十三話 新たな家族
「…ッ!」
目が醒める。
ここは…何処だ?
見知らぬ天井が俺を出迎える。
俺は確か…あの女に敗れて…それから、彼女が助けに来て…それから、どうなって。
俺は助かったのか…?
「あら、目が覚めたのですね。」
ふと、横から女性の声が聞こえてくる。
目を向けると、横には一人の女性が椅子に腰を掛けていた。
あの煌びやかな金髪の髪に、蒼白の瞳。
清楚な顔立ちにお淑やかな雰囲気を纏った、女性。
服装から見るに彼女は医療ギルドに属する治療師なのだろう。
つまり、俺は助かったのか?
「此処、は?」
「此処は、豊穣を齎す祝福者パーティーが管理する医療ギルドの特別治療室です。
貴方達は特に傷が酷かったので集中治療室で急いで治療をさせて頂きました。」
「!彼女は、俺と一緒に倒れていた彼女は無事ですか?」
「ええ、そのベッドで休ませております。」
彼女の言う通り、俺の隣のベッドには痛々しい姿のディオメデスが横たわっていた。
全身に酷い火傷を負い、点滴などのチューブが身体中に繋がっている。
彼女の説明では、あと少しでも治療が遅れていたら命はなかったらしい。
良かった…とは一概にも言えないだろう。
助かったといえど、まだ予断を許さない状況には違いない。
「全く…貴方達に何があったのかは神速の戦車に聞きましたが…あまりに無謀過ぎます。特に、ジークさん…今後はこう言った無理はしないようにしなさい。あの方が心配してましたよ。」
そうだ…師匠には心配を掛けてしまったかも知れない。
いや、間違いなく心配させてしまった筈だ。
「本当にありがとうございます。」
「退院は明日には出来るでしょう。それまでは、安静にして下さいね。」
彼女はそう言って、部屋を後にした。
ベッドに横になり、静かに目を閉じる。
本当に勝ったんだな…まぁ、俺はあの女に手も足も出なかったのだが…
薄れゆく意識の中で、助けに来てくれたディオメデスさんの姿は正に英雄のようだった。
そして、俺なんかよりも強く誇り高かった。
俺が彼女の様に強かったら、彼女も危険な目に逢わせる事はなかったのにな…
俺が出来たのは、最後に不意打ちで一撃を当てた位だし…それも大して、効いてなかった。
ランク0とランク4の差は、桁違いだ。
蟻一匹が竜に挑むくらい無謀な事なのだから。
「弱いな、俺は…」
ふと、そんな声と一滴の涙が漏れてしまった。
「そんな事はないよ…君は強い。」
「!」
横を見る。
先程まで苦しそうに寝ていたディオメデスさんが俺の方に顔を向けていた。
起きていたのか…それとも、今目を覚ましたのか。
どっちにしろ、恥ずかしい姿を見られてしまった。
「君のお陰で私は変われると思ったんだ…君のお陰で子供の頃に想ってた夢を思い出したんだ。」
「でも、俺は…貴女を助けようとしたのに…貴女に助けられてしまった。
身の程を知らずに…情けないだろ?」
「そんな事はないさ。普通、たった一人であんな場所に来れる人間は居ない。君の心や覚悟は誰よりも強い…私はそんな君に好意と尊敬を抱いている。
だから、改めて言う…ありがとう。」
ッ…そんな事はない。なんて言葉を繰り返すのは彼女のそれを否定する事になる。
それに、自分よりも強く誇らしい彼女が自分なんかを認めてくれた事がとても嬉しかった。
「俺も…貴女が助けに来てくれた時、本当に嬉しかった。
俺を護ろうと困難な敵に立ち向かう貴女は、俺にとって本物の英雄だった。
ありがとう…」
「ッ…!?そうか…あり、がとう…嬉しいよ…」
そう礼を言う彼女の聲は、涙で震えていた。
いや、それはお互い様なんだ。
「貴女さえ良かったら…どうか、俺と…俺達となかま《家族》になって欲しい…」
「私は、君達に相応しくない…君達の隣に立つ資格はないーー「貴女が良いんだ。俺は貴女がどんなに自分を否定しようと俺が貴女を肯定し続ける。
貴女と共に多くの困難を乗り越えて、そして英雄になりたいんだ…俺達には貴女が必要だ。」
これは、本心だ。
紛れもない、本音。
俺は心の底から、彼女と一緒に冒険をしたいと思ってる。
「いい、のか…本当に後悔しないか?、言っておくが、私はもう2度と君と離れるつもりはないぞ?」
「こんな俺で良いなら…ずっと俺の側で支えて欲しい。」
「ああ…ああ!よろしく頼む…この傷が治ったら、あのお方にも話をしないとだな。」
そう言って微笑む彼女は、とても美しく魅惑的だった。
そして数日後。
完全に傷が癒えた俺は、師匠が待つ拠点に戻ってきた。
ただいつもと違うのは、一緒に帰る相手ができた事だ。
「……」
「ディオメデスさん、緊張してるんですか?」
「あ、ああ…断られたらどうしよって…」
普段のクールな雰囲気からは想像もできない程にオドオドする彼女を見て可愛いと思った。
「大丈夫ですよ。うちの師匠は何というか、適当な人なので…「誰が適当だって?」
ボコン。と、鈍い音と共に頭に鈍痛が響く。
振り返ると、師匠が俺達の前に立っていた。
「ち、違うんです…言葉の綾で…っ!?師匠?」
ふと、師匠が俺を抱きしめて来た。
「全く心配したぞ…馬鹿者。」
俺は師匠の体を優しく抱きしめる。
「心配掛けてすみません…師匠。」
やはり、この人は優しい人なんだ。
心の中でそう思った。
「それで、だ。ジーク、少し外してくれ。彼女と2人で話がしたい。」
「!分かりました。」
大人しく先に拠点の中に入る。
あとは、師匠と彼女の問題だ…答えは分かりきってると思うけど、信じて待とう。
「さて、と。ディオメデス君…私に言いたい事があるのだろ?」
「はい。どうか、貴女のパーティーに私を入れて欲しい!必ず役に立って見せます…お願いします!」
「……一つ、誓えるか?
どんな事があっても必ずジークを守れると。」
鋭い眼差しが、彼女の眼を捉える。
「ええ…アマゾネスの誇りと我が命に掛けて誓いましょう。
ジーク殿を、そして貴女を必ずや守り抜くと。」
「なら、私は君の全てを赦そう。そして肯定しよう。
君の歩んできた人生を…君が背負う罪を、私が共に背負おう…死が私と君を分つその日まで…」
両手を広げて、アテナスはそう宣誓した。
青空より天の光が彼女を照らす。
ディオメデスは、その美しく神々しい彼女の姿とその慈愛に心を打たれる。
そして彼女は理解する。
自分がこれまで歩んできた人生はこの時の為にあったのだと…
そう思うと自分の人生に少しだけ誇りを持てるようになった…私の罪は消えない、だからこそ此処で私は彼等を護る事で少しでも贖うのだ。
これまで自分が殺して来た全ての者達の燃え滾る憎悪や怒り背負いながら、私は大切な者達を守る為に戦おう。
「改めて…我が名はディオメデス…我が誇り。我が黄金の槍と鎧に懸けて誓いましょう。
貴女達を守る盾となり、貴女達の道を切り拓く槍となる事を!」
「そうか。ならば誓いの契りを…」
アテナスが、ディオメデスの目の前に手の甲を出す。
彼女は、ゆっくりと跪き優しくその手を取り口付けを交す。
此処に、新たなる一人の使徒がアテナス・パーティーの元に迎え入れられた。
その晩。
ジークの寝ている間に女子会が開かれていた。
机には、何杯もの酒の入ったグラスが散らかっていた。
「尽きましては我が女神…ジークを我が伴侶にくださらないか?」
「良いぞ〜、でもなぁ…アイツの事だぁ、もっと増えるぞぉ〜」
「構いません、強き雄が複数の伴侶を持つのは当然の事!2人、3人、何人増えても私は大歓迎です!」
そんな、常軌を逸した会話を盗み聞きしていたジークは聞かなかった事にしようと後悔するのであった。
一章・完。
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ジーク 性別:男
AGE;15歳
【ランク0】
《ステータス》
筋力:E(158)→D(215)
耐久:D(205)→D(350)
敏捷:D(210)→D(365)
魔力:F(0)
幸運:F(100)→E(150)
《派生ステータス》
根性E、執念F、勇気F
《魔法》
該当なし
《スキル》
【ーーーーーー】・【ーーーー】・【■雄凱歌】
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