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三歩進んだらニ歩戻る(半強制)


 目の前の光景に一瞬、現実から逃避してみたが、扉の向こうには魔獣が沢山いることに違いはない。


 よく見ると沢山いるだけじゃなくて、魔獣同士で争っていて、結構酷い光景だ。


 そっと、ドアを締めて無言で階段を上がっていく。


「ディラン、今はタイミングが悪いと思う。今回は一旦帰って、しばらくしてから来ない?」


 あんなん、中へ入ってったら死ぬ。絶対、死ぬ。


「ああ、俺もそれがいいと思う・・・人には限界ってもんがあっからな・・・」


 ディランも顔が引きつってるよ! そうだよね! アレは無理だよね!!


 よし、帰ろう。折角、二度目の人生満喫してるのに早々に死にたくない。


「じゃあ、そういうことで。ティル、帰ろ・・・」


 様子を見に行ってる間、待っててもらったティルに声をかけて、踵を返す。


「ダメダメダメなの〜! お願いなの! 助けてなの〜!」


 あの魔獣達がここに上がって来るかもしれない、という不安からさっさと脱出したかったけど、水の妖精に止められる。


「いやいやいや、アレをどうにかしろって事なら無理だよ!?」


 無茶振りもいいところ! これに比べればリヒトのときは可愛いもんだよ。


「違うの、違うの〜! 何とかしてほしいのは火の妖精なの」


「火の妖精?」


 なんかまた、新しい妖精が出てきたぞ。


「火の妖精が怒ってるの! それでみんなあそこに集まっちゃってるの! 怒るのダメなの!」


「怒るのダメって言われても・・・」


 火の妖精に会ってもないのにどうしろと?


「水の、それじゃあ伝わらないワ。火のコは、竜人の愛し子が会いに来なくなって怒ってるワ。ここから出られないワタシ達の代わりに、竜人の愛し子を連れて来るのをお願いしたいワ」


 火の妖精が怒るとなんで魔獣が集まるのかとか、竜人とか他の現役の愛し子に会えるかもとか、気になることが沢山ありすぎるけど取りあえず、


 私の嫌な予感に限って的中するのどうにかならないかなぁ!



 あらためて妖精達から話を聞いて、ディランが私にも分かるように話してくれたことによると、竜人っていうのは種族で、ギルドで討伐依頼が出されるドラゴンとは別物の亜人らしい。


 竜人は人間より遥かに寿命が長い。千年とか生きるんだって。件の竜人の愛し子はこのダンジョンによく来て、竜人を気に入ってる火の妖精は来るたび話をしたりしてたらしい。


 だけど七十年前位から、脱皮するからしばらく来れないって言ったきり、来なくなった。竜人が来るのを待ってた火の妖精は待っても待っても来ない竜人に怒って、負の感情が暴走。


 暴走した負の感情は他の階にいた魔獣達を惹きつけて、あの階に魔獣が集まった。


 集まった魔獣達は縄張り争いや捕食によって一旦は減ったが、火の妖精の怒りと魔獣の死が合わさって負のエネルギーが新たに魔獣を生み出しての以下ループ。


 魔獣って繁殖と負のエネルギーが溜まった場所から生まれるのと二種類あって、後者のほうが凶暴で見た目も恐ろしい魔獣が生まれる。


 森とかでよく見る小型や中型の魔獣はほとんどが自然に繁殖したもので、食用になるのも多いが、負のエネルギーから生まれたものは食用にできない。


「ちなみに、放っておくとどうなるの? そのうち怒りも静まれば元に戻るんじゃないの?」


 怒るってエネルギー使うしね。いつまでもは持たないと思うんだけど。


「それダと怒りが収まる前に、生まれすぎた魔獣で溢れかえって外に出てくんダ」


「それってスタンピードじゃねえか!」


 スタンピード。何らかの理由でダンジョンに、魔獣が大量に出現して、その大量の魔獣がダンジョンの外へと出てきてしまう厄災。


 冒険者始めたての頃にディランに教えてもらったことだ。


 スタンピードはやばい。仮にここでそれが起こったらホノル村は間違いなく地図から消える。迅速に討伐隊を組めたとしても、街の二つ、三つは壊滅するだろう。


 さすがにスタンピードが起こるとわかってて放ってはおけない。かと言って下の階にいる魔獣を討伐した所で、火の妖精が怒り続けてたらまた魔獣は生まれてくるし、ただの時間稼ぎにしかならない。


「竜人族の愛し子を探すしかないね」


 ディランと顔を合わせて頷きあう。


「だな。今すぐに起きるっつーわけじゃなさそうだったが、早いうちに対処しとかねーとヤベェのは間違いない」


 本当はこういうの、勇者とか転生して最強レベルのチート貰った主人公とかが解決するものだと思う。転生しか共通点がない私には荷が重いよ!


ブクマ、評価、ありがとうございます。

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