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モンスターハウスにアイテム無しで突っ込むのはつらすぎると思うよ


 どれだけの人が無自覚だった私の好意に気づいていたのかを考えだしたら、一生この部屋から出られない気がするから、とりあえず認めてしまおう。私はディランに好意を持っている。多分、恋愛的な意味で。


 だけど、気づいてしまった今、これから朝食で顔を合わせるのに私は平静でいられるのか。


 いや、できる。無駄に積み重ねた社会経験は裏切らないはず。なんも知らない顔していつもと同じように振る舞うことなんて朝飯前。昼ご飯を食べた後、眠いのを神妙な顔をして誤魔化した会議を思い出すんだ。





「おっ……おは…よっう!」


 声が裏返った。しかも変にどもった。


 どこに行った社会経験! 見事に裏切られたよ!


「お、おう、アサコ、大丈夫か? 顔が赤いぞ。また熱でも出たんじゃねえか?」


 ディランに心配されてる。そりゃそうだよね! 自分でも顔が熱くなってるのがわかる。今私の顔は真っ赤になってるんだろう。


「ディラン、大丈夫だ。朝子のそれは熱じゃない。内なる自分と戦ってる最中なんだ。そっとしておいてやれ」


「……? おう?」


 秋穂、どうせならそんな雑な感じじゃなくて、もっとうまく誤魔化してくれないかな。内なる自分と戦ってるって何なんだ。


「内なる自分と戦う…。おねえちゃんカッコいい!」


 ああ、秋穂のせいでティルまで変な思い込みをしちゃったじゃん。


 でも、秋穂とティルのおかげで緊張が抜けて朝食の間、ディランと自然に話すことができた。


 



 空は晴天、のんびりとした雰囲気の中、今日も幌馬車でホノル村を目指して進んでいる。


「気づいたんだけどさ、ホノル村についてダンジョンに行っても火の妖精にどうやって会えばいいんだろう。魔獣倒しながら進むの…? 生まれ続けるのに?」


 そう、気づいてしまった。


 どのくらいのスピードで魔獣が生まれてるのかはわからないけど、あの階層の中をどこにいるかもわからない火の妖精を探すのはちょと、いやかなり、ハッキリと言ってしまえばやりたくない。


 長時間探す体力を考えると、某ゲームの一撃必殺の男らしい名前の石を何だか楽しそうな名前の壺で増殖させて遠くから投げつけて進む位でないと無理だろう。つまり、現実的じゃない。


「会うだけなら、難しくはない。呼べばいいだけだからな。問題は、その魔獣なんだが、その…」


 呼べば会えると言う秋穂は後半を言い淀んだ。これっぽっちも良い予想は出来ないけど、続きを促す。


「いや、火の妖精を宥めた後、増えすぎた魔獣は間引かねばならないな、と」


「つまり、あの中に入って多少は戦う必要があるってわけか」


 

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