竜人の国へ
きっかけはティルの一言だった。
「ボク、おねえちゃんとお兄ちゃんについてく」
親子の再会を果たした後、ティルと会った経緯を説明すると、ティルのお母さんはこれから夫を探しに行くと言った。それに対しティルは、私とディランについて行くと言った。
「せっかくお母さんに会えたのに?」
私が聞くと、いつものほわほわした感じじゃなく、真剣な表情でティルは言う。
「いきなりだったし、ボク達によく効く毒まで使われちゃったから捕まっちゃったけど、ボクのママは本当は強いから大丈夫。それに、おねえちゃんとお兄ちゃんについて行けばパパが見つかった時、ママに教えられるもん」
ティルの言葉を聞いたティルのお母さんも頷きながらティルに同意する。
「そうね、それがいいと思うわ。あの人もきっと同じ様に捕まっているもの。それに、愛し子と一緒なら悪いようにはならない気がするわ」
「なんっ…」
私が愛し子だって教えてないのに当てられてびっくりした。一緒に行動していたティルは何となくわかってると思うけど、私もティルもこの人に私が愛し子だってことは一言も言ってない。
「あら、魔力が見える種族からしたらびっくりする程のことでもないわよ」
アッサリ種明かしをされて、そう言えば愛し子は魔力が高いと聞いた気がするからそれのことかな? と思った。それが人間としてはなのか生物の中ではなのかはわからないけど。
そんなこんなで本人と保護者の意思もあり、私とティルとディランと精霊で今まで通り幌馬車に乗って旅を続けて、竜人の国のすぐ近くまで来ていた。
「あ、あそこ! 門の前に人がいるよー」
ティルの言葉通り、道の先には大きな門が見える。あれが竜神の国との境なのかな。
門の前には、トカゲの尻尾を太くしたような尾をもつ竜人族と思われる門番が二名、立っている。顔の一部が鱗で覆われている門番は見るからに強そうだ。
私たちの馬車が門の前まで近づくと、門番の一人が一歩前へでる。
「これより先、竜人族の国なり。現在、この国への立ち入りはご遠慮願いたい」
ここまで割と順調に来てここでストップがかかるとは…。ここで帰されたら竜人族の愛し子の手がかりが無くなる。うーん、困った。
「俺達はディティリエから使いで来た。ここに王の親書もある」
そう言ってディランは預かってきた親書を取り出した。
「確認しても?」
門番に親書を渡すと中身を確認した門番が突然慌てだす。
「失礼、上へ報告をする為しばし時間を頂いてもよろしいか」




