旗が立ってると嬉しいやつ
なんとなくのモヤモヤを抱えたまま、黄昏時に港町のマーレまで戻ってきた。
今日はここで一泊する。明日からはラングスタールには戻らず、行きとは別ルートでホノル村へと向かう予定だ。
「この前と同じお店で晩御飯食べたいー」
宿を決めて二人部屋を二部屋取り、すぐには使わない荷物を部屋へ置いて廊下に出ると、ちょうど同じタイミングでディランとティルが部屋から出てきた。
ティルは行きで昼食にペスカトーレを食べた店を思い出したらしく、夕食のリクエストをする。
「前泊った宿の女将さんにお勧めされたお店がすごく美味しかったんだけど、秋穂もそこでいい?」
「ああ、構わない」
秋穂に以前食べたペスカトーレの話をすると、楽しみだと言った。
店が決まると本格的に混む前に行こうということになり、足早に店へと向かった。外はまだほんのりと明るさを残していたが、店内はすでに八割の席が埋まり賑わっていた。
「いらっしゃい! あれ、前に昼の営業の時に来てくれたお客さんだね! うちは夜のメニューも絶品だから沢山食べてって!」
以前、料理を出してくれた少し気の強そうな目つきが印象的な女性が、前回と同じように冷えたレモン水を持ってテーブルへとやってきた。
一目みただけで、前に来たことを思い出せるなんてすごい記憶力だ。ちょっと羨ましいかも。
女性は人数分のレモン水をテーブルに置くと、大きな一枚のメニューも一緒に置いた。
「決まったら大声で呼んで! 夜はアルコールとおつまみがメインだけど、食事メニューとジュースもあるからそっちの坊やも満足するはずだよ!」
そういうと、女性は次のテーブルへと向かっていった。
テーブルに置かれたメニューに目を向けると、最初の方にはサッと出てきそうなメニューから始まって、単品の揚げ物や焼き物と続き、その次にシーフードグラタンとパンのセットやモウールの赤ワイン煮、パスタが数種類。どれも使われてる食材の説明が簡単に書いてあって、読むだけで美味しそうなことがわかる。
気になったのは、食事メニューの一番最後にみつけたお子様プレートなる存在。名前からして子供向けなんだろうけど、他のメニューには簡単に説明が添えられているのに対し、何の説明も書いていない。
「ボク、これ!!!!」
私が何が出てくるんだろうと考えていたら、ティルがテンション高くお子様プレートの文字を指差す。
「説明書いてないし、何が出てくるんだろうね」
「ドキドキだねー!!」
ティルが注文を決めた後、私達も単品料理をいくつかと飲み物を決めて注文した。




