お世話されるのも慣れれば極楽
冒険者ギルドの執務室を出ると、道具の手入れを頼む為、冒険者になったときに防具や採取用の道具を買った店へと行った。
店に入るとおばあさんは本を読んでいて、私達が入っていくとチラリと視線だけ動かした。
「いらっしゃい。おや、二人揃って来るなんて珍しいじゃないか。それに、小さな坊やも増えたね」
消耗品の購入で度々世話になっていたが、言われてみるとディランと揃って来たのは始めの日以来だ。
「ああ、アサコと長期の依頼に出ることになってな。その前にメンテナンス頼みに来た。小さいのはティル。見ての通り魔族だ。少し縁があってな」
「こんにちはー!」
ティルが挨拶し、ディランが目的を告げると、読んでいた本に栞を挟んでこちらへとやってきた。
「元気のいい子だね。どれ、見てやるから全部だしな」
言われた通り、手入れの必要があるものを出す。と言っても、私の持ってる道具だと採取用ナイフと皮剥ぎナイフ、それと魔力を込めて使う簡易ライトくらいだが。
ディランも同じように出すけど、軽装に見えるのにどっからそんなに出てくるのかってくらい細かい道具が出てくる。
唖然として見ていると、なんだかんだ使うことが多いし、あると便利なんだって言って、最後に皮剥ぎ用ナイフとは違う短剣を置いた。
「それ、ディランの武器?」
実は、ディランが武器らしい武器を使うのは今だに見たことがない。私が冒険者になりたての頃は冒険者としての基本を教えてくれたりしたけど、内容は採取の仕方や小型魔獣用の罠の仕掛け方で武器を使うようなことはなかった。
小型魔獣の狩りの仕方を教わった時もだけど、ビッグホッグを仕留める時に使ってたナイフだって魔獣の皮を剥ぐのに使うナイフだった。
「ああ、大型の魔獣を狩る時にはコイツが使いやすくてな」
ディランなら大型の魔獣を仕留める時も涼しい顔してそうだな。
私の冒険者の位は銀まで上がったけど、採取依頼の達成実績を積み重ねて上がったようなものだ。
なんていうか、身のこなしからして私とは天と地程の差があるのだ。一度、機会があったらディランが討伐依頼をこなす所を見てみたい。
そう思ってたら口に出てたようで、今度な。と言われた。
私とディランのやり取りを見ていたおばあさんは溜め息をついて口を開く。
「仲がいいことだね。この量だ、今日中には厳しいね。明後日、また来な」
「ああ、急で悪いけど頼んだ」
道具を預けて店を出た私達は、明後日まですることがなくなった。
「丁度いい。侯爵に説明しに行くか」
ディランの一言で私達はエーデルラント侯爵家へと向うことになった。
もう、何度も通った道を馬車で通る。見慣れた景色だけど、ティルが増えたことでいつもより賑やかになる。
「おねーえちゃんのーおーうーちー」
何がそんなに楽しいのかはイマイチわからないが、ティルはご機嫌だ。
屋敷につくとお母様が出迎えてくれた。
「あら、アサコちゃんお帰りなさい。それと、ディラン様と小さな紳士もようこそ我が家へ」
お母様は優雅に挨拶をすると、私達に、まずは旅の疲れを癒やすのよ。話は晩餐の時に聞きましょう。と言って私は自室、ディランとティルは客間へと案内された。
早く帰ってきたことに驚かれるかと思ったが、よく考えればルコの街で熱をだして動けなかった日を含めるとそうおかしくも無いことに思い至った。
「アサコ様、おかえりなさいませ」
「ただいま、ステア」
部屋に着くとステアが長旅の労をねぎらってくれて、入浴の準備が出来てると言った。
有り難くお風呂に入ると髪を洗われ、体を磨かれ、マッサージを施されてと久々に至れり尽くせりだった。
こんな時だけ令嬢としての恩恵を享受するのもなぁ、なんて考えはとうに捨て去った。
まあ、晩餐の時にはドレスを着なければいけないし、一応侯爵令嬢としてはそれなりの振る舞いをするんだ。問題はなかろう。
「極楽が見えた」
入浴を満喫すると、部屋着に着替えて用意されたお茶を飲み一息つく。
特にすることもなく、かと言って昼寝をするほど疲れてもいない。そんなこんなでいつもの如くステアとお喋りしていたら、あっという間に晩餐の時間になり、晩餐の席に相応しいドレスに着替えた私は食堂へと向かった。
ホノル村に向かうときの話とダンジョンでの話をするとお母様、お父様、お兄様の順に口を開く。
「あら、じゃあまたすぐに出ていっちゃうのね」
「それにしても、スタンピードとは穏やかじゃないね」
「せっかく帰ってきたのに。あまり危ない真似はしてはいけないよ?」
お父様がもう少し詳しい話を聞きたいと言うと、お母様はまずは食事を楽しみましょう。と言ってティル以外止まっていた食事を再開した。
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