思い立ったが吉日は異世界でも共通事項
大満足で食事を終えた私はディランに頼んで冒険者ギルドに戻って来て、掲示板の依頼を見ていた。
というのも、どんな依頼がいくら位の報酬なのか知りたくなったのだ。実はゴッズさんの曾祖父に当たる人が愛し子で、こっちにある食材を研究して料理を再現したんだとか!テリヤキ以外にも色々あったから絶対また行きたい。
だから、自分で自由に使えるお金が必要だと改めて思った。ゆくゆくは家も出て自立したいしね。
そう思って依頼を見に来て見たはいい。ただ、大まかな難易度やその依頼を受けることができるランクは紙を見ればわかるけど、逆に言えばそれだけしかわからなかった。
「ディラン、時間のある時に詳しく冒険者のこと教えてくれないかな」
「よし!登録するぞ。実際、経験したほうが早い」
「ちょっ、まだ登録するつもりは」
言うと同時に、私の手首を掴んでカウンターに向かいだした。昼を少し過ぎた後だからか先程に比べ、ギルド内の人はまばらになっていて、止める間もなくカウンターまできてしまった。
「こんにちは。今日はどのようなご要件でしょうか」
「新規の登録を頼む」
「はい、ではこちらに必要事項の記入をお願いします」
一足飛びで話が進み焦った。ディランの腕を掴んで引っ張り、精一杯背伸びをして小声で訴える。
「ディラン!私まだ字書けないしお金も持ってない」
いずれは登録するつもりだが、まだ早い。少なくとも私はそう思ってる。だけど、
「俺が代筆してやる。どのみち最初は薬草採取からで危険も少ないし、俺がついてしっかり教えてやるから安心しろ。登録料は貸しだ。アサコがもし冒険者を気に入って続けるなら、いつかうまい飯でも奢ってくれりゃいい」
「・・・・うん」
ディランの力強い言葉に、白金の冒険者様がそこまで言ってくれるなら、と頷いた。
ディランの代筆で書類の記入が終わると、少し待つように言われ、受付のおねえさんは書類を持ってカウンターの奥の扉へと入っていった。
しばらくして受付のおねえさんが戻ってくると、銅色の日本の免許証と同じくらいの大きさの薄いプレートを渡された。
「こちらが、アサコ様の冒険者証です。冒険者証は世界各国で身分証として使用できますが、紛失された場合は原則再発行が出来ませんのでご注意ください」
再発行不可なのか。無くさないように気をつけないと。その他、注意事項をニ、三聞きカウンターを離れた。
「冒険者登録って簡単なんだね」
「登録するだけならな。銀までならそこそこいるが、金から一気に少なくなるし、間口を広くして優秀なやつを少しでも多く確保したいんだろ」
「なるほど」
「さて、せっかく冒険者になったんだ。もうちょっと付き合え」
案内されたのはこぢんまりとした一軒家。躊躇なく扉を開け中に入っていくディランに続くと、中はお店になっていて、ナイフやランタン、ギルドで持ってる人をよく見かけた袋が大きさ別にあったり、他にも武器や防具、用途のわからない物を含め色々と置いてあった。
「ばあさん」
店の奥に作業台のような物があり、そこで本を読んでいたおばあさんがディランの声で顔を上げる。一瞬、視線が合ったような気もするけど、勘違いかもしれない。
「おや、珍しいのが来たねえ。雲草のかぶれに効く軟膏は切らしてるよ」
「ぐっ・・・・・」
ニコニコしているおばあさんとは対照的にディランは顔をしかめている。軟膏欲しかったのかな?
「一式頼みにきた。」
「そのこのかい」
ああ、とうなずくディランにギョッとして見上げると、整った顔にうっすらと笑みをのせて冒険者になった祝いだと言った。
今日一日付き合って貰って、美味しいご飯を食べさせてもらい、少額とはいえ借金のある身としては気が引けていると、
「遠慮せず貰っときな。その男はそこらの冒険者より稼いでるんだ。初心者の装備一式揃えた位で痛くも痒くもないよ」
「そういうこと。それに、下手に他人が揃えた装備でいらない怪我をして、冒険者の楽しみも知らないまま辞めちまうのももったいないからな」
二人からそういわれてしまった私は、諦めて素直に受け取ることにし、気持ちを切り替えて揃える道具とその説明をディランとおばあさんそれぞれから教えて貰った。
現金なもので、小物を色々と選んでもらって防具の試着を始める頃には遠慮なんてどっかに飛んでいった。試着のときに女であることを伝えると、おばあさんは目を丸くした後すぐに笑いだして、こりゃこれからが楽しみだと言った。
必要な物を一通り揃え、おばあさんに防具の細かい調整を頼み、店を出る。思ったより長い時間店にいたようで日が傾き始めていて、私達は来た道を戻るようにエーデルラントの屋敷に帰った。
「ディラン、今日はありがとう!すっごく楽しかった」
「そりゃ何より。ばあさんに頼んだ物が出来たら薬草の採取に出かけるか。また連絡する」
次の約束をし、帰るディランを見送る。部屋に戻り着替えをした後、ステアがお茶を用意してくれて、上機嫌な私の話に付き合ってくれた。
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