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美味しいご飯があれば頑張れる


 侍医のおじいさんが投薬してすぐに、王女様に変化が出た。


「ん、んん・・・あら? お兄様?」


「ザラ!」


 王女様は何がおこったのかわかっていないようで、殿下の様子をみて驚いている。


「お兄様・・・? やだ、私ったら寝衣のままっ」


 周りを見て、殿下だけでなくディランと私とおじいさんの方を見ると、真っ赤になったり上掛けで顔を隠した。


「姫様、お加減はいかがでしょうかな」


「ええ、寝てしまったからすっきりはしてるけど・・・ディラン様までいらしてどうしたのですか? それにそちらの方は・・・」




 いまいち状況を理解できていない王女様に、ディランが妖精に魔法をかけられて一年眠っていたこと、私が精霊の愛し子であること、そして強い魔力が見える事を利用して王女様を目覚めさせる為、月虹草を採りに行ったことを説明した。


「まあ! お兄様が無理なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。ですが、私のために尽力してくださったこと、とても感謝いたしますわ!」


 ディランから話を聞いた王女様は私の両手を握り、お礼を言った。改めて見ると、スッと通った鼻筋に桃色の頬、ぱっちり開いた瞳は海のように青い。さすが王女様といった風貌である。


「いえ、王女殿下は悪くありませんし、リヒトからもう謝罪も受けましたので気にしないでください」


「まあ! お兄様のことを名前で呼んでいるのね。なら、私のこともザラと呼んでちょうだい!」


 若干前のめり気味で名前呼びを求められ、びっくりしながらも承諾し、リヒトと同じようにアサコのことも名前で呼んでほしいと伝えた。



「アサコは妖精が見えるのね! 今、花の妖精さんは近くにいるのかしら?」


 そういえば、ザラが気に入ったといいそばにいたはずの妖精の姿は見えない。気になって呼んでみることにした。


「花の妖精さーん?」


「・・・・・・・・・いるわよぅ。ここに」


 やや間があって返事があり、声のした方を向くと飾られていた壺の中から花の妖精が出てきた。


「あれ、どうしてそんなとこにいるの?」


「ワタシ、何だか悪いことしちゃったのよね? お姫様がよく眠れるようにって思っただけなのよぅ」


 妖精に涙が出るのかはわからないが、泣きだしそうな表情で落ち込んでいた。


 ザラに妖精がいること、落ち込んでいることを伝えたら、全然気にしてないと笑っていた。


「妖精のすることですもの。人の常識は妖精にはわからないものだわ。でもそうねえ、お兄様達にはすごく心配かけたと思うし・・・」


 リヒトすごく心配してたもんね。同じことは起こってほしくないだろう。


 リヒトは少し考えるそぶりをしたあと提案をだした。


「それならば、ザラが茶会にアサコを招待して妖精に人の常識を、ザラはアサコにこちらのことを教えてやったらどうだ?」


 おっと、話がこっちに飛んできたぞ。勉強会みたいな感じかな? こっちのことは知りたいけど冒険者として活動もしたい。家での勉強もあるし・・・うーん。


「まあ!お兄様、それは素敵な考えね。でも、それだとアサコの負担になるわ」


「アサコ、嫌なら断っていい」


 ディランが少し渋い顔をして、断ってもいいと言ってくれる。


「うーん。あ! 花の妖精さんは精霊についてしってる?」


「モチロン知ってるわよぅ〜妖精は精霊の仲間だもの! アナタにもくっついてる子がいるわね!」


 なら、ついでに精霊のことについても聞いてみよう。


「じゃあ、冒険者の活動もしたいので、月一回位なら」


「嬉しいわ! 決まりね!」


 こうして、私は月一回王宮の茶会に出ることとなった。


 話が一段落ついたところで、侍医が一度ザラの診察をすると言い、私とディランは王宮を出た。


 



 ザラが目覚めた次の日の夕方、私はディランと約束の打ち上げをするために、タルタル亭へ来ていた。


「んん〜 おいしぃぃ〜」


テーブルにはロック鳥のヤキトリ、枝豆、チャームフィッシュの唐揚げに、サッパリ柑橘系ドレッシングがかかったサラダ。未成年でお酒が飲めない私のためにゴッズは具だくさん釜飯まで出してくれた。


「今日は好きなもんを好きなだけ食え。残りは食ってやっから。他に食いたいもんあったら遠慮しねーで頼めよ」


 日課になっている魔法の練習でお腹はペコペコ。上機嫌でヤキトリを頬張る。


「焼き鳥、やっと食べれたぁー」


 念願の焼き鳥は食べられなかった間の分、余計に美味しく感じた。


「アサコは美味そうに食うな」


「美味しいものをチビチビ食べても食べた気がしなくない? そりゃ時と場合によってはわきまえるけど」


「いいんじゃね? 飯も美味そうに食ってもらったほうが

本望だろ」


「本当は私もエール飲みたいんだけどねー。それはちゃんと十八まで我慢しないとね」


「飲めるようになったら旨い酒とそれに合う肴教えてやるよ」


 やった! ディランのオススメなら外れなさそうな気がする。私もちゃんと冒険者として稼げるようになってディランを飲みに誘えるようにならないとだ。


 

 もうお腹いっぱい! となったところで店を出た。一仕事終えた達成感と、それを共有するディランとの打ち上げはとても楽しかった。


 帰りはいつも通り屋敷まで送ってくれたけど、打ち上げが楽しかったせいか、ディランが帰ったあとは少し寂しい気持ちになった。


 友達が自分の家に遊びに来て帰ったら寂しいみたいな。そんな感じ。


 その日、残りの時間を寂しさを誤魔化すようにステアとお喋りして過ごした。



ブクマ、評価ありがとうございます。

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