価値観の違いをすり合わせるのは結構大変
「あ、秋穂サーン……?」
秋穂は突然何を言い出してるのか。せっかく場が収まろうとしてたのに、ディランの背中から再び怒気の様なものが感じる気がするんだけど。
「その顔、信じてないな? 単純にディランの過保護が目に余るから言ってるのもあるけど、いつまでも保護者がついてたら番になるのに邪魔だろう? とはいえ、今日は様子を見に来ただけだから退散するよ」
ひらひらと手を振って、ディランの横を通り部屋から出ようとした秋穂に低い声でディランが告げる。
「次、また同じことがあればその時は国に送り返す」
「そんなことしたら大変なんじゃない?」
「魔獣を一匹残らず倒して妖精をぶん殴って目を覚まさせればいいだけだ」
「あんまり暴力的だと朝子に嫌われるよ」
長くないやり取りを終えると、秋穂は肩をすくめて今度こそ部屋から出て行った。
「…………アサコ、本当に何もなかったんだな」
「うん」
秋穂が出て行って二人っきりになった部屋の中で少しの沈黙の後、私の全身を頭からつま先まで眺めると確認するように聞かれる。
返事をしても尚、納得のいかないような顔をしたディランに再度状況の説明をする。
「何もないのはわかった。けど、少しは反省しろ」
「十分反省してるよ。次からは眠れなくても暴れないし、夜中に誰か来ても部屋には入れない」
「……わかってねえな。変な時間に夜着でホイホイ人と会うなっつってんだ」
ディランに言われて自分の恰好を見てみるけど、今着てるのは夜着って言っても、丈の長いシンプルなワンピースって感じで、生地は柔らかいけどしっかりしてる。エーデルラントの屋敷で着る夜着なら、可愛らしいけど今着てるのと比べると格段に生地が薄いし、人に会う気は起きないってのはわかるんだけど。
これはあれかな。価値観の違いってやつなのかなぁ。秋穂も薄着って言ってたけど、目覚めてからもう大分長いみたいだし、どちらかと言えば日本よりもこちら寄りの感覚なのかな? とは言え、もう日本に戻ることはないんだから私もこっちの常識の中で生きていかなきゃいけない。こういうズレは直していかないと。
「ごめん。家で着てるのじゃないし、二人から言われるほど薄着とも思ってなかった」
素直に謝り、感覚が違うことをわかってもらおうと自分が思っていたことを伝える。
「阿呆、屋敷にある夜着なんて着てるときに男には絶対会うなよ。襲ってくださいって言ってるようなもんだぞ」
言ってることはわかるんだけど、こうも服装について言われると価値観が違うってわかってても、それ程かな? って思う。
「いまいち納得できてねえな?」
「言ってることはわかるんだけどね?」
「教えてやろうか」




