ルイスという存在
1つ学年が上がって、梨咲は3年生になった。
凛がいなくなった今も、梨咲は学年トップに君臨し続け、相変わらず皆の注目を浴びていた。
更に、在学生からは親しみ易くなったと評判が高くなり、新入生からは親切なお姉様として人気になっていた。
相変わらず婚約者志望の決闘状が届く事もあったが、ルイスが必死にその勝負を阻む。
片っ端から梨咲の代わりに決闘に出ていくのだ。
「梨咲さんは俺の婚約者です。まずは俺を倒してからにして下さい!」
という具合になり、全然梨咲に決闘話が回って来ない。
「ルイス〜、つまんない〜!!」
梨咲が不満を漏らすと、
「じゃあどんな勝負が良いですか?受けてたちますよ?」
と言われる。
梨咲はルイスとの勝負が誰よりも楽しい事を知ってしまっていたので、実はそう言って貰える事がかなり嬉しかった。
まともに相手をして貰える安心感。勝負中のわくわく感。勝ち負けを素直に表現出来る相手。
ルイスはまさに梨咲にとって大事な存在になっていた。
ふと不安になる時も必ず察してくれた。
「…大丈夫ですか?」
梨咲の寂しい気持ちを察し、ルイスが両手を広げてくる。
最初は躊躇いや気恥かしさ、年下に対するプライド、凛の叱責が聞こえて、その腕に素直に飛び込んでいく事は凄く難しい事だった。
でも、ルイスも粘り強くあの手この手で梨咲を誘惑する。
「ほら、梨咲さん♡」
そう言われてぎゅっと抱きしめられると梨咲はどうしょうもなく安心してしまう。
「…っ///」
梨咲は顔を真っ赤にして固まってみたり、少しルイスに手を伸ばしてみたりする。
少しずつ少しずつルイスに甘えてみる。
ルイスはルイスで甘えたい気持ちに葛藤する梨咲が可愛いく思えて仕方がなかった。
「髪が長くなるにつれて心も素直になってきましたね。それで良いんですよ…。」
肩まで伸びた髪の毛をそっと撫でて、ルイスは梨咲の不安で弱くなる気持ちを受け入れる。
そうしていつの間にか、ルイスに抱きしめられる事が梨咲は1番安心できる事になっていた。
ところが…
父に呼び出され、梨咲は応接室へ向かう。
最近は父に拘束などもせずに冷静に対応出来る様になってきた。
「梨咲ちゃん♡新しい使い魔だよ?」
父が黒猫を差し出す。
「いりません。凛の家出から立ち直ったばかりの娘に酷だと思いませんか?」
父は新しい梨咲の監視役を付けたいが、梨咲は断固として拒否する。
「まぁ、そう言わずに…」
「要らないって言ってるでしょ…?」
睨みながら周辺のモノを凍らせた。
父は予想以上の強大な魔力を手に入れた娘にたじたじだった。
駒なのに… 最近は言うことを聞かなくなってきて困ったな〜。ま、無事に高校生活までここで過ごして貰えれば、この国との交友関係は保たれるし、後は適当に結婚させて…
父は重大な事を思い出した。
「そうだ梨咲。ルイス君との婚約を破棄しようじゃないか!」
「は?」
突然の婚約破棄発表に何の冗談かと思った。
「実はお前の妹の美花がルイス君の事を偉く気に入っていてな、ルイス君と婚約したいと言っているんだ!」
父のにこやかな表情と、言われている事のギャップが凄い…。梨咲は全然状況が掴めない。
「妹に…ルイスを譲れと…?」
「まぁそういう事だ。親としては梨咲でも美花でもどちらでも良いんだが…。 どうせ政略結婚だから、親の言うことを聞いてくれる子の方が助かる。」
そう言って父は梨咲に笑いかける。
例の、眼が笑っていない、抑圧的な脅し。
もう嫌…
梨咲は思った。
今までだって散々我慢してきた。
やりたい事を曲げられて、私の意思は簡単に潰されてきた。
今ルイスを取り上げられたら…
私は心が崩壊してしまう…
「…嫌です。 私は婚約破棄したくありません。」
父は大袈裟にため息をつく。
「我儘はいけないよ、梨咲?
どうしたの?梨咲はそんな、私を困らせる子じゃなかっただろう? 凛がいなくなって自由にし過ぎたかな?」
ビクッ
父の眼が… 怖い…
昔からこの眼に睨まれると 逆らえなかった。
「じゃあせめてこの使い魔をそばに置きなさい。」
梨咲はちらりと黒猫を見る。
嫌…! また私の行動を監視されて、逐一父に報告される。
両方 嫌…!
あんな息苦しい日常はいらない。
梨咲は顔を横に振って抵抗を見せる。
「おやおや、本当に困っちゃったね…。これはまた、1から教育し直さないとダメかな?」
父が口角を上げて不気味に笑う。
父が梨咲を掴もうとした瞬間
バチッと何かが手を弾いた。
「何だ?!」
父が驚いた隙きに梨咲は応接室から逃げ出した。
逃げながら自分の身を守ってくれた存在に感謝する。
マリーが…、カチューシャが、守ってくれた…
梨咲はルイスの元へ急いだ。




