嫉妬
マリーを見送ってから2日後。
梨咲はルイスに呼び出された。
放課後の中庭。ほとんどの生徒が下校してしまった。
「なぁに?忙しいんだけど…」
少し不機嫌そうな梨咲を宥めつつ、ルイスはマリーから梨咲宛てに届いた小包みを手渡す。
「マリーから?」
首を傾げ、梨咲は小包みを受取る。
『親愛なる 梨咲お姉様
先日はお世話になりありがとうございました。
またこの度は大変にご迷惑をおかけし、お姉様の大切な髪の毛を失わせてしまい、本当に言葉もありません。心ばかりで申し訳ないのですが贈り物を送らせて頂きます。お姉様のご趣味に合うと嬉しいのですが…』
梨咲が贈り物の小包みを開けると出てきたのは
カチューシャ…!
デザイン性のないシンプルなカチューシャだが、サテン生地にレトロピンクで、落ちたついた大人の女性に合いそうなものだった。
梨咲は手が震えた。
「コレを…私に…?」
髪飾りをプレゼントされるなんて初めての事だった。
梨咲はそもそもプレゼントを貰う事も数える程の経験しかない。
「…っ 嬉しい…」
小包みをぎゅっと抱きしめる。
「マリー、本当に優しいのね…。気に病む事ないのに…。マリーにお礼を言っておいてね?」
梨咲が柔らかい笑顔でルイスに伝えると、ルイスは梨咲の首に抱きついてくる。
「マリーの話になると表情が変わりますね。」
低い声。
抱きつかれていて表情はわからないがルイスは怒っている様に感じた。
「え…?嫉妬?しているのか?」
妹に?
「…悪いですか?」
ルイスはそのまま梨咲を押し倒した。
梨咲の制服の襟を乱暴に引き下げて、梨咲の鎖骨の下にキスマークを付ける。
「…っ!」
チクッと痛みが伴って顔を歪ませるとルイスは嬉しそうに微笑む。
「…やってる事と表情が伴ってない!!」
起き上がった梨咲は真っ赤な顔で反論する。
「もっと…俺の事を意識して下さい!…ね?」
ルイスはキスマークを嬉しそうに指でなぞる。
ルイスの手がデコルテに触れてドキッとした梨咲はルイスの手を掴んで遠ざける。
「襲われると思いました?」
ルイスはにこにこと微笑む。
制服の襟を掴み戻しながら梨咲はわなわなと震えた。
襲われるのかと 焦った…!
「梨咲さん…」
あ… !
ルイスが優しい眼をして頬に触れてくる。
マズい!
眼が離せなくなる…
心臓の音が全身に響く。
キスしてくるルイスの唇を梨咲は手で押さえる。
「ルイスの気持ちはわかったら…。」
顔を赤くして梨咲は困った顔をする。
「もう十分、意識してるよ…。」
梨咲の困った顔にルイスも顔を赤くする。
梨咲はそのまま静かに立ち上がって教室に戻って行く。
まだ…勝負の途中。
今は恋愛とか、そんな事を考えていられない…。
教室で帰り支度をしていると凛も戻ってきた。
いつもの様に肩に飛び乗ってきた凛は、その衝撃で乱れた制服の下に隠れていたキスマークを発見する。
「梨咲様…!」
「うん?」
凛の表情がみるみる怒りの表情に変わる。
梨咲はハッとした。
あ…!キスマーク?!見られた?!!
思わずパッと手でキスマークを隠す。
「あれほど心を許してはならないと…申し上げたのに…」
凛は梨咲の手を払い退ける。
更に凛はルイスのつけたキスマークの上を、鋭い爪で何度も傷をつける。
「痛っ…!痛い…!」
制服の襟が裂かれ、ギリッと梨咲の皮膚を抉り、血が流れ落ちた。
凛は はぁはぁと興奮している。
「凛…」
梨咲が近づこうとするも、毛を逆立てそれ以上来るなと梨咲を拒否する。
狂った様な興奮状態。目には涙が浮かぶ。
? 何でこんなに気を立てている?
梨咲は凛の様子に戸惑う。
コレは…私の警戒心の無さに対する怒りじゃないのかも…。
コレは…ルイスに対する強い強い嫉妬心… !?!
梨咲は息を飲んだ。
本当に…? 本気なの?凛…?
凛はそのまま教室を出て走り去っていく。
「凛?!」
梨咲は凛を追いかけるが追いつく筈もない。
1人残された梨咲はルイスと凛のつけた印を手で押さえる。
「もぉ、何なのよ〜…」
私はただ勝負に集中したいだけなのに…
嫉妬深い2人にうんざりした。




