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王様のいうとおり!


「竜人の愛し子探し、やらなくてもいいよー」


 登城し、謁見の間についた早々陛下はそう言った。


「へ?」


「いやさ? スタンピードを止めてくれるのは有り難いけど、ディランは兎も角、愛し子の君にはこの国を守る義務なんて無いんだよね。最悪、国が無くなっても別の国がよろこんで保護してくれるし」


 陛下の言ってることはわかる。でも、それって私だけ仲間外れみたいだ。突然この世界に来て最初は戸惑ったけど、今じゃそれなりに大切な人達もいる。


 私にできることがあるなら微力でも力になりたい。


「行きますよ。だって私、冒険者だし」


 銀だけど。冒険者がスタンピードの発生を防ぐのは何もおかしくない。金とか白金、もっと言うならオリハルコンだったら格好良く締まったんだけどね。


「そっかー! うんうん。冒険者だもんねー」


 私の返事を聞いた陛下はうんうん頷く。


「あーよかった。ぶっちゃけ、じゃあ行きません。なんて言われたらどうしようかと思っちゃった」


 そう言ってウィンクを飛ばしてきた。テヘペロって聞こえてきた気がする……


「最初から行くって言わせるつもりだったんだろ」


 成り行きを見守っていたディランが、狸……とボソッと呟いた。


「いやいや、本当に行きたくないなら、それはしょうが無いなあって思ってたよ?」


 本当だよ!とディランに向かって言っていた陛下がこちらを向いて口を開く。

 

「まあ、行くって言ってくれたなら、君達二人で親善大使として行って来なよ」


 は?


「え、冒険者として行くんですが」


「それねー、竜人の国は友好的だけど排他的な所もあるんだよ。冒険者兼、親善大使で行ったほうが絶対探しやすいと思うよー」


 だんだん私もわかってきたぞ。きっと、最初からそのつもりだったに違いない。ディランの言うとおり陛下は狸だ。親しみやすい雰囲気は態とだ。


「アサコ、諦めろ。無駄に疲れて終わるだけだ」


 一矢報いる為に考えていると、それを悟ったディランに止められる。言い方が、実体験に聞こえるんだけど。


 結局、何も思いつかなくて諦めた。


 陛下曰く、もう準備は出来てるそうで、いつでも出発出来る状態だとか。準備っていっても、行くのは私とディランとティルだけで、馬車と御者と有効の証として竜人の国へ持っていく酒やらなんやらだけなんだけど。


 それにしたって準備が早すぎませんか。ええ、何度でも言います。最初からそのつもりだったんですよね。


「あー あと、君達が保護してる魔族の少年。この件が片付いてもまだ国に帰ってなかったら一度会ってみたいから連れておいで。じゃ、話はそれだけだから」


 言いたいことだけ言って、ひらひらと手を振る陛下にもやっとしながら退室する。


「アサコが思ってる事は想像がつく。アレはああいう生き物だと思っていたほうが精神的に楽だぞ」


 思い返せば、一番始めに陛下に会った時、お父様は遠い目をしていた。その時はお茶目な陛下に振り回されて大変だな、と思ってたけど ごめんなさい、お父様。そんな可愛いものじゃなかった。


 王宮を出てエーデルラント侯爵家の屋敷まで帰ってくると、ディランはまた明日な、と言って帰って行った。


 私も部屋へと戻り、楽な服に着替える。明日は道具を取りに行ったら、王宮をに行って親善大使として用意された馬車に乗って出発だ。今のうちに準備をしてティルと遊ぼう。





いつもありがとうございます。私事ですが、急な温度差に風邪を引いてしまいました。更新は出来ますが、普段より投稿時間が遅くなると思われますので、ここでご報告いたします。

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