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二度あることは三度あってくれるな

 

 招き入れられた部屋の中には、殿下と同じ色の波打つ金の髪が美しい少女が眠っていた。


「私の妹のザラだ」


 規則正しく呼吸に合わせて胸が上下している。ただ眠っているだけなのに、王女様の周りだけ光って見える。


 

 ん?



 光って?



「あの、殿下。私には王女殿下が光って見えるんですが」


「一国の王女だからな。私の妹は美しいだろう」


 そうじゃない。


「いえ、そうではなくて。物理的に光って見えるんですよね」


「? 何を言っているんだ?」


 もしかして私にしか見えてない?


 再度、王女様を観察する。顔の横の髪の毛の下から一際強い光が漏れている。


「あのう、王女殿下の髪に触れても良いでしょうか」


 訝しげな顔をしながらも、妙な真似はするなよ。と言って許可をくれた。


「失礼します」


 私は慎重に、一際強く光るそこに掛かっている王女様の髪を避ける。




 そこには、小さな人型のピンク色の生き物が寝ていた。




「ん〜まぁぶしいのよぉー・・・」


 ピンク色の生き物はモゾモゾと動いたかと思うと、大きく伸びをする。


「んー。よく寝た! あら? アナタとっても素敵な魔力! この子のお友達? あっ、違うわ! 精霊王の愛し子ね!」


 ピンク色の小さな生き物は、透明な羽を羽ばたかせ、朝子の周りをくるくると回る。


「殿下、ピンク色の人型の小さな生き物が私の周りを飛び回っています」


「んもぅ! ピンク色の生き物なんて可愛くない呼び方しないでよね! 私は花の妖精よ!」


「ようせい」


「大好きなこの子とお昼寝してたのよ! そうだわ! アナタのことも大好きだし一緒にお昼寝しましょ!」


「おひるね」


 朝子は殿下に丸投げすることにした。


「殿下、花の妖精と自称する生き物が王女殿下とお昼寝していたようです。私は頭がおかしくなったのかもしれませんので、これにてお暇させていただきたく」


「待て。妖精がいるのか?」


 そういえば、妖精が見えるのは魔力が高い人って教えてもらった。ほとんど愛し子にしか見えないとも。


 妖精の存在は聞いていたが、実際に目にすると理解の範疇を超えている。殿下に丸投げして帰ろうとしたが、当然の如く失敗した。



 

 殿下の指示で聞いた花の妖精の話によると、花が沢山咲いている王宮に遊びに来たら、散歩している王女様を見つけた。


 王家の人間の魔力は心地いいらしく、とりわけ王女様の魔力が気にいった花の妖精は、天気もいいし一緒にお昼寝することにした、と。

 

 しかし、王女様の周りには侍女や護衛で人が多く、うるさくて目が覚めたらかわいそうだから、特別深く眠れる魔法をかけた・・・・・と。



 昼寝で一年って・・・


「花の妖精の好意で私の妹は一年も眠っていた・・の・・・・だな・・・」


 あぁ、殿下も事実を受け止めきれなくなってる。


「あれ? 魔法で寝たなら魔法師でどうにかならないんですか?」


「・・・無理だ。妖精の魔法は人間の使うそれとは別物らしい。だからこそ、魔法師も原因がわからなかったのだろう」


 精霊や妖精は大自然の一部。って習ったからそうなのかもしれない。うん。深く考えるのはやめとこう。


 というか、魔法をかけたなら解除もできるのでは?


「えっと、花の妖精さん?」


「ナニかしら?」


「王女殿下の魔法を解いてもらえませんか」


「うぅーん。無理よぉ。愛し子のお願いは聞いてあげたいけど、言ったでしょ? 特別深く眠れる魔法だって。一度かけたら目覚めるまで解けないわ!」


「・・・・・ちなみにいつ頃目覚めるんでしょうか」


「そうねぇ、百五十年位眠ったらスッキリして起きるんじゃないかしら!」


 それじゃあ一生起きないって言ってるるのと変わらないじゃん!


「花の妖精はなんと言っているんだ・・・?」


 不安気な表情をしている殿下にどう伝えるかしばらく迷い、けれど覚悟を決めて花の妖精とのやり取りを伝えた。





「そんな! ではザラはどうしたらっ」


 王女様は生きている間、起きることがないかもしれないと伝えると、殿下はその場で膝から崩れ落ちた。


 私の周りを飛んでいた花の妖精はそれを見て、殿下の周りをくるくると回ると、


「やぁーねぇー。おおげさよう。アタシが魔法を解くことはできないケド、月虹草(ゲッコウソウ)を飲ませれば起きるわよぅ」


「殿下、月虹草を飲めば起きるそうです」


 重苦しい空気の中、花の妖精の口から解決策が出てきて、ここに来て初めて、促される前に殿下に伝えることができた。


「月虹草、だと?」


 月虹草の名前が出ると殿下は立ち直り、控えていた従者の少年に図鑑を持ってくるよう指示を出した。


 従者の少年が持ってきた図鑑を殿下が受け取り、パラパラと捲ると月虹草のページが見つかった。



 ◆月虹草 満月の夜に月明かりによって架かる虹の根元に自生する希少な植物。煎じて飲むと自身に掛けられた魔法や呪いを解くことができる。



「これだ」


 殿下は図鑑から顔を上げ、瞳に輝きを乗せて私をみた。


 え、ちょっ・・・ものすごく、ものすごーく嫌な予感が。

 

「エーデルラント侯爵令嬢、君は冒険者をしているそうだな」


 外れろ!私の予感!!


「君に月虹草の採取を依頼したい。もちろん一人ではなく、私の従兄弟殿にも話をしておこう」


 ほらぁ!私の予感は嫌なものだけ当たるんだよっ!!


「殿下のお耳にも入っているんですね・・・他の冒険者ではいけないのですか」


「今の所病気療養で通してるが、できるだけ噂にしたくない。王家の息のかかっている医師や魔法師は抑えがきくが、冒険者となると一気に噂が広まる可能性が高い。妹の為にもそれは避けたい」



それってもう、ほぼ強制では・・・?



ブクマ、評価ありがとうございます。

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