと夫の妄想と不穏がすごかった。どうか、今日は一日安穏と過ごせますように。変なことを言い出しませんように。


良子は大リーグの野球中継を流すテレビの音量をぐっと絞った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ