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いざ出発!


 出発当日、いつもよりだいぶ早い時間に起床し、ステアに準備を手伝ってもらい屋敷を出た。


 家族総出で見送る姿を見て、迎えに来たディランが驚いていたな。


 今日は早朝出発だった為、乗合馬車が無く侯爵家の馬車でラングスタールの近くまで送ってもらった。そこから辻馬車を拾って進んでいる。


 ラングスタールを出ると、草原がどこまでも続いていた。


「のどかだねー」


「この辺りは畜産が盛んだからな。ダグテスの手前までこの風景が続くぞー」


 言われてみれば、遠くの方にモコモコした羊と牛が合体したような生き物がチラホラと見える。


「あのモコモコ何?」


「モウールだな。毛は布製品、雌の乳は乳製品に加工される」


「へー・・・」


 なんで、モーとなく牛と羊の毛のウール合体させたような名前をしてんだ。


「200年前くらいの愛し子が品種改良した生物らしいぞ」


 なるほど。先人のネーミングセンスが原因か。


「昼過ぎくらいに中間地点の村に着く。そしたら一旦休憩にしよう」


「あ、お母様がお弁当持たせてくれたよ」


「んじゃ村についてから昼飯にするか」




 ディランの言った通り、昼過ぎくらいに村についた。

一旦辻馬車と別れて、村の中を歩いていると、年配の女性に呼び止められた。


「あれ、ディランさんかい?」


「どうも。お久しぶりです」


 どうやら、ディランの知り合いらしい。


「この前はありがとうね。村のみんなも助かったって言ってたよ。あらっ、今日はすごい別嬪さんが一緒なのね!ダメよ~デートにこんな寂れた村連れてきちゃ」


 おおう、なんかすごい誤解してる。


「彼女と合同で依頼を受けてるんです。この辺りでどこか休憩するのにいい場所はありませんか?」


「あらまあ、そうなの」


 女性が私の方を見てニッコリ笑う。私はそれに会釈を返した。ディランの喋り方が丁寧でなんかムズムズする。


 女性はディランに向き直ると、この先に村の人間がよく休憩に使う小さな泉があると教えてくれた。


 お礼を言い女性と別れ、泉に向かい歩きだす。


「この村来たことあるの?」


「ああ、前に害鳥駆除の依頼があってな」


「へー。そんなこともするんだ」


「ああ。どっかのバカがちょっかいかけたせいでヤツが怒って鉱山から降りてこんな所まで来ちまって大変だった」


「ん? 害鳥だよね? ヤツって?」


「キンググリフォン。金鉱山を縄張りにしてる害鳥だ。縄張りに近寄らなきゃ何もないんだけどな」


「ぐりふぉん」


 グリフォンって確かに鳥類のイメージだけど、そうか害鳥なのか。キンググリフォン。


 また一つこの世界の不思議に触れたところで、泉が見えてきた。


 泉の脇には村人のベンチ代わりなのか丸太が一本置いてあり、私達はそこに座り昼食を広げた。


「あ、蒸し鶏のサンドイッチだ」


 ランチボックスの中には、蒸し鶏と千切りにしたニンジンとキャベツをドレッシングで和えたものを挟んだサンドイッチが二人分入っていた。


 朝早い出発だったのに、お母様が持たせてくれた。なぜか厨房の料理人達は、私が好きだと思った味付けを知っていて、色々作ってくれる。


 このサンドイッチのドレッシングも私が好きなドレッシングなんだよね。


 私はみんなの優しさに感謝して、昼食をいただいた。





 サンドイッチを食べ終え、ディランに疑問をもう一つ聞いてみる。

 

「お父様には丁寧に話すよね。あとさっきの人も」


「アサコの父親は侯爵だから。村の人間は依頼人だから。悪いな口が悪くて。これが素だ」


「いやぁ、なんかディランが丁寧に喋るとムズムズするなって思って。私は素のほうがいいな」


「そうかよ」


 その後、他愛もない話を少しして休憩を終え、辻馬車と合流し村を出発した。




 午後も順調に進み、予定通り夜。ちょっと遅い夕食の時間くらいにダグテスに到着した。


「宿って確か殿下が取ってくれたんだよね」


「ああ。一階が飯屋で二階が宿屋になってるところだ」


 目的の場所はすぐに見つけることができた。中へ入り一階の食堂で軽く夕食をすませ、受付をして鍵を受け取る。そのまま二階へ上がり、部屋の確認を行った。


「ディランは向かいの部屋だね」


「ああ。なんかあったら呼べよ」


「うん。じゃあまた明日。おやすみなさい」


「おやすみ」


 部屋に入り、シャワーを浴びてベッドへ潜り込む。

いろいろと発展してる世界でよかった。一日中外に出てたからシャワーを浴びれるのは嬉しい。


 体もサッパリし程よい疲れもあり、ベッドに潜り込んだ朝子は早々に意識を手放した。


  

ブクマ、評価ありがとうございます。

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