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これからのこと


 あの中に入って戦う必要がある。あの魔獣がひしめく階層で、ある程度魔獣を倒して数を減らさねばならない。小型から中型を一体ずつならともかく、それはちょっとキツそうだ。


 私の不安に気づいたのか、秋穂が慌てて言葉を付け足す。


「ああ、そんな顔をするな。火の妖精が正気に戻れば魔獣が増えるのも止まるから、なにも私達だけでやる必要はない」


「それなら、冒険者ギルドに声をかけて討伐隊を組んで送り込めば何とかなるな」


 そう言って、ディランは何かを考える素振りをして、やがて私の方を真っすぐ向いて話しかけてきた。


「俺から誘っておいてアレだが、次の街に着いたらティルとアサコはエーデルラントの屋敷に戻ったほうがいい」


「え」


「アサコも見ただろ。今は危険だ。猶予があるっつっても、絶対じゃねえ。何かの弾みで上の階層まで魔獣が出てきてもおかしくないし、そうなったときに俺が守り切れるとも言い切れねえ」


 それはつまり、足手まといだと。


 確かに魔法だってまだ勉強中で、魔獣だってこの間中型を倒したばかりで自分が強いとは思ってないけど、そうもはっきりと言われると少し、キツイな。


「あー…うん、そうだね。私じゃ荷が重すぎるもんね」


 出来るだけ空気が重くならないように軽く返事をするけど、上手く笑顔を作れてるか自信がない。


 ダンジョンには秋穂がいれば妖精は力を貸してくれるだろう。何度も通った秋穂なら当然、道もわかるだろうし、ディランの言ったように不足の事態が起こっても、ディランと秋穂なら何とでもできると思う。


 だから、戦力としては数えられない私とティルがいても邪魔なのはわかる。でも、ここまで来て、じゃあ後はやっとくから危険だし帰れってそれは理解は出来ても納得は出来ない。


「ディラン、国を出て話を聞いたときから不思議だったんだが、どうしてそんなに朝子に対して過保護なんだ? 朝子だって冒険者だ。例えダンジョンで命を落としたとしてもそれは冒険者として本望だろう?」


 秋穂は強い眼差しでディランに問いかける。


「それはそうだが…」


「朝子はどうしたい? ティルと家に帰りたい? それとも危険でも一緒に行きたい?」


 秋穂から突然話を振られて、言ってもいいのか迷ったが、秋穂に正直に言ってごらんと言われて少しずつ話した。


「私としては、ここまで来たんだから、出来れば最後まで見届けたい。でも、ティルもいるし、私も初級魔法は使えるけど、そこまで戦えるわけじゃないから邪魔になるくらいなら帰った方がいいのかな、とも思う」


「おねーちゃん…。ボク、そんなに弱くないよ!?」


 私が話し終えると、今まで黙ってたティルが心底驚いたと言わんばかりに目を大きく開いて、私に飛びついて、私を揺さぶりながら訴える。


 いきなりのティルの行動と、信じられないと言わんばかりの訴えに私も何が何だか分からなくなる。



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