十二話 死闘
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「ジーク!!」
アキレウスの言葉を完全に信じた訳ではないが、確かな確証がある。
彼は、来ると。
だから、ディオメデスは必死に彼の名を叫んで拠点内を探す。
部屋の隅々を。
自分を連れ戻しに来たのだろう…心苦しい反面、物凄く嬉しいと言う気持ちが彼女の心を滑走する。
出来れば…ジークには、こんな穢れた場所に来て欲しくなかった。
でも彼は、どうしようもなく善人なのだ。
こんな汚れ切った私を救い仲間になって欲しいと言った。
私の生き方を肯定してくれた。
彼等になら、私の人生全てを捧げても構わない…そう思える程に。
だから、私はもう迷わない。
地下道を走る。
少年の無事を願い、ある部屋に辿り着く。
しかし、そこで目にしたのは彼女にとってこれ以上ない程の地獄であった。
「あら、遅かったのね?」
「っ……」
其所に居たのは悪神が絶対なる信頼と悪頼を寄せる最凶の使徒毒蠍姫スルカ・アンタレス。
そして…その下で、夥しい程の血液と毒液で塗れ倒れているのは…ジークだった。
「ジーク!!?」
「あらぁ、貴女の知り合いだったのぉ?ごめんねぇ、この子ぜーんぜん情報吐かないから〜痛めつけちゃった♡」
ーープツン。とディオメデスの中で何かが切れる音がした。
満身創痍だった事すら忘れる程の速さで、彼女の姿が掻き消える。
ガキン!!
地下に金属音が鳴り響く。
彼女の槍をスルカは細剣で受け止める。
「ッ!」
「貴女のそんな顔、初めて見たわね…怒りで繊細さが掛けてるわよ?」
細々とした腕とは思えない腕力で彼女の大槍を払いのけ、腹部に蹴りを入れる。
が、ディオメデスはその蹴りをもう片方の手で防ぐ。
そして、大きく身を翻し。
その勢いのまま、槍を薙ぐ。
「危ない♡」
しかし、スカルを捉えることは出来ない。
だが、ディオメデスはさっきの攻防で直ぐに冷静さを取り戻していた。
ジークは微かに息をしている…まだ希望はある。
力を貸してくれ、赤星の鎧。
彼女の身に付けた鎧が灼金の魔力を纏う。
力を貸して欲しい、黄金の槍。
彼女が振るう槍が黄金の魔力を纏う。
彼女に刻まれた魔法が発動する。
「ーー灼熱よ 黄金よ 我が身に集い その威光を示せ!
ーー『灼星金鎧』」
彼女の全身を灼熱の魔力が包み込む。
スカルは、警戒度を更に引き上げる。
何年も戦う姿を見た来た彼女だが、この魔法は初見だ。
見た感じは、身体に爆発的な強化を付与する魔法と思われるが。
ふと、ディオメデスの姿が消える。
気付いた時には、ディオメデスの放った槍がスカルの腹を見事に貫いていた。
ガハッ。と口から吐血しながらも彼女は距離を取る。
スカルは決して油断している訳ではなかった。
それでも、彼女の速さがスカルの反応を大きく上回っていた。
全身に焼けたような激痛が走る。
その強烈な苦痛に耐え切れず、スカルは膝をついてしまう。
だが、彼女の顔は愉しそうに嗤っていた。
「がはっ!?」
突然、ディオメデスが夥しいほどの血塊を口から吐き出す。
全身に発疹が現れ、手足が痺れて動かない。
「何も魔法を使うのは貴女だけじゃねぇのよ!」
部屋全体に、紫色の煙が充満していた。
その煙は紛う事なき猛毒。
この拠点に、誰かが来る事をあらかじめ予測し仕込んでおいた彼女の魔法による毒牙が襲い掛かる。
「ーー『蠍姫の呪毒』の味、如何かしら?」
この毒《魔法》の凶悪さは自分自身が一番にわかっている。
コレをモロに喰らったあの女はもはや、立ち上がることさえ叶うまい。
全身の痙攣。
身体中からの出血。
呼吸器官の麻痺。
幻覚、幻聴。
ありとあらゆる異常が、対象に襲い掛かる。
即効性だ。
現に、ディオメデスは想像も出来ない程の苦しみと激痛が身体を支配している筈だ。
放っておけば、野垂れ死ぬだろう。
あそこに転がっているガキと共に無様に朽ちればいい。
いや、いっそのこと奴は瀕死の状態で生かして自分のパーティーメンバーの外道共の慰み者にするのもアリかしら。
ああ、考えただけで全身がゾクゾクする。
嗤いながら、歩み出そうとした時。
信じられない事が起こる。
「ーーーは?」
立ち上がったのだ。
全身が激しい痙攣に襲われ、地獄の苦痛の中で彼女は立ち上がった。
血に塗れた女の貌は、笑っていた。
「ひっ、!?」
スカルは人生で初めて、恐怖を感じた。
死に体のディオメデスが、ゆっくりと彼女の元に近づいて来る。
「な、なによ。その状態で何が出来るってのよ。いいわ、望み通り殺してやる!」
地面を蹴り。
猛毒の細剣を死にかけのディオメデスに向けて刺突を繰り出した。
ドスッ。そんな音を立ててスカルの放った刺突がディオメデスの鎧に護られない脇腹に突き刺さった。
それだけではない、その細剣には強力な毒が仕込まれており一気に毒が流れ込む。
さっきの時点でも、致死量の毒をその身に受けた彼女の身体は既に身体が耐え切れる許容量を超えていた。
もはや、この女は指一本も動かせまい。
「なっ!?」
しかし、ディオメデスは動いて見せた。
そして、スカルの身体を目一杯の力を振り絞って抱き締める。
「ーー今ここに 我が身、、、は、、、灼熱となる…『灼熱爆星』!!」
「まさかーーぎゃぁぁあ!!?」
刹那ーー凄まじい爆発が巻き起こる。
自らの命すら厭わないその一撃は、スカルの意表を見事に突いた。
部屋全体を漆黒の爆煙が包み込む。
ディオメデスは、膝を突き血を吐く。
「はあっ…はあっ…」
部屋を埋め尽くしていた煙が搔き消える。
「よ、くもぉぉ…」
ディオメデスは絶望する。
あの爆発魔法を真正面から受けて尚、立ち上がれるとは思わなかった。
しかし、彼女は無傷という訳でもなかった。
爆発を受けた身体は大火傷を負い黒く焦げ、立ち上がるのもやっとだろう。
それでも、彼女の執念がディオメデスに打ち勝ったのだ。
コツ、コツ。と、足元をふらつかせながら死に体のディオメデスの元に近づこうと歩みを進める。
「ここ、までか…」
結局、何一つ救えなかった。
そう自責の念を唱えながら、静かに迫る死を受け入れようと目を閉じる。
その時だった。
唄が聞こえた。
何処からともなく、美しい唄が響いて来た。
落ち着くような。
心が安らかになる。
その唄が聞こえたのは、スカルも同じ。
だが、その聞こえ方は違うらしい。
「な、によ?この、歌。」
一体、何処から聞こえて来てる?
耳に響く、嫌な唄だ。
"悪"そのものを否定するような唄声が頭に直接流れ込んでくる。
ふと、背後で何か動く音が聞こえた。
有り得ない…そう思いながらも、ゆっくりと振り向く。
そこに立っていたのは…あの少年だ。
顔は地で染まり、表情は伺えない。
ただポツリと佇んでいる。
右手には、淡く光る美しい剣が握られている。
暗闇の中で、此方を睨み付ける赤眼。
一歩、後ずさる。
恐怖で身体が動かなかった。
その一瞬の隙、ジークが彼女に向けて必殺の一撃を振り下ろす。
「ーー幻竜大剣!」
膨大な魔力を纏った一振りがスカルに向けて振り下ろされる。
彼女は細剣に魔力を込めて防御体制を取るが、その圧倒的な質量による一撃を受け止めるには足らなかった。
剣は見事にへし折れ、幻竜大剣の一撃は彼女の身体を深く斬り付ける。
「ぎゃぁぁあ!?この、クソガキがぁぁぁあ!」
だが、それでも彼女を仕留めるには足らなかった。
憤怒したスカルの蹴りがジークの腹目掛けて放たれる。
ボギ、バキ。という骨が粉砕する音と共に、ジークの身体は吹き飛ばされる。
「く、くそがぁぁ…お前から、殺してやるぅぅぅうう!」
スカルは、過ちを犯した。
自分よりも明らかに格下の雑魚に傷を付けられて憤慨し、そこだけに意識を取られてしまった。
故に、気付くことが出来なかった。
背後に迫る、黄金の女戦士の気配に。
「ーーしまっ!「よくやったジーク!!貫けーーグラウコス!」
ディオメデスの振るった黄金の槍が、スカルの胸部を貫いた。
「ア、ガァァ…うら、ぎり者めぇぇ…」
そんな言葉を言い残し、スカルは絶命する。
「勝っ…た。ジーク…」
動かない身体を必死に引き摺りながら、側で斃れるジークの元に寄り添う。
「あり、がとう…、、、愛し、、、、、」
そこで、彼女の意識は完全に途絶えた。
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