竜人族の国
門番は普通の馬よりも二倍程大きい馬に乗って、ものすごいスピードで報告に行った。そうかと思えば、それ程時間が掛からずに戻ってきた。
「大変失礼しました。我らが主がお会いしたいとお呼びです。ご案内いたしますので、どうぞこちらへ」
そういって門番は門を開けて通してくれた。主ってことは竜人族の国の王様ってことだよね多分。それなら、竜人族の愛し子についても何か知ってるはずだけど、いきなりそんな偉い人に会うとは思わなかった…。
ちょっと中へ入れてもらって宿をとって、身支度をしてからお伺いを立てる予定だったんだけど。
「このままでいいの?」
「まあ、来て早々なら旅装なのもわかってんじゃねぇか…?」
「いいのいいのー」
ディランと顔を見合わせて無理やり納得することにして、門番が案内する目的地まで馬車内で大人しく過ごした。ティルは絶対適当だと思う。興味ないのか精霊と遊んでたし。
アラビアンナイトに出てきそうな宮殿まで着くと、幌馬車を降りて馬車と荷物は御者に任せて私達は別行動で謁見の間に通された。
「よく来たの、人の国の愛し子よ。まあ、楽にせい」
その言葉で顔を上げると、男性にしては長く艶のある漆黒の髪に、整った顔立ちに竜人族の特徴と思われる鱗が艶々と輝いていて、これまたアラビアンナイトに出てきそうな豪奢な装飾を付けた鮮やかな瑠璃色に金の刺繍が入った衣装を着た、いかにも王族です! って感じの威厳のある男性がいた。
「親書によれば、そなたらは我が同族の愛し子に用があるそうじゃな」
「はい、あるダンジョンにスタンピードの兆しが見えました。我が国の愛し子が精霊から聞いた話によると、こちらの国の愛し子に防ぐ術があると聞き馳せ参じました」
スラスラとディランが答えるのを見ていると、さすがに慣れてるなぁと思う。私だったら、たどたどしくなっていただろう。それに、こういう場ではティルも大人しくしてるのが、賢い子だなと思う。
「他ならぬ精霊より愛されし子が来たのじゃ。我が同族の愛し子はこの宮殿内におるから案内させよう。ちと、時間が掛かる故、それまで部屋を用意するからそこでゆるりと過ごされよ」
謁見の間を出ると、客間と思しき部屋へと案内された。
特徴的な柄の絨毯が敷かれた部屋は高価そうな調度品があちこち置いてあって、豪奢なつくりになっていた。
ティルとディランは向かいの部屋に案内されていたけど、きっとそこも造りは変わらないんじゃないかな。
それにしても、ちょっと時間が掛かるって言ってたけど、ちょっとってどれくらいだろう? ちょっとっていう位だったら客間はいらない気がするんだけどな…
ちょっとだけにちょっと心配になってきたよ。




