戦術会議
「そもそも、何であいつは私なんかの婚約者なんだ?」
寮の自室で予習をしていた梨咲は手を止め、凛に疑問だった事を聞く。
「つい最近決まったことの様です。梨咲様は余りにも色恋沙汰にご関心がないので心配されたのでは?」
「面白いな、それ!」
梨咲は即座に突っ込んだ。
笑えるくらいあり得ない話だ。
「ルイス様は国際魔法局、局長のご子息みたいですね。大変優秀な方の様です。」
凛の言葉に梨咲はため息をつく。
「ああ、国際魔法局なのか…。それはそれはまた…
我国はどこまでも強欲だな。」
「全くですね。」凛も頷く。
「まぁどんなヤツだろうと勝負は勝負!負ける訳にはいかない…。英家の名に恥じぬよう、全力を尽くすのみ。ドキドキするな♡しかも古の5本勝負だ♪」
元々勝負事が好きな梨咲は心が踊っていた。
梨咲は机にうつ伏せて凛に微笑む。
凛は梨咲の前髪を前足でかきあげた。
「1番勝負はいきなり梨咲様の苦手分野では?」
心配そうな顔で梨咲の顔を覗き込む。
「…まぁ、それは…インスピレーションで♡」
「1番ダメなやつじゃないですか!」凛は即座に突っ込んだ。
『1番 地属魔法 この勝負においては地の魔法を用い、より早く、大きく、精巧な創作物を作り出した方が勝者となる』
自分のイメージがモノをいう、想像力が求められる勝負だ。
ところが梨咲には芸術センスがまるでなかった。
たまにまぐれでピカソ的なモノを生み出し、高く評価されるという、運の強さだけを持ち合わせていた。
「今までも何とかなってきたんだから大丈夫だって♡」梨咲が凛にウインクする。
「いやいやいや…! 今からでも遅くない!美術書、見ましょう?」
「それじゃあオリジナリティに欠けるし〜…」
「全く!言うことだけは一丁前ですね…!」
こうして水を掛け合う様な言葉の行き来だけが行なわれ、大した戦術会議にはならなかった。
一方のルイスは
「はぁ… マズい…。勝負だというのに…」
胸を苦しそうに押さえベッドに寝転ぶ。
ルイスもまた1番勝負の戦術を考えていた。
「あああああ… 梨咲様の眼力が…。睨み目が美し過ぎて…。 思い出すだけで興奮する…。」
例の性癖を発症させていた。
「この5本勝負を制したいのに…
あああああ… 全然勝負の事が考えられない…。」
顔を手で覆ってベッドの上を転がる。
正直本人に会うまで、婚約者だなんてどうでも良かった。
一応どんな女かくらい確認しておくか…
くらいだったのたが…
ただの綺麗な優等生かと思ってたのに、イメージと全く違った。
戦いを好むあの鋭い眼光に射抜かれた。
一目惚れ だと思う。
あの幻影魔法だって、途中までちょっと脅かすつもりで仕掛けたのに
あんなに攻撃を仕掛けてくるなんて想定外…
なんて美しい姿なのだろう…!!!
一瞬で心を奪われ、見惚れた。
コレはかなり複雑だ…。
こちらが本気で攻撃を仕掛けていかなければ、好戦的なあの美しい梨咲の姿は拝めない…。
好きな人との戦いを望むー
とんでもない拗らせである。
こうしてそれぞれの目的達成のため、古の5本勝負が幕をあける…。




