情報が多すぎると細かいことは気にならなくなってくるよね
何者かなんてこのイケオジは何を言ってるんだろう。
自分の娘なら“何者”なんておかしくない?似てるだけで実は娘じゃないとか?
怪訝な表情をしてたら更に顔を近づけてぶっこんできた。
「君はここじゃない世界で生きてた記憶があるよね」
あ、疑問形じゃない。
なるほどよくわからん。
「仕事して帰宅途中だったんですが起きたらここにいました。寝た記憶はないんですけどね。多分こことは違う世界だと思います。」
もう、どうにでもなれという気持ちで正直に話す。
「ここは間違いなく君のいた世界とは異なる所だよ。私はヘンリー。ヘンリー・エーデルラント。彼女は妻のエリーシア」
違う世界って聞こえた気がするけど、なんとなくうまく飲み込めない。
でも、うん、自己紹介は大事。
「あ、ご丁寧にどうも。坂本朝子って言います。坂本がファミリーネームです」
自己紹介されたら返さないとね。まずはコミュニケーションを取らないと。
「そうか、アサコ。君は私達の娘だ!パパンと呼んでおくれ!」
ダメだ異文化すぎてコミュニケーション取れそうにない。
「あなた!アサコちゃんが困ってるでしょ!」
あ、よかった奥様とは似た文化圏かもしれない。
「アサコちゃん、私のことはシアちゃんって呼んでね」
勘違いだった。やっぱり異文化コミュニケーション難しい。
「呼び方は置いておくとして、アサコが私達の娘なのは本当だよ。この世界では時折あることでアサコの身体は精霊の宝箱なんだ」
ふざけた空気を一瞬で引き締め、ヘンリーと名乗った男性は話し始める。
「精霊の宝箱?」
「精霊の宝箱と呼ばれる子の身体はね生まれた時点では魂が入ってない。生きてはいるんだけど空っぽなんだよ。ただの入れ物。器だね。その身体には必ずここじゃない別の世界から魂が入るんだ。器に入る魂はこの世界の精霊に愛された魂でね、別の世界で役目を終えたら精霊の導きによって器に選ばれた身体に入る。精霊にとって魂は宝物。その宝物が入る身体だから宝箱。だから精霊の宝箱なのさ」
なんだか現代日本じゃ考えられない話だ。精霊とか魂とかモロ異世界って感じ。
その後は私がわかりやすいようにこの世界の事を教えてくれた。ここはアレスと言う名の世界の南西に位置するディティリエ王国であり、この世界は剣と魔法ファンタジー世界。
冒険者という職業もあるらしい。魂と器が揃った状態、つまり今の私は精霊の愛し子と呼ばれ、アレスのどこに行っても大事にされる。
愛し子はだいたい五、六十年に一人現れる割とポピュラーな存在で、愛し子はもれなく魔力が高いとか。他にも色々と話を聞いた。
詰め込みすぎて頭パンクしそうだなぁ・・・
小説とかで読んでるぶんには全然気にならなかったけど、現実になると非現実的すぎて理解に時間がかかる。
現実って小説みたいに読み返せないんだよ。脳みそ若返っててもアラフォーに片足つっ込みかけた日本の常識で凝り固めたガチガチの私には少し辛い。
ちなみにお互いに妥協を重ねた結果、二人のことはお父様、お母様と呼ぶことになりました。お父様お母様よりお兄様お姉様のほうがしっくりくるんだけどね。
とりあえず私のことは、この国の国王陛下に報告をするらしい。特に何かがあるわけじゃないけど、把握はしとかないといけないんだって。
それと、私の扱いはお父様の言った通りこの家の子供ということになるらしい。
流行りの小説みたいに、いきなり婚約破棄されたり無一文で追放されたりする世界じゃなくてよかった。
安心したらお腹空いてきたな。
「あの、おとー‥」
ぐうううううううう〜
空腹を訴えようとしたら、私の口より先にお腹が雄弁に語りだした。
どうやらお遅めのお昼位の時間だったらしい。
私のお腹の訴えにより、一旦食堂に場所を移し昼食を頂いたあと、お父様から「突然のことで戸惑いもあるだろうからしばらくはゆっくりするといい」と、ありがたいお言葉を頂いた私は自室として割り当てられたさっきの部屋へと戻った。
部屋に戻ると、これからのことについて考えた。
元の世界で役目を終えたってことは死んだってことだと思う。まあ、そんな覚えてないことよりも、今は先のことを考えよう。
お父様の話によると、私はこの家の庇護下にあるってだけで、割と自由に過ごしていいらしい。
精霊の愛し子は特別なことをしなくても存在してるだけでいいんだってさ。
「せっかく魔法あるなら魔法使ってダンジョンとか行きたいなぁ」
転生して魔法があるなんて聞いたら使ってみたい。魔力が高いとかチートっぽいし。
「おう、連れてってやろうか。運が良きゃお宝拾えるかもな」
「お宝!RPGみたい!」
とっさに返事をして振り向いたが、おかしいな。部屋の中に知らないデカい男がいる。
眼の前には身長190cm位? の筋肉質で斧やら大剣やらが似合いそうなガッシリした身体。
彫りが深く、意志の強そうな目は印象的で妙に色っぽ
い。落ち着いたレッドブラウンの髪がよく似合っている。年齢は30代半ば位か。
突然現れた知らない男にびっくりしたが、害意は感じられない。取りあえず、少し話してみることにした。
「だ、誰?」
「ディラン。愛し子が目覚めたって聞いたから勧誘しに来た。愛し子ってのはダンジョンとかが好きなやつ多いんだろ?」
男はディランと名乗った。勧誘ってなんのだろ?
私が口を開く前に、ノックと同時に扉が開いてお父様が入ってきた。
「シャヴロッシュ卿、突然現れたらアサコがびっくりするでしょう。面会はもう少しここに慣れてからって言おうとしたのにああ・・・もう。」
シャヴロッシュってディランって人のことかな。お父様の知り合いなんだ。
「エーデルラント侯爵、名前は借りてるだけで、ただの冒険者のディランだ。」
え。お父様、侯爵だったのか。
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