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第二の人生

武士転生?転移?モノが書きたい!と思い、それならば始まりの戦国大名である北条早雲に、異世界でも始まりの戦国大名になってもらえば良いか?と思い書き始めました。

歴史にあるように、義は大切にしつつも貪欲に謀術と武力で出世を狙っていく、というキャラで書いていきます。


あぁ、朝か。


鳥の声が聞こえ、瞼を閉じていても差し込む陽の光が眩しく感じる。

鼻腔をくすぐる草の香り…

うん、目覚めとしては悪くない。



が、儂は韮山城の居室にて寝ていたのではないか?



重い瞼を開けるとそこには広大な草原が広がっている。

寝起きの肌を流れる涼やかな風が気持ちいい。



いや、いやいやいやいや。

何なのだこれは?

儂は志半ばで病に伏し、死を待つ身であったはず。

しかしどうだ?

恐る恐る立ち上がってみると、寝返りを打てぬ程であった体の痛みは跡形もなく消え、まるで若き頃に戻ったかのように体は軽やかだ。

それに何故か小田原に置いてきたはずの愛刀である日光一文字が差されている。



儂の身に一体何が起こったというのだ。

ここはまさか極楽浄土か?

否、己が新念に従ったとはいえ堀越公方を滅ぼした儂などが極楽に行けるはずもない。

そもそもここが常世というにはあまりにも全てがありありとし過ぎている。

何者かの策略に嵌ったか…?



いや、考えるのは後にしよう。

まずはここが何処なのか知る事が先決である。

それに何故か、酷く喉が乾いている。

幸い草原の先には川が見えるので、まずは喉を潤して川を辿って下流へ進むことにしよう。

川辺には村が点在している筈だ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ふぅ、生き返るな…」



腹が満腹になるかという程に水を飲み、ふと川の水面に目をやると、水面に反射した己の異様な姿に思わず目を見開く。



「な、なんだこれは!」



既に老境に達していた顔は若々しく、皺一つなくなっていてまるで別人だ。

しかし他人の顔ではない、遠い記憶にある齢十八頃の儂の顔だ。

急いで直垂を脱ぐと、萎んだ老人の体だった筈の我が身が青年の体となっている事に気付いた。



変若水でも飲まされたのか?

いや、そんな事はどうでも良い。

重要なのは病が去り、我が身が若返ったということだ。

まだまだ息子氏綱は頼りない所があると心配しておったのだ、儂の全てを学ばせる時間を得たと考えればこれ程の事はない。

早くここが何処か突き止め、城に帰らねば。

急に儂がいなくなった事で家中も混乱しておろう。




下流へと一刻ほど足早に歩を進めると、何やら石のような物でできた建物が十数件ほど連ねている集落を見つけた。



「妙な作りの建物よのう…」



見たことのない奇怪な建物を横目に村の入口を通ると、農具を持った村人の男とすれ違う。

むむ、よく見るとあまり見たことのない顔立ちをしておるな…

まさか南蛮人なのか?

言葉が通じれば良いが…



「其の方、すまぬが此処がどこなのか教えてもらえぬか?」


「…あんた見ない顔だな、ここはバーゼル村だよ。

腰に剣を差している様だが旅人か?

ここでは隠しておいた方がいいぜ、何せあの豚伯爵の領地だからな。」


「ばぁぜる…?

ま、待たれよ、豚伯爵とは何者だ?

ここは伊勢家の土地ではないのか?」


「なんだ、知らないで来たのか?

ここは豚伯爵こと、ゲルテス伯爵家の領地なんだ。

武器を携帯してるのを衛兵になんて見られてみろ、拷問されて殺されるぜ。」



なんと、此処は我が伊勢の領地ではなかったらしい。

しかし、げるてす伯爵などという者は聞いたことがない。

何を聞いたら良いか悩んでいるうちに、村人の男が口を開いた。



「悪い事は言わねえ、早いところ領地を出たほうがいい。

豚伯は旅人や女子供を攫って痛めつけるのが趣味のクソ野郎なんだ。

この村でも先月一人殺された…」


「な、なんと!自領の民を虐殺するなど言語道断!!

分別弁えぬ愚か者が領主なれば、早々に滅びるであろうな。」


「……?貴族が滅びるなんてことあるわけないじゃないか。

戦争や革命なんかが起きれば話は別だが、帝国が大陸を統一してから200年、そんなものは一度も起こってないしな。」



何と。

今この男、統一と言ったか?

そんな事は有り得ぬ、日の本は今戦乱の世である。

そもそも帝国とは何だ…?そんなものは聞いたこともないぞ。



「何やら分かってないって様子だな…

まあ、あんた妙な格好をしてるみたいだし相当遠くから来たんだろう?

俺の知ってる範囲で良いなら教えてやるよ。

あと自己紹介が遅くなってすまないが、俺の名はマルスという、よろしくな。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから儂はマルスの家に招かれ、分からぬこと全てを聞いた。

この大陸はガルス帝国が統一し、領地を与えられた貴族が各地を好き勝手に支配していること。

王族貴族は神のような存在であり、決して逆らってはならぬこと。

マルスの嫁御の忘形見である一人娘はゲルテス伯爵家の長男に拐かされ、亡骸となって帰ってきたこと。

王族貴族が望めば嫁子供でも笑顔で差し出す、さもなくば死が待っていること。



そして



日の本という国は存在しないということ。




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