酒とつまみがあれば立派な晩御飯
注文を済ませると、そう時間を置かずに飲み物と単品料理のいくつかが運ばれてきた。
私、ディラン、秋穂はエール、ティルはオレンジジュース。宿について一息つく間もなく店に来た私達は喉が乾いていた。そこに、よく冷えたエールとジュースが出されて我慢する必要もなく、皆で一気にジョッキを呷った。
「くぅ~~~うま~~」
「おいしいー!」
キンキンに冷えたエールの最初の一口が最高に美味しい。私とティルは口から感想が漏れた。ディランと秋穂も、何も言わずとも顔は緩んでいる。
「お待たせ! お子様プレートだよ」
そこに、タイミングよくティルの注文したお子様プレートが出てきた。
「わぁぁぁー! これ食べていいのー!?」
ティルの目の前に置かれたお子様プレートは、船の形をした皿にサラダ、エビフライ、クリームパスタ、星の形にくり抜かれたパン、リトルクラーケンのフリッターが少量ずつ可愛らしく盛られていて、デザートには旗の立ったプリンが乗っていた。
「……すごいな」
ぽつりと呟いたディランを見ると、ティルのお子様プレートを見て驚いた顔をしている。
「こういうのはこの世界じゃ珍しいな」
秋穂もお子様プレートを観察している。
「食べてもいーい?」
ティルはお子様プレートを見ている大人達に遠慮がちに声をかける。こんなにマジマジと見られてたら食べていいか迷うよね。ディランと秋穂もハッとしてお子様プレートから視線を逸らす。
「ごめんごめん。食べていいよ!」
私がティルにフォークを渡すと、ティルは笑顔で受け取り食べ始める。私も最初に運ばれてきた雷の魔法を使うらしい雷タコを使ったマリネを口にする。
「「おいしーい!!」」
全くそんなつもりなかったのに、感想がティルとハモる。
生の雷タコは瑞々しく柔らかい。一緒に入っている彩豊かな野菜も甘みがあり、見た目も味も爽やかだ。これは白ワインが合うかもしれない。
エールを飲み干して、適当に飲んだことのないお酒を注文してみると、ジントニックにそっくりなお酒が出てきた。美味しい。ディランにあまり飲み過ぎるなと軽く注意されたが、それくらいは弁えている。なんとなくこの前のモヤモヤを思い出しそうになったが、せっかくの美味しいご飯が台無しになりそうだったから気合で忘れることにした。
グラスが空になる頃に秋穂が追加を頼んでくれて、次に手を出したのは手のひらサイズの貝がそのまま器になってる料理。一口食べると、こんがり焼かれたチーズと食欲をそそるニンニクの香り、それをしつこくさせないパセリが絶妙な加減で貝の味を引き立てている。美味しい、 美味しすぎる!
それからも、頼んだ料理が次々と運ばれてきて美味しいお酒と海の幸に舌鼓を打って夕食を終えた。




