夜中のテンションで何かすると朝になって後悔することが多い
その日の夜、私は中々寝付けずにベッドの中でもぞもぞしていた。
今日、ディランに帰れと言われて一番最初に思ったのは、悲しいだった。私じゃあ力になれないって言われたようだった。その次に、ティルが私の護衛代わりだと気づかされた時に、力になれないどころか子ども扱いされているようで、ムカッとした。
普段の私なら、こんなことで悲しいとかムッとしたりとかはしない。例えば、ディランじゃなくて別の人に言われたんだったら、私は悲しいとも何とも思わず素直に家に帰ったと思う。それこそ、危ない所には最初から近寄らないのが正解とか言って。ティルが護衛代わりだって言われたって、強い魔族が一緒なら道中安心だ位にしか思ってなかったと思う。
それなのに、なんでディランに言われるのはこんなに心が痛くなるんだろう、って考えなくてもわかる。
私は、ディランと秋穂が二人でいるのが嫌だったんだ。
ディランと並んでも見劣りしない美人の秋穂とディランは二人でいるとお似合いに見えて、それに加えて秋穂は確実に私より強い。二人が話していると、大抵私のついていけない話題で盛り上がっていることが多い。基本、ティルは精霊と遊んでるか歌ってるかだし。話に水を差さないように聞いているだけの私は一人、蚊帳の外にいるみたいで。
今までディランと他の人がそんな風に話しているのを見たことが無かったからかな。
「ううん、違う」
お父様と部屋に籠って話し込んでる時はこんなこと思わなかった。きっと、お兄様やリヒト、ザラにローゼ、もしくは全く知らない人、その人達とディランが話し込んでてもこんな風にはならないだろう。秋穂だったから、こんな気持ちになるんだ。
「あー……。嫉妬、してるんだ」
声に出せばしっくりくる。ディランが好きだとは認めたけど、秋穂と並んで話してるだけで嫉妬するなんて思ってもみなかった。自分はもっと相手の交友関係なんて、ふーんで済ませられるドライな人間だと思ってた。っていうか、実際そうだったし。
「私以外の人と楽しそうに話してるのが嫌! いやいや、重いって」
思わず、口に出して自分で自分に突っ込みをいれてみる。
夜に考え事なんてするもんじゃないな。余計に眠れないどころか、思考が変な方向へと向かってる気がする。
もう、さっさと寝てしまおうとゴロゴロしすぎてぐしゃぐしゃになった布団をかけなおすと、深夜にもかかわらずドアをノックする音が聞こえた。
「朝子、起きてるのか?」
「秋穂?」
ドアを開けると、声の主である秋穂が立っていた。
「物音がしたから来てみたが、眠れないのか?」
秋穂の部屋は隣部屋だ。確かに派手にベッドの上でゴロゴロしてたけど、そんなに聞こえる程音が出てたかな……? 私の疑問はすぐに秋穂によって解消された。
「ああ、人族よりも少し聴力がいいんだ。うるさかったわけじゃない。ただ、起きてるようだったから眠れないのかと思って来てみたんだ」




