十五話 名前のない、贈り物
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結局、あの出来事から一日が経った今でも彼女と俺は雇用関係として迷宮探索を続けている。
彼女が何者なのかはどうでも良いし、彼女が自分の事情を話したくないならそれで良い。
人にはそれぞれ、言いたくない事情など一つや二つあるのだから。
それに、俺には彼女が悪人にはどうしても思えない。
あの時、本物の"悪"を目の当たりにした…アレはどうしようもなく完全で救いようのない悪人だった。
でも彼女は何というか、苦しそうだ。
「ぐるぁぁ!」
コボルトの群れが襲い掛かる。
振るわれた剣を受け流し、カウンターの一撃を振り下ろす。
しかし、傷は浅い。
もう1匹の犬人頭による追撃を紙一重で躱し距離を取る。
ギリギリではあるが戦えている。
迷宮に潜る度に成長を感じる。
だが、まだあの背中は遠い…遥か天と地。
あの人みたく強く在りたい…今も湧き上がる憧れと醜い嫉妬心を礎にジークは戦う。
そんな彼の戦い振りに、ペネロペは評価を改めざる得なかった。
彼の事は出会う前から知っていた。
この都市で最も有名な冒険者と言っても過言ではない程に、その不名誉な称号は轟いていた。
実際、その無様な姿を目にした事もある。
けれど、今の彼はあの時の少年とは思えない程に強く逞しくなっている。
一体何が彼をあのように突き動かすのだろうか…あれだけの屈辱と侮蔑を浴びながら。
彼は決して諦めなかった…惨めな私なんかよりも、醜くも足掻いて。
それでも尚、その心は決して折れず間違えるほどに成長を遂げていた。
彼と初めて会った時、その瞳には揺るぎない信念があった。
「ッ!」
前でコボルトと戦うジークの背後を狙うように、傷を負っていた別のコボルトが槍を振おうとしていた。
此処で彼が死ねば仕事が終わる、あの路地裏での酷い話も消えてなくなるかも知れない。
でも、彼には死んでほしくない。
首にぶら下げていた少し大きめの革袋に魔力を込める。
「今、私が最も欲する物を!」
革袋が淡く光だし、刀身が赤く染まった魔剣が現れる。
更に、「お願い力を貸して!ーー導梟」
展開された魔法陣より、鳥型の魔物が召喚される。
梟は、彼女の頭に乗ると鳴き声を上げる。
「ありがとう!」
私に、闘う力はない。
でも、導梟が私に闘い方と力を与えて導いてくれる。
握った魔剣を振り下ろす。
ゴォォォォォォォォ!!
という、荒々しい音を立てて激しい炎が手負のコボルトを焼き払う。
魔剣は、パキン!と音を立てて割れた。
「ありがとう、助かりました!」
「いえ…あ。」
「?」
「ジークさんは、"魔法"は使わないのですか?」
そう聞かれたジークは気まずそうに、答えた。
「俺は魔力の適性がないらしくて…使えないんですよ。」
「そう、なんですか…」
「使ってみたいですね、魔法ってほら奥の手みたいで格好いいじゃないですか!」
ジークは、とても無邪気そうに笑ってみせる。
「魔法、いつか発現すると良いですね!」
「うん」
ーー
ジークは迷宮探索を終えて、帰路に着いていた。
ペネロペも食事に誘ってみたが、彼女は用事があるらしく先に帰ってしまった。
「それにしても魔法か…」
そう言えば、ディオメデスさんも魔法を使っていたなぁ。
魔法は、基本的に、《火》・《水》・《土》・《風》・《雷》の五大元素と呼ばれる属性から一属性与えられ、魔法は最低で一つ、最高で五つ習得出来るらしい。
また五大元素に属さない別の属性も存在する。
例えば、《光》・《闇》・《岩》などと言った派生元素に加えて。
全く別から発生する特異魔法属性もある。
一つだけと言っても、それだけで不遇な扱いを受ける事はない。
むしろ、一つが一般的。
二つは、珍しい。
三つ〜五つは、5本の指に収まる程度しか存在しない。
魔法にも様々な種類がある。
《攻撃型魔法》:文字通り、攻撃手段として扱う超強力な魔法。
《防御型魔法》:文字通り、防御手段として扱う超強力な魔法。
《支援型魔法》:身体強化などで仲間をサポートし、支援する魔法。
《妨害型魔法》:所謂、デバフと呼ばれる相手に何かしらの状態異常を施す魔法。
基本的に、魔法はこの四つの戦型に分けられている。
最も多いのが、攻撃型魔法と防御型魔法。
比較的に珍しいのは、妨害型魔法と支援型魔法。
そして魔法は、発現した者の心の心象や人生を具現化した物。
故に、誰一人として同じ名前の魔法を持っているものは一人もいない。
魔法は謂わば、奥の手であり最大の武器だ。
魔法を使えるだけで出来ることが増え、戦術の幅も広がる。
生存の糸を繋ぐ為の、切り札にもなり得る。
冒険者にとって、なくてはならない力。
しかし、ジークには一つも魔法が発現していない。
だが、それは珍しい事ではない。
魔法は奇跡の体現。
ソレを扱うには、それ相応の才能が必要だ。
「でもやっぱり、使って見たいよなぁ…」
拠点に帰ってきた。
扉を開けると、ディオメデスさんが出迎えてくれた。
「おかえりジーク。どうだった?」
「今日は3階層の中盤まで潜れました!」
「そうか!私ももう少しで謹慎が解けるからな、君の成長した姿を見れるのが楽しみだ。」
彼女の謹慎が解けるまであと3日。
その間に俺はもっと強くならないと行けない、このままじゃきっとまだ足手纏いだ。
だからこそ、魔法を覚えたい…
「魔法…か。」
キセルを口に咥え、煙を吐きながら師匠は呟いた。
「確かに、魔法が使えれば便利だろうな…だが、欲しい欲しいと願っても奇跡は起きん、とは言えないが…努力し続けるしかないだろう。」
「私もそう思う。」
「そうですね…頑張ります。」
ベッドに寝転び天井を眺める。
このまま努力し続ければ魔法は得られるだろうか。
少しでもあの人に近づけるように、俺は早く強くならないといけない。
問題は《ランクアップ》だろう、今の俺のランクは《0》。
これが《1》にさえなれば、それだけで今よりもずっと強くなれるはずだ。
頑張、らないと、な…
ジークは、そのまま眠りに着いた。
ーー
一方、冒険者ギルド。
ミリーナの元に、ある物が届いていた。
机に置かれた一枚の手紙と一冊の書物。
差出人は記されていない、ただ一言。
『まず。受け取りはジーク殿へ。』と綴られていた。
「一体、誰からかしら?」
手紙と書物の中身を開ける事は出来ない。
裏面を調べてもやはり、誰が送って来たのかは分からない。
きっと、あの子の知り合いだろう。
ギルドの手紙制度を使うという事は、現役の冒険者か元冒険者のどちらか。
「んー、危険な物じゃないし。大丈夫よね?」
今日はもう真っ暗な夜だ。
明日、ギルドからアテナス様へ報告しよう。
「これで良かったのか?自分で渡せば良かったものを…」
「良いんです、私のただの我儘なんですから。」
そんな寂しい会話が、何処からともなく聞こえて来た。
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