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マニピュレーター 1

「俺ちょっと一周走ってきますわ」

「なーんか、もう降ってきそうだぞ」

「大丈夫ですよ。雨じゃ死にません」

「まあ、鞍馬の筋肉鎧なら槍でも死なないだろうけどな」

「槍はさすがに負けますって」

「気を付けろよ? 栃姫の槍が飛んでくるかもしれんぞ」

「そんなこと言ってると、祟られますよ?」


 資材搬入口の軒下でタバコを吹かし笑っている作業員達に手を振ると、彼は軽いフットワークで工場の正門を出る。柔和軽金属と書かれた門柱を一回撫でると、巨大な太ももの筋肉を震わせ、雨粒の跡が出来始めたアスファルトを蹴った。


 大型トラックなら一台がやっと通れる程の細い道を三百メートルほど走り、工場敷地の端まで来ると、栃姫首塚のかなり大きな祠の屋根が目に入る。思わず視線を落としてしまう自分がおかしく、引き締まった頬に筋を立てた。


「迷信だよ。馬鹿か俺は」


 それにしても連絡場所がこんな所とは、と祠を囲う石垣の隙間に素早く手を突っ込みながら思う。


 ――誰も見てはいけない首塚か。安心といえば安心だが、趣味が悪いぜ、上田さん。


 暫く腕を石垣に突っ張って息を整えるふりをし、すぐ鞍馬は走りだす。そして工場の裏に回った辺りでやっと手中のメモを読み出した。


  『収集終了 状況に乗る 帰宅せよ』


 鞍馬は残りの半周を走り切ると、そのままの速度で二階の更衣室へ向かった。荷物の一切を、ロッカーに入れてあったスポーツバックに詰め込み、午後の仕事始めを告げるブザーと共に、鉄階段を緑色に塗られたフロアへと降り始める。


「これで鞍馬君ともおさらばか」


 胸の名札を見てそう呟くと、工場内に放送が響いた。


『鞍馬さん鞍馬さん、ご実家から緊急の電話です。三番をお取りくださーい』


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