動じること
梨咲の頭の上にはまだ葉が浮いたまま、次の日を迎えていた。
「あれ?梨咲、決着ついたんじゃなかったの?」
クラスメイトがその葉を見て梨咲に疑問を投げかける。
「ああ、これ?どこまで出来るかな?と思って。」
「あはは!梨咲っぽ〜い!40時間は超えたいね?」
クラスメイトはルイスの前回の植木鉢記録の雪辱を覚えていて、梨咲を茶化す。
「ああ、そうだな!私の38時間の記録も、あんなことにならなければもっと伸びてた筈だからな…!今回は油断せずに行くぞ!」
気合十分に梨咲は握りこぼしを作る。
「あんな事、ねぇ〜♪」
クラスメイトはニヤついた。
「まさかあんな終わり方するなんてねぇ!でも、可愛気があって良かったよ?」
クラスメイトは思い出し笑いが止まらない。
「勝負に可愛気も何もあるか!今回は頑張るんだから!」
教室の移動で実験室へ向かうため2人で階段を降りる。会話はまだまだ続く。
「でも、ルイス君には勝ったんだし、もういいんじゃないの?」
「いや、アレは話にならん!アレじゃ勝負にならない。ルイスのあの葉の落とし方は納得がいかん!」
梨咲がぷんぷんと怒り出す。
「へぇ?ルイス君はどんな葉の落とし方を?」
「それは…」
答えようとして 梨咲は顔を赤くした。
キス… した… ///
思い出して顔を片手で覆う。
「お?何、その反応!意味深〜!!!教えろ〜!」
クラスメイトが興味を示す。
「と…とにかく、だ!アイツのあの負けは無い!私は怒っているんだ!次の勝負こそ完勝するんだ!」
梨咲が喚く。
「確かにあっさりした負け方でした…。でも私は致し方無いと思っています…。」
急に声が聞こえて振り返ると、いつの間にかルイスが立っていた。
梨咲はルイスの気配の無さに驚く。
同時に葉が不安定に揺らいで、直様立て直す。
「お…脅かすな!!!」
梨咲はルイスに怒ると、今度は捲し立てる。
「聞いていたか?!私は怒っているんだ!!!お前の実力はあんなもんじゃないだろう?!もっと本気で!!かかってこい!!!」
梨咲は顔を真っ赤にしながらビシッとルイスを指した。
完全に照れ隠しな事が伝わって、ルイスはくすっと笑ってしまう。
「はい、そうですね ///」
ルイスにバレている事がわかると梨咲も顔から湯気が出た。
「わかればいいんだ! ///」
ルイスにくるっと背を向けて先を急いで歩いていたが、2、3歩 歩いてピタッと足を止める。
振り向くと
「残りの3戦、本気で来ないと許さない!」
例の美しい睨み目でルイスを睨む。
うわー…カッコいい ///
ゾクゾクする♡♡♡
ルイスは興奮した。
その時、
「梨咲さん!僕と付き合って…」以前とは別の男子が
突然横から飛び出してきて告白を始める。
「っ!きゃあああ〜!!!」
梨咲は悲鳴をあげて出てきた男子を思わず火の魔法で黒焦げにした。
と同時に葉も落ちた。
「…え?」
ルイスは呆気なく落ちた梨咲の葉に驚く。
「あーあ!梨咲ったらまたやっちゃったじゃん!」
梨咲の隣にいたクラスメイトが大笑いする。
「う〜〜っ」
梨咲が悔しそうに唸ると、
「全く、精進が足りませんね…」
どこからか現れた凛が梨咲の頭に飛び乗った。
コレは一体…?
「梨咲は不意打ちに弱いんだよね。」
クラスメイトがルイスに説明してくれる。
「この前の植木鉢の時も急に雷が鳴ってね、驚いて落としちゃったんだよね〜!」
クラスメイトがしゃがみ込む梨咲の頭をよしよしする。
「うう…っ 凛の時もルイスの時も、急な登場にどうにか耐えたのに…! …28時間13分かー…。」
梨咲は時計を見ながら心の底から嘆いた。
「コラ!小娘!勝手に弱点を教えるな!!」
凛がクラスメイトを叱り飛ばす。
「何だと?!やるか?!」
クラスメイトが腕まくりして凛に掴みかかろうとする。
梨咲はメソメソとしながら静かに凛を凍らせた。
ルイスは黒焦げになった男子生徒を平然と跨ぎ、
梨咲の隣にしゃがみ込む。
「次は、負けません!」
ルイスの顔が真顔だった。意思の籠もった強い視線。多分初めて見る。
そんな顔もするんだ… いい顔するんじゃん…!!
梨咲はルイスとの次の対決が楽しみだった。