勝負中の勝負
「ねぇルイス。勝負しない?」
今は魔術5本勝負第2回戦中。空中浮遊術で5センチの葉を浮かべて先に落とした方が負け、という地味に集中力を使う勝負中。
「…勝負中に勝負ですか(笑)」
さすがのルイスも苦笑いする。梨咲は構わずにプレゼンを始める。
「このレスカーデンの東に森がある。その一角の500段の階段を登った頂上に展望台があって、先にゴールした方が勝ち!どう?」
梨咲はにっこりと笑う。
魔力はほぼ使わない。単純な体力勝負。しかし500段って…(笑)
「勝者に何かご褒美は?」
「ご褒美必要?」
「必要です!モチベーションが違います!」
「そう?じゃあルイスが好きに考えたら?」
「…じゃあ、私が勝ったら言う事聞いて下さい!梨咲さんは?」
「私?別にいらないわ。それより10分のハンデをあげる。」
「ハンデ?いらないですよ!」
「まぁ、そう言わずに…。結構しんどいよ?」
「…じゃあ5分貰っておきます。」
「ふふっ。5分でいいのね?負け惜しみしないでね?」
「そちらこそ、勝ったらちゃんと言うこと聞いて下さいよ?」
こうして一緒に東の森の入口までやってきた。
「レスカーデンの敷地内は守られていて、モンスターがいたとしても気性の荒いのはいない。たまに機嫌ナナメがいるから注意はそれくらいだな。」
梨咲の説明にルイスが頷く。
「じゃあ、行ってらっしゃい!」
梨咲が手を振りルイスを送り出す。
梨咲は5分後スタート。
ここの階段…最初はいいんだけど、半分超えた辺りからかなりしんどいのよね…。
小学生の頃から慣れ親しんでいる梨咲は、この階段の攻略法を心得ている。
5分後 登り始める。
100段は余裕 200段では疲れが出始め
250段でうんざりする
まだ半分じゃん!と突っ込みつつ、300段では
途方に暮れる。
そこからダラダラ何となく登って400段。
あと100段でゴールだ♪と思って気力を振り絞る。
梨咲は380段辺りで階段に倒れているルイスに遭遇する。
「…大丈夫?」
声をかけるとルイスはぜぇぜぇ荒い呼吸をしながらも目はまだ元気があるようだった。
「魔法使えば?風の魔法とかで50段くらい跳べるよ?」
「使っていいの?!」
「いや、ダメなんてひと言も言ってないし…。先にゴールした方が勝ちだよ?」
そう言いながら梨咲は自分の周りに風の魔法をかけ、纏う。
それを見たルイスも慌てて風の魔法を使う。
1回、2回…魔法を発動させ、3回目でルイスが追いつき、先に行かれてしまった。
3回目の魔法を使う前に梨咲には横入りが入っていた。機嫌の悪いモンスター…。
あーあ!折角勝てると思ったのに…。
落胆するも、目の前のモンスターを見る。
自分の体より一周り大きい獣。
眠りを邪魔されて気が立っているらしい。
「機嫌悪いの?私も今、相当機嫌悪いよ?」
今は5本勝負中。わざわざモンスターと戦わなくても謎の防御が守ってくれるのだが、ルイスとの勝負に横やりを入れられ機嫌を損ねた梨咲はモンスターに向かう。
辺りの空が急に暗くなり梨咲は雷を落とす。
モンスターは驚いてその場から逃げた。
そこからは何となく魔法を使わずに階段を登る。
魔法を使ったって頂上にはもうルイスがいる。
…何か…腹立たしい…